夏の始まり
夜鷹掌
球(習作)
ヘリウムが透過するには充分だ
火を止めた 腹に力を入れて、
「おはよう お世話になります!」
靴にはいつかばらまいた豆粒のひっついたまま
大地は赤土よりもまとまって怠けたウェーブを
一千キロの眼下に送りキラキラしてる
意識は呼吸にまじり始めプクッと餅みたいに膨らんでは凹んだ
ポッケに毛が生えてきて指も感覚と一緒に溶けていく
喉を切開し、首の置物が片側から走っていた単調な頷きが、
今も視界の奥にあって、隕石みたいな兄貴の拳骨が歯に食い込んでいる
深めにかぶられた兜の男は侵入者だから、螺旋形の棚は何年も前に荒らされたかに見えた
きゅるっと唾を飲み込んだ屋上のないあの小屋で、君と肩をふるわせ目配せし合った夏の夜がもう、恋しい
返事はない、
透明な管を通してから
私のスマホの小さなカメラを向けているってのに、
ひるんだ地平線にもう一度 今度は静かに語りかける
「ドラゴンは卵を孵したわ」
回転する稲妻が
私の封筒をめくり捨てるのか
肉切り包丁でリズムを取る
魔女のまな板は綺麗に拭かれていて、みんな食べてしまった
夏の始まり 夜鷹掌 @Hokerikon
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