第6話 固有スキル 【会心必当】
何が起こってるんだ…?
今、目の前では僕に襲いかかろうとしてきたキラーベアが右足をおさえて倒れこんでいる。
その右足は抉れていてそこから大量の血が出ている。
これ、もしかして僕がやったの?
そう考えている内にキラーベアが僕を睨み付けてきた。その目は僕を補食対象としてではなく、完全に攻撃対象として捉えていた。
攻撃しないと…殺られる!
そしてキラーベアはゆっくりと起き上がると、
グルァアア!
と咆哮を上げ、右足を引きずりながらも両腕を広げて僕に襲いかかってきた。
「うっうわぁぁ!」
僕は無我夢中でその辺にあった石を拾って投げ続けた。
僕の投げた石がキラーベアの左手に当たる。
『クリティカルヒット!』
今度は右の横腹、
『クリティカルヒット!』
次は右腕、
『クリティカルヒット!』
石がキラーベアの身体に当たる度に機械的な音声が大きく聞こえる。いや、聞こえるというより頭の中で響くという言葉の方が正しいかもしれない。
その音声が響くと当たった場所が抉れていき、その都度うめき声を上げる。だがキラーベアも諦めずに僕に攻撃しようとしてくる。
がむしゃらに投げた石がついにキラーベアの頭に命中する。
『クリティカルヒット!』
音声が響き、キラーベアの頭は吹き飛んだ。そしてキラーベアはそのまま後ろに倒れて動かなくなった。
「倒した…のか?」
そう思い、安堵した瞬間、胸に激痛が走り、僕はゲホゲホと血を吐いた。
そういえば致命傷をくらってたの忘れてた…。
どうしようかと迷っていた僕だったが、アルマンから役に立つかもしれないと【ヒール】をコピーしていたのを思い出す。
少しの足しになるなら…。
僕は傷口に手を当てて、
「"
とスキルを発動させた。すると、
『クリティカルヒット!』
またあの音声が流れたかと思うと傷口はみるみるふさがっていく。そして傷はあっという間に治り、傷ひとつないきれいな状態にまで回復した。
どういうこと…?さっきの攻撃もだけど...もしかして…
僕はすぐに疑問の答えに気付き、スキルプレートを取り出した。そしてスキルの項目を確認する。
思った通り、固有スキルで【?】となっていた部分には新しいスキルが表示されていた。
【
対象への攻撃・効果において必ずクリティカルが発生し、クリティカルが発生した場合、50~1000倍の効果を得る(レベルを上げることによって倍率を操作することができる)。
ただし、デメリットとして攻撃・効果を発動する度に音声が流れ続けるがこの音声を消去することはできない(またこの音声は相手には聞こえていない)。
僕はこの固有スキルを見て先ほどのキラーベアとの戦闘(ただ石を投げ続けただけだが…)を思い出す。
…じゃあ石を投げた時の威力とヒールを発動した時のあの回復量はこの固有スキルのおかげなのか?
さっき発動した時の『クリティカルヒット!』って言う音声もこの固有スキルのデメリットだったんだ…。
このスキルがなければ僕は今頃、キラーベアに喰われていただろう。最後の固有スキルがマシなやつでよかった。もしショボいやつだったら死んであの世で女神を恨むところだった。
そういえば、キラーベアを倒したからレベルも上がっているな…。さっきはスキルを確認するのに必死で見れていなかったからな。
「さて、どのくらい上がっ…たかな…。」
僕はレベルを改めて見て驚いた。
レベル…30!
なんとこの戦いでエミリスのレベルをあっさりと越えてしまったのだ。
あの魔物…そんなに経験値が高かったの?
じゃあステータスも上がってる!
僕は期待してステータスを確認したがレベルが大きく上がった割にはステータスは少ししか上がっておらず、全部Fだった。
30も上がったのにF …。あれだけ怖い想いをしたのにFなんだ…。この感じだと...Eになるにはまだまだ先になるのかな…。
"見習い"が最弱のはずれ職って言われるわけだよ…。
僕はステータスを見て、ガクッと肩をおとしたが固有スキルを見て閃いた。
待てよ…ステータスはあれだけど、見習いの専用スキル【
専用スキルの効果で半減されても固有スキルが打ち消してその上に威力が加算される。
つまり他の人のスキルをコピーすればその人より威力の高いスキルをだすことができるのだ。
これ…音声気にしなかったら最強じゃん、この【
あの音声だって我慢すればそのうち慣れていくよね…きっと!
気がつけば朝日が登りは、周りは明るくなりはじめていた。
荒れ地に捨てられたり、はずれ職最弱の"見習い"になったりキラーベアに殺されそうになったりと転生してから不運の連続だったけど…。
僕は手にペンダントを握りしめ、決意する。
僕は絶対に冒険者になる…。そして旅をして見習いでも最強になれるってことを証明してやるんだ!
…そしたらいずれ僕の両親にも会えるかもしれない…。
「あっそうだ…。」
僕はボロボロになった服を見ながらため息をついた。
「これ…どう説明しようかな…。」
僕は何かいい案がないかを考えながらトボトボと家へと帰っていった。
ーーーーーーーーーーーー
今日の成果
レベル
1→30
初回の戦闘により、固有スキル【
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