もう有り得ない日に
方夜虹縷
第1話
幼馴染が死んだ。
高校生になったばかりだった。
僕にとって1番身近だった人だ。
なのにもう身近とは言えなくなった。
◇
今年の春、僕らは高校生になった。幼馴染である彼女も一緒だ。絶対に同じ高校に行こうと誓って受けたら、なんと2人とも受かっていた。自慢ではないが、僕らの志望校は地元でもかなり難しいと言われている高校だ。
「やった!やったよ!2人とも受かってる!」
あのときの嬉しそうな彼女の顔は今でも覚えている。抱きつかれたりもして多少困ったこともあったが、いい思い出だ。
合格が決まった日、僕達の親が最大に祝ってくれた。今までで1番豪華な食事だったんじゃないかな。とても美味しかったし、楽しかった。その日は夜遅くまで起きて彼女と話をしていた。僕達はとても近くに住んでいる。遅くまで居て帰って寝たとしてもそこまで遅くならないんだ。
合格発表から数日たって彼女がこんなことを聞いてきた。
「ねぇ、高校で何をするとか考えてる?」
僕はその質問の答えを持っていなかった。そもそも質問がざっくりしすぎなんだ。
そう言うと彼女は言った。
「あのねぇ、高校と言えば青春でしょ。青春と言えばいろいろあるじゃない。例えば、部活とか、学校行事とか、放課後とか。じゃあ、絞って聞くけど、部活動は何にするつもりなの?」
それはもう決まっている。僕は何の部活にも入らないつもりだ。
そう伝えると彼女はありえないものを見る目でこっちを見てきた。
「ええー!ダメだよそんなのは!せっかくの高校生活なんだよ?勉強ばっかりじゃなくて、部活でも、放課後の楽しみでも何か作らないと損だよ!」
確かに趣味を持つのはいいと思うけど、そんなに積極的になるものなのかな?
「チッチッチ。ノンノン。分かってないね君は。高校のはじめにつくるから意味があるんだよ!例えば、あとあと勉強に詰まった時の息抜きで何しようかなーって悩まなくていい。高校の勉強は難しいって言うから、早く作っておけば、勉強が分からなくなったときとかに教えてくれる人ができるかもよ?」
彼女が下手くそな舌打ちをして言う。
でも、確かにメリットがある。そういう理由なら作ったほうが
「それに、やっぱり君には私と一緒に青春を謳歌してほしいからね!やっぱり青春っていうのは誰しもが通るべきだと思うよ私は!」
前言撤回。彼女が世間一般で言われる青春を過ごしたいだけだった。納得しかけた僕がバカだったみたいだ。
「そういう訳だから君は何がなんでも私と楽しい学生ライフを送ってもらうから!君は私に連れ回される運命にあるんだよ。入学したら覚悟しておいてね!」
そう言って彼女は笑って見せた。その顔からは本当に思い出に残る青春を過ごすという決意が感じられた。同時に、高校生活が楽しみという気持ちが溢れていた。
まったく、と呆れながら僕は少し笑った。この様子だと彼女は、この調子で高校に行って、瞬く間に馴染んで、輝かしい毎日を過ごすんだろうな。
そう、思っていたのに。
入学式の日。彼女は死んだ。
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