5 時を超えて

光の守護者となったゼノンと、地上の守護者となったルナ。二人の新たな使命が始まってから、幾星霜の時が流れた。


ゼノンは、目に見えない光の存在として世界を見守り続けていた。彼の意識は、世界中のあらゆる場所に同時に存在し、均衡を保つために働いていた。


時に、自然災害を和らげ、時に、人々の心に希望の光を灯す。しかし、直接的な介入は許されず、ただ見守ることしかできない。


一方、ルナは地上で光の守護者としての役目を果たしていた。彼女は年を重ねながらも、セルフィーヌから受け継いだ力によって、長い寿命を与えられていた。彼女は人々を導き、平和を維持するために尽力し続けた。


そして、ルナには一人の娘がいた。エレナと名付けられたその子は、母から受け継いだ強い魔力の才能を持っていた。


「母さん、私もいつか光の守護者になれるの?」


幼いエレナが、好奇心に満ちた目でルナを見上げる。ルナは優しく微笑んだ。


「ええ、きっとなれるわ。でも、それはとても大切で、重い役目なのよ」


ルナは娘に、セルフィーヌとゼノンの物語を語り継いだ。失われた姉の記憶と、光となった友の存在を決して忘れないように。


時は流れ、エレナも成長し、やがて自分の娘を持つまでになった。そして、その娘もまた守護者としての力を受け継いでいった。


世代を超えて、ルナの血筋は守護者の役目を果たし続けた。彼女たちは、常に世界の均衡を見守るゼノンの存在を感じながら、人々を導いていった。


しかし、世界は常に平和ではなかった。戦争や疫病、自然災害。様々な試練が人々を襲った。そのたびに、ルナの子孫たちは力を尽くして人々を守り、ゼノンは可能な限りの導きを与えた。


幾度もの危機を乗り越え、世界は少しずつ、しかし確実に変化していった。魔法の技術は進歩し、人々の生活は豊かになっていく。しかし同時に、古い魔法の知識の中には失われていくものもあった。


ゼノンは、この変化を複雑な思いで見守っていた。魔法の進歩は素晴らしいものだが、同時に、かつての世界の記憶が薄れていくのを感じずにはいられなかった。


そして、ゼノンの心の中で、常にセルフィーヌの存在が大きな位置を占めていた。彼女の魂は、あの日以来、深い眠りについていた。ゼノンは、その魂を癒し、いつか新たな形で蘇らせることを誓っていた。


長い年月をかけて、ゼノンはセルフィーヌの傷ついた魂を見守り続けてきた。そして、ついにその魂を癒し、新たな人生を与える時が来たと感じた。


(セルフィーヌ⋯⋯今こそ、君に新たな人生を)


ゼノンは慎重に、セルフィーヌの魂を別の次元、現代の地球の日本へと導いた。彼は、この新しい環境が彼女の魂を癒し、力を取り戻すのに適していると判断したのだ。


ある病院の産婦人科で、一人の女の子が生まれようとしていた。


(ここで、君の新たな人生が始まる)


赤ん坊の産声が病室に響き渡る。


「おめでとうございます。元気な女の子です」


看護師の声に、両親は喜びの涙を流した。両親は愛情を込めて赤ん坊を見つめ、その子の未来に思いを馳せる。


生まれたばかりの赤ん坊は、まるで何かを感じ取ったかのように、小さな手を天井に向かって伸ばした。


ゼノンは、目に見えない光となってその小さな手に触れる。


(よく来たな、セルフィーヌ。ここで、君の魂が癒されていくことを)


赤ん坊の瞳が、一瞬だけ不思議な光を放った。それは、彼女の魂に刻まれる古の力の証だった。


光となったゼノンは、新たに生まれた魂を静かに見守っている。


(セルフィーヌ⋯⋯君の魂が癒されることを願っている。どうか、ゆっくり成長していってくれ)


かつてのセルフィーヌの魂を持つ少女。


ルナの血筋を引く者たち。


そして光の存在となったゼノン。


彼らの物語は、新たな幕開けを迎えようとしていた。


世界は、まだ知らない。異なる次元の世界が交錯する、新たな時代の到来を。

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