『キミとの”いちゃいちゃな”癒しのひととき』を収録しよう!

雨竜三斗

トラック1:彼女の荷物持ちをしよう!【導入、移動、説明、足音】

(時間場所:秋頃、程よく雲がある青空、午前8時くらい、駅前の歩道、タイル、人混みは少なめ)

(SE:交通系ICカードが改札を通る音、ふたり分)

(SE:アタッシェケースを持ち直す音。カチャッという金属音、KU100のケースを想定)


(位置:左、近い)


(明るい声で)

さ、こっちだよ。

収録に使う場所は決めあるからわたしについてきて。


(SE:足音、ゆっくりと、ふたり分、トラック終わりまで続ける)


(気づかう声で)

文字通り、重いものを持ってもらってるから、

疲れたらちゃんと言ってね。



(おだやかな声で)

暦の上では秋になって、収録は涼しい場所でするけど、

まだまだ暑さが残ってたりするからね。

日中たっぷり収録に使うスケジューリングをしているけど、

そこは体調優先で考えてほしいな。


(少し申し訳ない声で)

気づかいありがとう?

ううん、恋人にわたしの仕事の荷物持ちなんてさせてごめんね。

でも他に頼めるひとがいないから……甘えちゃった。


(うっとりした声で)

頼られてうれしいなんて顔してさぁ、

もう……やさしいんだから。


こほん(咳払いわざとらしい)


(明るい声で)

さて、今日することを改めて説明するよ。

今日は『ダミーヘッドマイク』を外に持ち出して、

音声作品を収録をするのっ。

気持ちのいい音や、

わたし演じるかわいい女の子の声と

シチュエーションに癒されるASMRってやつ。


(自慢げな声で)

それに今回のテーマは、

『キミとの”いちゃいちゃな”癒しのひととき』

なんだよ。


(気づかう声で)

まあ、『癒やしのひととき』を作るには

いっぱい道具が必要で、

キミにはそれを持ってもらってるから

癒やされるかどうかわからないけどねぇ……。

でもでもキミはデートの気分でいいからね。


(甘える声で)

そのほうがわたしも演技がノるし、

キミも楽しくなれると思うから、

デートだと思ってくれるとうれしいな♡

でもマイクや機材がコケたり、

水をかぶったりしないように見ててほしいの。


(いたずらな声で)

知ってるかもだけど、これ、お高いよ?


(SE:アタッシェケースを持ち直す音。カチャッという金属音)


(あわてた声で)

ああ、ごめんねごめんね。

脅すようなことを言っちゃった。

もちろんわたしも気をつけてるし、

一応機材保険も入ってるし、

もしなにかあってもキミを攻めたりしないよ。


(少しまじめな声で)

それは誓います。

この辺にある神社とお寺全部に誓って周ってもいいよ。


(5秒ほど息づかい。『キミ』の言葉をうっとり聞く)


(うっとりした声で)

そこまで言わなくても信じてる……かぁ。

キミは本当にやさしいなぁ。


(自信のない声で)

わたしもなにか返してあげなきゃ――

うん……?


(5秒ほど息づかい。『キミ』の言葉をじっと聞く)


(少しえらそうな声で)

今、キミさ、「いろいろよくしてもらってるから大丈夫」

って言おうとしたでしょ?


(甘える声で)

わたしはキミのために

してあげてることが少ないと思ってるのっ。

わたしってば、いっつも配信とか動画のことばっかり考えてて、

キミとふたりのときでも『今の音いいかも』とか、

『これされるとうれしいなら、配信でやってみよ』とか、

メモ帳にカキカキしてるの知ってるよね?

ワーカーホリックっていうのかな?

なんにしてもわたしは

キミの優先度が下がってるのを自覚してるんだ……。


(自信のない声で)

でもこの企画はど~~~しても協力してほしくて、

キミに甘えちゃってる。


(自慢げな声で)

「いいよ」なんてキミは言うけど

わたしはよくないのっ。

だからこそ、今日の収録が終わったら、

キミにすっごいお返しがしたいって考えてるんだ。

楽しみにしててね。

今日の収録は気合も予算も入ってるんだからっ。


(SE:波の音、フェードイン、だんだんと海が近づいてくる感じ)


(少し自信のない声で)

そりゃ~お仕事と言えばお仕事なんだけど、

できればキミにも聞こえる音を楽しんでほしいなぁ。


(SE:走る音。ヒロインが走って『キミ』の前へ)


(位置:正面、中距離)


(とびっきり明るい声で)

さ、ついたよ!

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