失敗しました

 ……と言うことで、盗聴機はあっさり取り付ける事ができた。


 取り付ければあとは楽。なぜならソレそのものが移動してくれるから。

 ……どこに取り付けたのかと言うと……くいなの毛の中。












 それは今朝———、






「ほっ」


「ふぁわぁっ?!


 ……?…………??」



「おはよう、くいな。朝ごはんはできてるよ」


「…………??……????」



 ……ってわけだ。寝起きを襲った。多分、普段は隙はないだろうし。今頃落ちてないのなら、まだ。


「よし、それじゃあ入れてみるでヤンスよ……」


 ヤンスの協力のもと完成した、トランスフィールド製のパクリの盗聴器。

 さあ今、その真価を見せる時だ———っ!!




『………………っ


 ……で…………にが…………を…………』



「……ダメでヤンスね」

「ダメだね。


 ……あああぁあああぁあ〜〜」


 ダメでした。

 何で? どうして? ヤンスの技術不足だったりするのか?? 一緒にコックさんを直した経験だってあるのに??


「……まあ……アレでヤンス、トランスフィールドの技術って、概念法術とか…………何なら魔法すら使わないでヤンスから……」


「じゃあどうすんのさ!」


「もう突撃するでヤンスよっ!!」


 それは……なんか……まだかなあって……


「……イデアさんに聞く」

「最悪の人選でヤンスね」


 ———最悪?? イデアさんが?? 嘘だろ??

 あの人はいつもカッコよくて、頭も冴えて冷静で……恋愛面だって、(面食いで女たらしらしいが)過去に経歴はあるって……


「いいや、イデアさんに聞く。そしたら———」


「多分、ソレを直す方法は分からないし、きっとあの人でも『早く行け』って言うでヤンスよ。


 何より、コックさんからあの人のこと聞いたでヤンスが、なんか風の噂じゃ5股してたとか……」


「……やっぱやめときます」


 え……? 5……? 5股……?? どうなってんのソレ……? ホントだったら何なの、ソレを両立させる技術は……?!


「だったらどうしよう、僕は……

 行くしかないのか……はぁ……」



 とその時、家のドアが突然開いた。

 僕は一瞬、くいなが帰ってきたかと思って———、


「———っ、おかえり! くい……アレ?」


 ……そこにいたのは、とりあえず歩けるようになったコックさんだった。


『はい……くいな様でなくて申し訳ございません……帰りますね、帰投天使です……』


「ああああ待ってぇっ! 変なダジャレ残して帰らないでぇっ!!」


◆◆◆◆◆◆◆◆


「……それで、どうしたんですか? こんな時間に」


 機巧天使、コックさん。今はあんまり強くないけど、普段だったらめちゃくちゃ強い……何なら白さんより強いんじゃない? って思えちゃうくらいの人。……人?


 天使……と言うからにはやはり白い羽があるが、今こうして椅子に座っていると……とても……凄まじく邪魔そうだ。


『いや〜……なんか、なんか……ですね〜……わたくしを呼ぶ声がしたと言うか〜……


 具体的には、この辺にわたくしに協力して欲しそうな人がいると言うか……いないと言うか…………』


「(ヤンス、別にこの人呼んでないよね)」

「(普通に呼んでないでヤンス、勝手に来やがったでヤンスよ)」


 ———まあ、呼んでなくとも、何か力にはなってくれるかもしれない。

 それに……そうだ、コックさんにはアレがある。殿下の宝刀、『読心能力』。


 くいなの心を勝手に読む———そんな真似はしたくない。

 ……けど、正直不安だ。だからイケメン店主の方を読む!!!!


『……まあ、確かに私のを使うのもいいかもですが、まだもっとやれることはあるのでは?


 例えば……そう、そのイケメン店主……ですっけ? その方のお店って、具体的には何をするところなのか〜……とか』


 そう言えば……確かに、そうだな。


 珍しくコックさんがめちゃくちゃマトモなこと言ったのは置いといて、今のは確かにその通りだ。僕にはまだ……やれることがある。


 そうだな、そうだ。まだそんな……どこかズルい手に頼るのは後ででいい。何より、泥臭い方が僕らしい。


『聞き捨てならないことを 聞いた読んだのは置いておきます。


 ……ただまあ、やはりそうですね。その方が、セン様らしいです』


「……ってことで……ヤンス、あの店を調べよう。そこから何かヒントが得られるかもしれない」


 よし、今後の展望は決まった。調べても分からないのなら、そりゃもう突撃しかないけど……


 それでも、もっと外堀から攻めてみる。その方が、僕らしいから。


『僭越ながら、私も協力させていただきます。何やらこう……面白いことになりそうですしね!』


「ありがとう、コックさん。本当に助かるよ」


『ええ!


 ……(いやまあ、既にの心は読んでるので、答えは知っているのですが)』



「……何か言いました?」

『言ってませんが?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もしも願いが叶うなら〜少年、決意の果てに〜 月影 弧夜見 @bananasm3444

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る