酔狂殿下は漕ぎ穿つ
鹿
第1話 初めまして、殿下
宮内省に務めている大学の同期からこんな噂話を聞いた。
『
とはいえ、皇族の方など僕のような国交省の課長如きに関われるような存在ではない。当時12歳だった殿下の事など、テレビの向こうの存在でしかなく、ただ「可愛いな」と思うくらいだった。
塰子内親王殿下は、非常に特徴的な外見をなされている。長い白髪のルーズサイドテールに、脈打つ血で染まった灼眼、そして触れれば溶けてなくなってしまいそうな、ほんのりと朱に染みている透き通った白い肌。
先天性白皮症、いわゆるアルビノを患い、日光の下で長時間活動することができない彼女は、メディアへの露出も少なく、しかしてその整った容姿から国民の認知度は非常に高い。
稀に祭典などに出席されたりする際は黒い日傘を差して黒いワンピースを着ていることから、【喪服の白百合】などという大層な通り名がある。
その喪服の白百合と、僕は巡り合ってしまった。
「異動御苦労、改めて名前を聞かせてもらえるかな?」
高圧的な口調と、それに似つかわしくない可愛らしい萌え声。正直この声で普通に喋られただけで勘違いしてしまいそうなくらいなので、ありがたい話だ。
締め切られた黒いカーテンの御前、大きな木製デスクに腰かけ、脚を組んで煽情的に腕も組んでいる。恐らくDカップはあるであろう胸が強調されているが、それ以上にこの薄く紫の入った黒いワンピースが視覚に官能を訴えて来てなんともやり辛い。
とはいえ、齢16の少女に劣情を抱くなど何より僕の道徳が許さない。これでも公官庁に努める公務員なのだ。そうそう容易く壊れる精神は持ち合わせていない。
「
対して僕の方はと言うと、黒髪黒目ショートカットで、童顔とよく言われる丸い顔立ちに日本人らしい黄色い肌、そして155cmという短身長。良くも悪くも可愛らしい出で立ちである。ついでに言えば、胸に脂肪がたまりやすいらしく、何故かCカップもある。ちなみにこれは妹に無理やり測られただけで、自分で計測したわけではない。
「ふむ……よし、君、女装し給え。」
「は?」
そんな容姿故に、割と昔から女装しろと言う言葉とは付き合ってきた。具体的には文化祭でメイド喫茶をするときにも男の娘メイドやってくれと言われたし、舞台でも女役をやらされたし、時には友人のイケメンの女避けに使われたこともあったのだが、うーん。
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