元殺し屋、異世界転移したので封印してた力と知識を開放して無双する
あもる
序章
一見普通の女子高生である私たちは、普通ではない。
二人で笑いあいながら下校する姿からはとても想像できないと思うけれど、私たちは高校に入学するまでは殺し屋をしていた。
その証拠にほら、今も私たちの周りには怪しい人たちがたくさんいる。
みんな、私たちが隙を見せる瞬間を待っているのだ。
「新しいカフェがオープンしたらしい。行く?」
この子は時雨深雪。
私の相棒であり、親友であり、クラスメイトの女の子。
「行く行く!どこにあるの?」
「そこ」
そう言って指した先にあったのは、きれいなログハウス。
いかにも普・通・の・女子高生が通ってそうな、おしゃれなカフェ。
「ステンドグラスが綺麗で、前から行きたいと思ってた」
「うん、いいね!早速いただきまS」
そこから先の記憶は、ない。
時間の流れが指数関数的に減速するのを感じたその刹那、私の意識は途絶えた。
◆◆◆
「起きて、心結」
私の名前だぁ……、じゃない!深雪に呼ばれてる。
「んぁ?」
「起きた」
あたりを見回すと、そこにはヨーロッパ的な街と、先ほど教室でお別れしたはずのクラスメイト達の姿があった。
そしてそのさらに外側では、私たちを囲む大勢の民衆が物珍しそうにこちらを見ている。
「えっと、何事?」
「分からない、暗部の人間がいない、どういうこと?」
たしかに、私たちを狙っている暗部の人間は組織の中でも特に腕の立つ強者ばかり。
私たちが意識を失ったのであれば、周りに誰がいようとすぐさま殺しにかかってくるはず。
私たちを殺すにあたって一番の障害は私たち本人だからだ。
もう少し注意深く周りを観察してみる。
素材、色、形に統一感のない家、斜面が多い地形に、入り組んだ住宅街。
これといって共通点がない顔立ち、体つき、ファッションをした人間達や、獣人。
行き交う人々の中には、剣など、凶器になるようなものを持った人がいる。
そしてそれが当たり前の日常になっている。
つまり、ここはどこかのイベント会場ではない。
となると次は何国か。
これに関してもカオスすぎて判断できない。
「もう異世界ってことでいいのでは。フランス語、スペイン語、英語、中国語、日本語、ロシア語、どれも通じなかった」
「まじかよ」
歩く辞書、アカシックレコードなどのあだ名がつくほど博識な深雪がそう形容するのだから、ここでは私たちの知識や常識が通用しない。
今まで身に着けてきた何もかもを疑い、0から調べなおさなければならない。
「でもちょっとわくわくするね」
「いや、不安でしかない」
急に場が静まり返り、足音が響いた。
「youshy do no youcow so」
「何語?」
「分からない」
やっぱり、道のりは長そうだ。
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