第42話 これは売れる予感
恋音のお願いを受けて、俺はすぐに金本美久サイドと連絡を取った。
俺と恋音が親戚だということは伝えてなかったようでかなり驚かれつつ、あっさりと恋音を交えたコラボ配信の実施が決定した。
元々、向こうからすでに第二回のコラボ配信の打診がきていたのだけどな。
忙しくてなかなか返事ができていなかったのだ。
そうしてコラボ配信の当日。
「どうも、ケンちゃん食堂の店主、ケンです」
「やる気カナ~? 元気カナ~? 笑顔カナ~? みんなを元気いっぱいにしちゃう系アイドル、鳳凰山38の金本美久だよ!」
〈はじまった!〉
〈待ってた〉
〈めっちゃ久しぶりな感じする〉
〈また二人のコラボが見れるなんて〉
〈神コラボ〉
〈すべてのコラボの中で一番好き〉
〈毎日やってほしい〉
〈二人とも多忙だからなぁ〉
〈コラボしてくれるだけで感謝〉
先日Sランクへの昇格試験が行われた井の頭ダンジョンのゲート前で、俺は金本美久とのコラボ配信をスタートさせていた。
開始と同時にコメントが次々と寄せられてきて、同接数も一気に30万人を超えたほど。
もちろん金本美久だけでなく、マネージャーの加賀麗華も一緒だ。
「まさかまたケンさんとコラボができるなんて! すごく嬉しいです!」
「いや、こっちこそ、無理を言って申し訳ない」
「いえいえ、それはこちらの台詞ですよ! Sランカーの方とコラボ配信なんて、普通は願ってもできないことですし!」
〈もしかしてニシダから打診したん?〉
〈マジか〉
〈おいニシダ、美久ちゃんと懇ろになろうなんざ20歳遅いぞ〉
〈むしろニシダがSランクになったタイミングを逃さずに金本サイドが打診したのかと〉
「あ、打診はもちろん私の方からだよー。ただケンさん側から一つ条件があっただけで」
彼女のチャンネルの方にも視聴者からの質問があったのか、金本美久が軽く事情を説明する。
〈条件?〉
〈まさか〉
〈ニシダお前ってやつは〉
〈天童奈々がいるのに〉
〈ニシダ犯罪者扱いで草〉
〈詳しい説明を聞かないと判断できん〉
「じゃあ、早速紹介しちゃうね。今回、私たちと一緒に探索することになった、
「は、はひっ……」
金本美久からの紹介を受けて、緊張しまくった恋音がドローンカメラにフレームインしてくる。
「は、は、は、はじめましゅて! わわわ、わたしは、しゅどう、ことと言いましゅ! よよよ、よろしくお願いしましゅ!」
〈噛みまくりで草〉
〈ワラwww〉
〈赤ちゃんかな?〉
〈がんばれー〉
〈応援したくなるな笑〉
〈誰この子? 結構かわいいじゃん〉
〈まさかの六期生登場〉
〈六期だ〉
〈デビューほやほやだぞ〉
〈六期生がなぜ?〉
〈美久ちゃんの後輩かー〉
〈可愛いかも〉
〈将来のエース候補の一人やな〉
「そんなに緊張しなくていいよ。気楽にいこう、気楽にね」
「は、はいっ……」
「恋音。おじさんも最初は緊張したけどな、慣れてきたら気にならなくなるから大丈夫だ」
「う、うん……(どっちかというと、配信よりも美久先輩に緊張してるんだけど……)」
〈は? 呼び捨て?〉
〈なんかニシダ、恋音ちゃんに慣れ慣れしくない?〉
〈初対面じゃねーの?〉
〈彼女まだ高校生のはず〉
〈これは通報不可避〉
〈おまわりさーん〉
視聴者たちがあらぬ疑いをかけ始めたので、俺は慌てて恋音との関係を告げた。
「ええと、実は彼女、俺の姪っ子なんです」
〈へ?〉
〈マジ?〉
〈嘘つけ、こんな美少女がニシダの血縁者なわけないだろ〉
〈それなwww〉
〈言われてみたらちょっと似てるかも?〉
〈どこがだよ。似ても似つかねぇって〉
〈血が繋がってない姪っ子?〉
〈酷い言われようで草〉
〈お前ら相手がニシダなら何でも言っていいと思ってね?〉
……コメント欄が手厳しい。
まぁでも俺も自覚している。
俺の親族からアイドルが出るとか、遺伝どうなってるんだと。
「ほ、本当ですっ! 賢一おじさんは、わたしの母の弟さんですっ!」
〈恋音ちゃんが言うなら信じる〉
〈そうだな、俺も信じるぜ〉
〈うんうん、信じる信じる〉
〈お前らチョロいな〉
〈ケンさんかと思ってたらケンイチだった件〉
〈それなw〉
「とまぁ、そんな彼女も実は覚醒者でして。金本さんとは同じアイドルグループの先輩と後輩だし、せっかくなのでコラボ配信に参加してもらおうかなと」
「ケンさんの方から話が来たときはびっくりしました! まさか六期生の中にケンさんの姪っ子さんがいるなんて、私たちも知らなかったので! それにデビューしたばかりで、これからファンの皆さんに覚えてもらいたいタイミングだったから、ちょうどよかったです!」
〈今や大人気のコラボ配信だからな〉
〈いきなりこれに出れるとか前途洋洋だろ〉
〈てか、本当はニシダのコネで受かったんじゃね?〉
〈仮にそうだとしても可愛いからヨシ〉
〈だなw しかしニシダと血の繋がりのある覚醒者か〉
〈覚醒者としての将来にも期待できるかもなー〉
〈これは売れる予感〉
「わ、わたしとしては、四期の大先輩のチャンネルに参加させていただけるなんて、本当に感激です……っ! 足を引っ張らないように頑張ります……っ!」
「だから恋音ちゃん、そんなに気を張らなくても大丈夫だって~。あと大先輩て……まだ私18なんだけどなぁ」
〈年増扱いされてむくれる美久ちゃんキャワ〉
〈四期はそろそろベテランの域だからな〉
〈三期も卒業が増えてきてるし、グループの中心になりつつある〉
〈お前らやけに詳しいなw ここニシダのチャンネルだぞwww〉
〈しかし恋音ちゃんまだ高校生なら覚醒したばかりだろうし、何やるんだろ?〉
「えーと、気になってる方もいるようなので、簡単に説明しますね。今回のコラボの内容ですが……いわゆるパワーレベリングをやろうと思ってます」
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