第15話 僕は2章でも不運です!

 紅銀の狼王ブラッティシルバーの一件から5年経ち、僕は10歳になりました。


 5年の間、いろいろな不幸や不運にあったりしたけど…。今は話す必要がないと思ったので省略している。

 まぁその話は追々していくとして…


 そんな僕が今、何をしているかというと…



「くっそがああぁ!」


 ゴブリンの大群から必死に逃げているところです…。


 なんで!?なんでいつもこうなるのさ!

 僕はただエミリスと一緒にフガイの森に入ってレア素材取ろうとしただけなのに…。

 エミリスが勝手に行動してはぐれてしまって、森の中をウロウロしていたらゴブリンに遭遇してしまい、倒そうとしたらゾロゾロと出て来て、しまいには一斉に襲いかかってきて…。

 そして今この状況だよ!


 本当に僕はついてない!


 そう思いながら僕はひたすら走っていた。


 ちなみに速さがFなのになんでゴブリンたちから追いつかれないかというと…


 僕はこの5年間でレベルが80まで上がった(ステータスは変わらなかったけど…)。そのため、僕の【会心必当クリティカルヒット】の効果が少し変わって倍率やタイミングなども自分でコントロールできるようになった。

 だから走る時も地面に攻撃していると思い込めばクリティカルが出て、普通の人よりは早く走れるようになるのだ。

 だけど常に50倍の威力で設定しとかないと少しでも威力を間違えると地面が抉れてしまうんだよなぁ…。

 しかもデメリットは常に発動しているから…


『クリティカルヒット!』

『クリティカルヒット!』

『クリティカルヒット!』


 この音声が走る度に頭の中で流れているのだ。戦いで攻撃するときはすっかり慣れたけど、走る時のこれは慣れるのにもう少し時間がかかりそうだ。


 って今そんなことを考えている暇はない!早く逃げきらないと体力が…

 なんか1章からこの話まで逃げ回っている描写が多いような…。ん?1章って何言ってんだ僕は…。


「ワーク!」


 などと考えていると遠くの方で声がした。声のした前方を見るとエミリスが杖を構えてスタンバイしているのが見えた。


「そのままゴブリンたちを引きつけてね…。"凍てつきし氷よ…"」

「ん?待って…このままじゃ当たるって!」

「"敵を裂く刃となり吹き荒れよ!"」


 あっ…これ、詠唱に集中しすぎて聞いてないな…。


「ちょ、待っー」

「【氷刃の嵐ブリザードストーム】!」


 杖の先から無数の氷の刃が放たれる。


「ひゃああ!」


 僕は間一髪のところで避けることができた。


 僕が避けた氷の刃は一直線にゴブリンたちに向かっていき、ゴブリンたちは悲鳴を上げながら切り裂かれていった。


 うわぁ…残酷だ…。

 というか僕、避けなかったらこうなってたよね!?


「エミリス姉さん!僕を殺す気ですか!!」


 僕はエミリスに怒ったがそんなことを気にすることなく、


「だってワーク、そういう悪運みたいなのはあるから大丈夫かなって…。それに私がいなかったら逆にゴブリンに殺されてたかもしれないから感謝してよね!」


と胸を張って言った。


 12歳になったエミリスはレベルも90になり、炎に加えて氷の上級魔法も使えるようになっていた。

 雰囲気も少し大人びていたが性格は相変わらず変わらなかった。


「ひどくないですか!元はといえば、姉さんがビリビリ茸があっちにあるかもって言って僕を置いて行ったんでしょ!そのせいで僕は迷うし…。」

「はぐれたのはワークの方じゃない。まぁ、ゴブリンは倒したからいいでしょ。もう1度ビリビリ茸を探しに行きましょ。」

「そんな理不尽な…」


 エミリスは構わず僕の腕を引っ張って探索を再開した。


 変わったことといえば、エミリスはあの紅銀の狼王ブラッティシルバーの件があってから僕と一緒に探索に行くことが多くなった。

 

 認めてくれたってことでいいのかな?

 だとしたらこの扱いひどい気がするけど…。

 アルマンとグライトは僕たちを見て仲がいいって勘違いしてるし…。

 まぁいいや…。早いとこ僕の鑑定眼でさっさと見つけよう。


 こうして僕たち2人は探索を終えてビリビリ茸を手に入れることができた。

 そしてその足でアルナ村の村長であるグライトの家に向かった。このビリビリ茸はグライトに頼まれていた物だ。


「おぉ、来たかチビッ子!どうだ?ビリビリ茸は見つかったか?」


 頼まれていた物を渡すとグライトは満足そうな顔をした。


「ありがとな。確かにビリビリ茸だ。あとで駄賃を渡しておくぜ。」

「ありがとうございます!」


 僕たちがグライトの家を出ようとすると、


「あっと、そうだ。おいチビッ子。明日、王国の冒険者ギルドに登録に行ってもらうから出かける準備をしておいてくれ。」

「…え?」


 僕はグライトの言葉を聞いて止まってしまった。


 明日…?いや、急過ぎない?


 5年前にグライトに冒険者ギルドに入れと言われたが実際は登録の条件を満たしていなかったため登録できなかった。

 この国では10歳にならないと登録できない決まりになっており、それまで僕はレベル上げを頑張っていた(ちなみにエミリスは登録済み)。


 いや、10歳になったからもうすぐとは思っていたよ。…思ってたけどさぁ…。


「グライトさん、急すぎません?もう少し準備したいんですけど…。」


 しかし、僕の発言はグライトの言葉を聞いてなぜか目を輝かせていたエミリスにかき消された。


「やった!やっとギルド登録できるのね!さっそく準備しましょ!私も一緒に行ってもいいよね?」

「あぁ、もちろんいいぜ!」


 エミリスの質問にグライトは2つ返事でOKした。


 なーんで勝手に話を進めるかな?


「いや、だからー」

「ねっ!ワーク。一緒に行こう?」


 必死に拒否しようとしたがエミリスのキラキラとした眼差しには勝てず、僕は渋々承諾した。


 そういえば僕に拒否権はないんだった…。


「よし、じゃあ明日の朝、アルナ村の入り口に集合してくれ。」

「明日が楽しみね!」


 なんでエミリスがワクワクしてるのさ…。

 僕も少し楽しみではあるけどさ。

 はぁ…明日のギルド登録、何事もなければいいけど…。





ーーーーーーーーー

○ワーク  10歳  レベル80


レベルアップにより【会心必当クリティカルヒット】の倍率やタイミングのコントロールが可能になった。


○エミリス  12歳  レベル90


レベルアップにより【氷魔法(上級)】を取得した。







 

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