第5話

 でも、今の春にとってはその続きを聞くのが怖い。


 「でも、だから優は離れることを決めたの」


「・・・っ・・・そんなの、そんなのおかしいよ!!あんなに、ここまで狂気じみてる程、私に貢いでいたのに!!」


「そうね。優はどこまで優しくて、妹に対して異常なほど、優しかった・・・今回もそれが理由の一つにあったんだよね」


噛み付きたかった。やつに文句をつけたかった。


だけど、理由の一つという言葉が私にさっきの恐怖確信させた。


「理由の一つって何」


母は、話したくなさそうにする。だけど、今は話さなと思っていそうな不安顔だった。


「もう限界だったみたい。」


「限界?」


「そう。少し前に優は泣きながら、私にもう春といるのも、春のために金を使うのも働くのも限界だって・・・」


「なにそれ!!意味わからない!!勝手にあいつが私に優しくて、勝手に限界が来るとか自分勝手過ぎる」


分かっている。もう流石に分かっている。


私が悪いんだって、私が奴に対して・・・兄に対して、無償な愛を、無償だからと甘えて・・・いや、甘えるだけなら良かった。彼を傷つけて・・・


兄には、そんな義務も本来は無いはずなのに


「最低だよ!!私がいつまでも、振り向かないからって見捨てるって、あの男達(父親)と一緒じゃない」


わかってる。アイツらは他人を傷つけるゴミだったけど、兄はその反対で、私を守って、今までもプラバシーにはあっちからは踏み込んで来たことはなかった。


「・・・バカだよ!!友達も居ないくせに勉強も中下のくせに」


わかってる。兄は既に成功してお金もある。友達も私と関わる前は沢山いたことも・・・


そして、わかっているのに


母も苦しくて、こんなのお互いに辛いだけなのに、言葉が止まらない。


「・・・あの人はバカだよ。もう家に帰って来なくって、いいよ。あんなキモイやつ」

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