Ⅹ
「ああ、ごめんよカササギたち、ぼくのせいできみたちまで巻き込んでしまって、ごめんよ・・・」
夜空には風穴が空いていた。おそらく原因はデネブたちが洪水と一緒に堕ちてきたときに違いない。巨大な恐竜の化石みたいなかたちをした風穴が開いている。
破れた夜のとばりは重く濡れそぼつ。その向こう側に、眩むような超新星がぎらぎら噴火していた。トパーズを砕いて、山羊の乳を垂らしたような景観・・・
それはデネブに、懐かしい記憶を思い出させてくれたーー今よりも幼く眠れない晩、神さまが語ってくれた銀河の逸話ーー星を継ぎながら旅する賢者が、冬の夜の砂漠で迷ったときに道標になってくれたという、希望の星を。
ぞわぞわする呻き風が地を這う。地獄の扉から洩れている、そう思うくらい気味の悪い冷たい風の裾に、デネブのベレー帽が拐われてしまった。しなびている髪はそよそよと揺れて、旋毛から霊液がゆっくり抜けていく。
「・・・ああ、神さまーー」情けなくかすれた声を絞り出す。「神さま、申し訳ございません。見習いの分際で、ろくにお役に立てないまま、わたしはもう間もなく死にます」
目が慣れてきた。崖の反対側に脱線して倒れた列車があり、薄暗い霧のなかでプレートを読みとる・・・『ワルツ第CZ号』ーー
「わたしとカササギの屍は、真珠貝で穴を掘ってここに埋めてください。こんなお願いをしてしまい誠に恐縮ですが、よろしくお願いします。
どうかお願い致します」
デネブは期が熟したことを悟ったーーぼくはここから、みんなを照らす星となろう。どんなに小さくて、誰からも気づかれなくたっていい・・・
さようなら、大好きなみんな
朝と夜、鳥と虫、自然と宇宙よ・・・
そしてーーアルタイルとベガ
あんまり急いで来たら、怒るからね
なるべく、ゆっくり来るんだよ
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