幸福の星
おかゆ
Ⅰ
西暦XXX年 7月7日。
星もないしずかな夜空。
空には、人間からは見えない透明な道路がある。
それは果てしなく長く、地球や火星などたくさんの惑星を、クモの巣のように繋げていた。
やわらかい風が吹き、雲にかくれていた月があらわれた、そのとき。
ブロロロロロロ・・・
タイヤの付いていない、ふしぎなmotorbikeのエンジン音が、空全体に響き渡った。
操縦しているのは、驚くことにまだ少年である。
「ーーこのままで間に合うかな。“自由の女神”を目印に飛ばしてきたけど・・・地球の町並みは、ほんと来るたびに様変わりするなぁ」
不安そうに呟くかれの名は、デネブ。
すこしだけ臆病だけど、おもいやりのある子だと、みんなが知っていた。
かれには友だちがいる。アルタイルとベガである。
アルタイルはしっかり者で逞しく、勉強もスポーツも得意なおとこの子。
ベガは明るくて笑顔も可愛い、奥ゆかしいおんなの子。
何百年もむかしから、アルタイルとベガとデネブは一緒に遊んでいた。どこに行くのも、なにをするのも、いつだってそばにいた。かくしごとなんてなかった。
やがて、アルタイルとベガは恋におちて結婚した。
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