【ASMR】街で見つけた喫茶店で、仲良くなった店員さんがコーヒーを淹れてくれる話

矢口愛留

一杯目 自分好みの喫茶店を見つけた話



(扉が開き、カランカランとベルが鳴る音。後ろから小さく蝉の声と街の喧騒が聞こえる)


「いらっしゃいませ♪」


(扉が閉まる音。街の喧騒が小さくなり、かわりにお洒落なジャズの店内BGMが小さく流れる)


(足音と、グラスの中で氷の揺れる音が近づく)


「こんにちは。今日も暑いですね」


(テーブルにグラスを置く音)


「お冷やとおしぼりです。ご注文がお決まりになりましたら……あ、もうお決まりですか?」


(メニューを開いて指さし、店員さんに尋ねるあなた)


「本日のコーヒーですか? ホットはグアテマラ、アイスはケニアのコーヒーです」


「アイスコーヒーですね、かしこまりました」


(伝票にペンを走らせる音)


「ご一緒に何か召し上がるものはいかがですか?」


「おすすめ……そうですね。お店のおすすめはシフォンケーキなんですけど、私のおすすめはベリーのタルトです」


(店員さんがあなたの前に身を乗り出す。あなたの前に置いてあるメニューブックをパラパラとめくる)


「こちらです」


(写真を指で示しながら、近い距離でそのまま話しかけてくる)


「ケニアのコーヒーは、花のような甘い香りで、酸味がキリッとした、すっきりする味わいなんです。ベリーと相性がいいんですよ」


「え? そうですね、コーヒーは産地や焙煎、淹れ方などによって、風味が大きく変わってくるんです。ですから、相性のいい食べ物も変わってくるんですよ」


「ふふ、ピンとこないですか? そうだなぁ……」


(悩む仕草をしながら、身体を離す)


「例えば、今日のお食事のメニューが、カレーと、ハンバーガーと、のり弁だったとします」


「飲み物は、ラッシー、コーラ、日本茶があります。これを三食で分けて飲むようにします。お客さんは、どれとどれを組み合わせますか?」


「そうですよね。カレーにラッシー、ハンバーガーにコーラ、のり弁には日本茶ですよね。私もそうします」


「それを、フードペアリングっていうんですよ」


(店員さん、どや顔で、ふふんと鼻を鳴らす)


「ちょっと大げさでしたか? でも、コーヒーもそれと一緒です。ベリーに合うコーヒーもあれば、乳製品に合うコーヒーもあります。ナッツ、キャラメル、チョコレート……食べ物に合わせてコーヒーを選ぶのも、楽しいですよ」


(感心するあなた。店員さんは再びふふん、と得意げにする)


「それで、えっと……ベリーのタルトをご注文ですね! ありがとうございます」


(店員さん、再び伝票にペンを走らせる)


「では、少々お待ちくださいませ」


(足音が遠ざかる。店内BGMに、時折コポコポとお湯を沸かす音が混じる。ゆったりした時間)


(しばらくして、足音と、グラスに氷が揺れる音が近づいてくる)


「お待たせいたしました。アイスコーヒーと、ベリーのタルトです」


(テーブルに、コースター、グラス、ミルクとガムシロップのピッチャー、ケーキの皿、カトラリーセットが置かれていく。店員さんが、物を置きながら話しかけてくるため、声が近づいたり遠ざかったりする)


「コーヒーとケーキを交互に召し上がっていただけると、お互いに風味を高め合って、より楽しんでいただけると思います」


(店員さん、一歩下がって、頭を下げる)


「ごゆっくりどうぞ」


(足音が遠ざかる。店内BGMと、お湯を沸かす音。扉が開閉し、ベルの音が鳴る)


「いらっしゃいませ♪」


(遠くで店員さんが接客する声を聞きながら、グラスをかき回し、涼やかな氷の音が鳴る。続けて、かちゃかちゃとフォークを動かす音)


(遠くで人が話す声。店内BGM。鞄から本を取り出し、ページを繰る音も加わる。しばらく、ゆったりとした時間が流れる)


(足音が近づいてくる)


「失礼します。お冷やのおかわりはいかがですか?」


「かしこまりました」


(からからと氷が揺れる音と、水が注がれる音)


「お客さん、読書がお好きなんですか? その本、私も読みました。面白いですよね」


(うなずくあなた。店員さん、ふふっと笑う)


「まだ最初の方なんですね。読み始めたらあっという間ですよ――あ、ごめんなさい、読書のお邪魔しちゃって」


(首を横に振るあなた)


「お客さん、優しいんですね。ご覧の通り、お店はすいていますから、ゆっくりしていってくださいね」


(足音が遠ざかる。再び店内のゆったりした時間)


(しばらくして、帰り支度をはじめるあなた。木製の椅子をずずっと引く音)


「あっ、ありがとうございます。お会計は、1200円でございます」


(お札と硬貨を置く音)


「ちょうどですね。ありがとうございます」


(レジのドロワが開閉する音。続いてレシートが印字される音)


「また来て下さいね」


(扉が開き、ベルがカランカランと鳴る)


「ありがとうございましたー♪」


(遠ざかる店員さんの声。蝉の鳴き声と、街の喧騒が大きくなる)



✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚


 お読みくださり、ありがとうございます!

 こちらはASMR台本です。通常の小説とは形式が異なりますので、ご了承ください。


 次回から、店員さんと少しずつ距離が縮まりますよ♪

 全五話(+番外編)、お楽しみいただけましたら幸いです!

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