第51話 なぜか四着しかないんだ

【新Sランカー】ケンちゃん食堂part56【バイト募集中】


無名の探索者

 時給2000円にあがってて草


無名の探索者

 1000円じゃまともなやつ来んかったんやろ


無名の探索者

 だからって2000円とか


無名の探索者

 急に二倍w


無名の探索者

 金額設定雑すぎやろw


無名の探索者

 ニシダ金勘定下手そう


無名の探索者

 金勘定うまけりゃ今頃バリバリ探索者してるって


無名の探索者

 アルバイト入ったな


無名の探索者

 やっぱ2000円なら人来るね


無名の探索者

 何人か見かけた。みんな大学生ぐらい?


無名の探索者

 明らかにいっぱいいっぱいな感じやったんだがwww


無名の探索者

 ゾンビみたいな顔してたw


無名の探索者

 すぐ辞めそう


無名の探索者

 ケンちゃん食堂のバイトは普通の人間には務まらんやろ


無名の探索者

 案の定、バイトごっそりいなくなってて草


無名の探索者

 マジかw 一週間も持ってないんじゃね?


無名の探索者

 このスレの予想が当たったな


無名の探索者

 誰もが予想した結末www


無名の探索者

 ニシダの激務は続くよどこまでも


無名の探索者

 地方住みで店行ったことない民には、店のことより配信頻度あげてほしい


無名の探索者

 俺は配信も店も好きだから悩ましいな


無名の探索者

 せめて身体は壊さないでほしい


無名の探索者

 ニシダが身体壊すとかあるん?


無名の探索者

 ないかもw 探索者は風邪も引かないらしいし


無名の探索者

 また新しいアルバイト来てたw


無名の探索者

 マジか。次はどれくらい持つかな


無名の探索者

 どんな子?


無名の探索者

 清楚系の美人だったぞ


無名の探索者

 見てみたい


無名の探索者

 一日でギブアップだろw


無名の探索者

 急がないと辞めてしまうかもな


無名の探索者

 それが見かけによらずめっちゃ機敏に動いてた。目で追えないレベル


無名の探索者

 目で追えないとかニシダかよwww


無名の探索者

 明らかに常人には無理な動き。探索者かもしれない


無名の探索者

 それが本当なら良いバイト入ったじゃん


無名の探索者

 ニシダに弟子入りしようとしてんじゃね?


無名の探索者

 あり得る


無名の探索者

 そういう近づき方があったかー


無名の探索者

 竜牙もバイトに来るかもなwww


無名の探索者

 おれは権蔵氏に期待


無名の探索者

 そういや最近ニシダを神オヂと崇めてるヤバいやつこのスレで見ないな?


無名の探索者

 捕まったんじゃねw


無名の探索者

 捕まっててほしい


無名の探索者

 ただのネタやろ


無名の探索者

 どうせ中身はおっさん。おっさんがおっさんを神認定してるだけ


無名の探索者

 おい夢がない話やめろwww



    ◇ ◇ ◇



「店長さん、ダンジョンで牛肉と豚肉を仕入れてきましたよ」

「マジか」


 俺は思わず絶句してしまった。


 新たにアルバイトとして雇った大坂真緒。

 フロア業務だけで十分すぎるほど戦力になってくれていたというのに、ダンジョンでの食材の調達まで可能だと主張してきたのだ。


 確かにAランク探索者であれば、うちの看板メニューの一つであるハンバーグ定食に必須のミノタウロスやハイオークを狩るのも不可能ではないだろうが……。


 しかもお店の定休日に、俺の代わりに食材を仕入れてくれるというので、一度試しにお願いしてみた結果、


「ミノタウロス十頭にハイオーク八頭……これだけあれば二週間は余裕で持つぞ……。しかも解体まで終わってるなんて……」


 本当にダンジョンに潜って入手してくれたのである。


「店長さんがいつも通っている立飛ダンジョンで狩ってきました。亜空間バッグのお陰で持ち帰りがすごく楽でしたよ。……だけどこんなに貴重なもの、お借りしちゃってよかったんですか?」

「そんなの全然構わない。昔ちょっと使ってただけで、今はもう使ってないからな。それよりダンジョンの下層まで潜ってもらうなんて、今の時給じゃ割に合わなさ過ぎるだろう? どれぐらい時間がかかったか分からないが……そうだな、時給2万くらいでどうだ? いや、それでも安すぎるか……」


 実は食材の確保を外注することも考えたことがあるのだ。

 だが探索者事務所で見積もりを出してもらったら、あまりにも高くて断念したのである。


 その金額から相場を考えると、時給2万なんて酷すぎる金額だろう。


「いえいえ、むしろそんなに要らないくらいですよっ。店長さんならもっと簡単に手に入れられるのに、私が出しゃばっちゃっただけですし……」

「いや、正直言って代わりに食材を獲りにいってくれるなら、めちゃくちゃ助かる」

「本当ですか? じゃあ、ぜひまた在庫が減ってきたら言ってください。時給は店長さんにお任せしますよ」


 結局、時給は3万円ということにした。

 それでもあまりにも安いが、当の本人はむしろ恐縮したような感じだった。


 うーむ、なんて素晴らしいアルバイトなんだ……。


 バイトにしておくのが惜しいくらいなので、いっそ社員として雇った方がいいのではと思ったが、向こうはあくまで腰かけ気分で働いてくれているだけかもしれない。

 まだ雇ったばかりだし、そうした提案はもう少し経ってからにするとしよう。


「ところで大坂さん、俺の厨房服、どこにあるか知らないか?」

「いつも店長さんが着ているやつですか?」

「ああ。全部で五着あって、毎日洗濯して着まわしているんだが、なぜか四着しかないんだ」

「そうなんですね。うーん、ちょっと私には分からないですね」

「そうだよなぁ。いつも同じ場所に置いているはずなんだが……間違えて捨てちゃったとか……いや、さすがにそんなはずは……」


 結局どんなに探しても見つからないので、新しいやつを買うことにしたのだった。

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