第5話 【見習い】は【|魔法使い《メイジ》】と探索する。

 「えっついていくんですか?"見習い"の僕が?」


 嫌な予感は的中した。でもなんで?


 エミリスは僕を指さし、


「そうよ。あなたの【鑑定眼】のスキルがあれば、レアなお宝とか素材がある場所とか一発で分かるじゃない。」


 あっ目当てそっちか…。


「でも僕、弱いですよ…。魔物とか来たら一発でアウトですよ?」


 僕はブルブル震える。


「私のこと、信用してないの?私は【魔法使いメイジ】よ。しかもレベルは21よ。」


 エミリスは腕を組み、自慢する。


 あっレベル上げしたんですね。

 だって昨日20だったもんね…。


「いざとなったら私の炎魔法で一発よ。」

「強いのは分かりましたけど、アルマンさんが許してくれますかね?」


 僕は不安そうな目でエミリスを見つめる。だって冒険はしない方がいいってアルマンさん言ってたし、


「あっおじいちゃんはいいよって言ってくれたわよ。」


 ほら、やっぱり…。


「ん…今なんて?」

「だからいいよって。私がお願いしたら、即OK してくれたわよ。」

「はぁ!」


 僕は目を丸くした。だって冒険無理って言ってたじゃん!

 あのじじい!孫には甘くないか!?


「というわけで明日の朝、装備を整えたら森の探索に行くわよ。そうだ!ついでにあなたのレベル上げにも付き合ってあげる。これでいいでしょ?」


 そう言ってエミリスは念を押すように僕を指さした。


 これ拒否権とか無さそうだな…。ここは素直に応じよう…。


「……分かりました。」


 僕は嫌々ながらも承諾した。


 ーそして当日


 僕とエミリスは村の外にあるフガイの森を探索することになった。

 エミリスは僕のレベル上げにも付き合ってあげると言っていたが本命は僕の【鑑定眼】で素材とレアアイテムを手に入れることだろう。


「私、どうしてもアイテムバックが欲しいの。でも、今のペースじゃ間に合わないから、レア素材とかアイテムを見つけて、大金を手に入れるしかないの!」


 心の声、漏れてますよ…。

 この世界では子供の小遣い稼ぎは魔物討伐したり採取したりして素材を売ることで得ているらしい…。

 あとアイテムバックあるんだ…。やっぱり冒険する人にとって素材やアイテムが大量に入る物がないと成りたたないよね。

 まぁ冒険諦めろと言われた僕には関係ないけど…。


「ちなみにエミリスさんが欲しいアイテムバックっていくらするんですか?」

「10万ゴルドだけど?」


 はぁ、これまた結構な値段で…。


「…今どのくらいたまってるんですか?」

「8万ゴルド。スライムとか化けキノコから採れる素材を売って2年かけてやっとよ。」


 じゃあ同じように素材集めて売ればいいじゃん。


「でも【魔法使いメイジ】は基本魔法を使って戦うじゃない?どうしても魔力を消費してしまうからマナポーションとか使って回復するんだけどポーションもタダじゃないから...正直言うとめんどくさい!」


 ほら、また心の声が漏れてるよ。


「そこにあなたの【鑑定眼】が現れたの!だってそのスキルを使えば、どこにレア素材があるか分かるし、運が良ければ宝箱の場所だって分かるじゃない!」


 エミリスは僕をじっと見つめる。


「ちまちま稼いでいたら私が欲しいアイテムバックがなくなるかもしれないし、あれが次に入荷されるのがいつになるか分からないから、今の内に手に入れないと!」


 エミリスは拳を握りしめる。よく見ると瞳の奥が燃えていた。


「だからあなたのスキルが必要なのよ!【見習い】なのは気にいらないけど…。」


 それは僕だって同じです…。まぁでもこのスキルで戦いは避けつつ、素材集めをするのはいいかも…。今後の生活の足しになるし。


「基本、あなたは【鑑定眼】を使って素材を見つけて、もし強い魔物が出たら逃げる。こんな感じで探索をしていくわ。スライムぐらいの弱い魔物なら私は魔法なしでも攻撃はできるから、もしも囲まれたりでもしたらその時は魔法を使うわ。あなたは素材を探すことだけに専念してね。分かった?」


 僕はうなずく。


「じゃあお願いね!」


 僕はエミリスの言葉で一歩前に出て、


(【鑑定眼】!)


 心の中でとなえた。目の前にいろいろな素材が表示される。これのもう1つ便利なところはレア度も表示され、なんのアイテムに必要なのかなどが詳細に分かることだ。


(このキノコは麻痺消しに使えるのか、こっちの薬草はそのまま使っても回復できるのか…。)


 僕はレア度が高いもの全て取って袋に入れていった。途中スライムに遭遇したりしたがエミリスが杖で殴って倒したりして森の奥へと進んだ。


 そしてしばらく歩いていると僕の【鑑定眼】で反応があった。よく見ると宝箱があった。


「エミリスさん、宝箱がありましたよ!開けてみましょう!」


 僕は宝箱を見つけた嬉しさで魔物のことなど気にしていなかった。そして僕は走って宝箱まで近いていった。


「ワーク、危ない!」


 エミリスが叫んだ。宝箱の周りの草むらから何か飛び出して来た。


「へ?」


 尖った耳に緑の体、細長い手足…ゴブリンだ。

 ゴブリンが草むらから飛び出し、叫びながら僕めがけて短剣を降りおろして来た。


 あっ…僕の人生、ここで終了?



 ーー補足ーー


 通貨:小さい順からフロン、シルバ、ゴルドとなっていてそれぞれ日本円で例えると100円、1000円、10000円。つまりエミリスが欲しいと言ってたアイテムバックは10万円もする。


 フガイの森:アルナ村で儀式を終えた者が最初に挑む場所。比較的弱い魔物が多いが奥にいけば行くほど強い魔物が出る。森というだけあって薬草やキノコなど薬品の素材が手に入る。


 装備:エミリスはカシの杖、魔導ローブ、魔導帽子を装備。ワークは短剣以外は布服(装備屋に行ったところ、ワークに装備可能な装備がほぼなかった。あとお金はエミリスがけちったため)を装備。


 スライム:森で必ず出逢う雑魚。エリアによって属性は変わるが基本弱い。稀に金や宝石でできたスライムが存在し、その素材は高値で売れる。


 ゴブリン:様々な武器を扱う。基本ゴブリンからは何もドロップしない。そのため、遭遇しても討伐せず逃げる冒険者が多い(たまに討伐依頼がある)。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る