手紙
手紙
拝啓
君へ。
健康そうでなにより。
あの夏の日が、懐かしいよ。
――ああ、会いたいな。
思い出せば、去年の夏、俺たちは多くのことを経験した。
誰も信じてくれないような、奇跡ともいえる日々を過ごした。
とめどなく想いが溢れてくるのだが、それをどういう言葉に表せばいいのかわからない。行動で示すのであれば、ただ一言「会いたい」だ。
彼女とまた手を繋いで星空を見上げたい。
なにを書こうか迷って、ペンをくるくると指の間で回す。
――会えるのを楽しみにしている。
悩んだすえ、素直に気持ちを記した。
俺は短い手紙を書き終えた。もしかしなくても、もらった手紙よりもずいぶん短い返事だが、それ以上書くことが見つからない。
うーんと伸びをしてから窓に視線を向ける。曇った窓ガラスを袖口でごしごし拭いて、外を見た。
まだまだ、季節は寒い。
それでも、膨らんできた梅のつぼみから春の足音を聞いたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます