婚約者アザレア

「クロ!来てあげたわよ!喜びなさい!」


「やぁアザレア、久しぶりだね」


久しぶりに会ったけどやっぱりアザレアは元気な奴だ、俺のようなインドア派な人間からしたら元気過ぎて少々苦手だが、アザレアは不思議と嫌ではない。やっぱり幼馴染だからかな?


「なんか反応が微妙じゃないかしら?久しぶりなのだからもっと喜びなさいよ!」


「そんなことないさ、それに俺は昔からこんな感じじゃん!幼馴染だからわかるだろ?」


「それは…まぁそうだけど…でも久しぶりに会ったのだからもっと喜びなさいよ…」


あれ…?なんかアザレアの奴随分としおらしいな…俺変なこと言ったかな…


「まぁいいです!それで今日は何するのかしら?」


「え?俺は何も聞いてないけど?アザレアが何か用事あったんじゃないの?」


「いえ?特に何も聞いてませんよ?お父様からはそちらの父君から呼ばれたとしか聞いてませんね」


「父上が…?とりあえず聞きに行こうか」


うーん…父上がアザレアを呼ぶということはなにか用があるんだろうけど…全くもって想像がつかんな…


「ところでクロのお父上はどこにいるのかしら?私この屋敷に詳しくないから」


「うーん分からないなぁ…ん?あそこに母上がいるし聞いてみようか」


「あら?クロとアザレアちゃんじゃない?さっきカクタスが探していましたよ?見つけたら訓練所に来て欲しいの言っていたわ」


「訓練所に…?わかりました!行ってきます!」


訓練所に居るなんて珍しいこともあるものだ、父は普段領内からの報告を受けたりや書類仕事をする為に大半は執務室にいる、そんな父がざわざアザレアを呼んでまで訓練所ですることに全く想像がつかず、興味半分、恐怖半分といった複雑な気持ちだ


「父上!呼ばれたので訓練所に来まし」


「火炎魔法!インフェルノ!!」


俺の声をかき消すように轟音が響いた。父は訓練所に入るや否や俺たちに向かって魔法を放ってきたのだ。父が何を考えているかは想像がつかないが、きっと今の攻撃で終わりではないだろう。すぐに次が来る。おそらく父は俺達の何かを試している、幸いここは訓練所、やることはひとつだ。


「父上!なにが狙いかは知りませんが!そちらがそう来るならばこちらも同じように行かせていただきます!アザレア!俺の後ろに下がっていてくれ!」


アザレアに下がるように言いながら俺も戦う準備をする。俺の能力は術式を生み出す能力、俺はその能力で作った術式を3つ保有している、ひとつ目は構築術式、魔力を消費して物質を作る術式、2つ目は操液術式、液体を自在に操ることの出来る術式、そして3つ目が解析術式、視界に捉えた物質、生物の魔力量、保有ギフト、そして肉体を動きを解析し見ることができる、この術式を使って父上に勝つ


「水魔法・ゲキリュウ」


「甘いわ!エクスプロード」


炎で相殺するつもりか?だが本命はこれじゃない!


「操液術式・水龍」


俺が術を発動するとさっきまで父上に向かって流れていた水が龍のような形に変わる。そして水で出来たその龍は前方に向けて炎魔法を打つ父の背に向けて飛んでゆく


「なっ!?いつの間に!」


ガァァァンという音が響く


なるほど魔力障壁で防いだのか、だが甘い!

その水龍は魔法じゃない、術式だ。

操液術式は液体を操るこのができる術式

ならば形状を変えることは容易


操液術式・水槍 炸


「 ぐぁ!」


魔力障壁で防いだ水龍は日本の水の槍になり、そして父の至近距離で炸裂し幾百もの水の針となった。

至近距離で炸裂し分裂した無数の水を避けられるわけも無く、父は真正面から攻撃を食らった…

ーーが父は大したダメージも受けずにその場に立っていた


「どうしたクロ、その程度か?次はこちらから行くぞ!」


上級魔法・サイクロン


「ぐぅ…!舐めるな!」


父の放ったサイクロンを魔力障壁で何とか防ぐ

俺も操液術式で千本水針を放つがさすがは元王国騎士、軽く防いでしまった


「隙あり!トーレント」


「ちぃ…!豪火球」


父の放った水魔法を豪火球で相殺すると水が蒸発したことで水蒸気が立ち込め視界を遮る、だが俺には解析術式がある!


属性付与、風流斬


水蒸気で視界を遮られている父の首元に俺は刀を置く


「父上、私の勝ちです。勿論、説明してくださいますよね?」


「やるな、クロ説明はするが場所を変えよう、俺の執務室に来てくれ」


「わかりました、父上」


「えっ?あの?下がれと言われたから下がってたんだけど、どうなっているの?」


アザレアが状況を飲み込めずに困惑しているがとりあえずは父の執務室に向かおう。


「アザレア!行くよ!」


「えっ?何がどうなっているのーー!?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る