復讐

復讐

人間とエルフはかつて共存していた。

しかし、エルフの魔法を恐れ始めた人間が一方的にエルフを虐殺した。

エルフの老若男女問わず手当たり次第にいきなり殺された。

悲鳴、嘆願、怒号、悲痛、嗚咽、地獄と呼ぶには充分な光景だった。

両親もあっけなく剣で刺された。

両親の口から血が飛び出て、目から生気が消える。

そんな光景にショックでただ立ち尽くしている、まだ子供だった私に複数の兵士が襲い掛かる。

力でかなうはずもなく、地面に仰向けに抑えられ、犯され、挙句の果てにその兵士たちが持っていた松明を顔に当てられる。

苦しみという表現では足りない。

そんな光景を見て祖父が禁忌の呪文を使った。

エルフの中でもごくわずかな老エルフしか伝えられていない禁忌の呪文。

その呪文は対象の半径1㎞の行き過ぎた知的生命体の絶滅。

そうして、私だけが生き残った。

だが、幼かった私に一人で生き抜く知恵とすべはなく、あと数時間で餓死するというタイミングで奇跡的に、別の生き残りのエルフに拾われた。

人間が来ないような山の奥地でとにかく教わった。

先生はいろいろ教えてくれた。

食べられる植物の見分け方。

動物の捕まえ方。

捌き方。

保存方法など、1人でも生きていける知識と

人間をだます方法。

人間の殺し方。

人間の感情。

人間の欲望。

など復讐するための知識を。

そして先生と私は私たちのテリトリーに入ってくる人間を片っ端から殺していった。

「なぁ聞いたか？あの噂。」

「あぁ、1度入ったら誰も帰ってこれないという森の噂だな！！」

「そんな危険な所へ行く必要ある？」

「ボクは行ってみたいな！！」

たくさんの以来の張り紙が貼ってあるギルドの斡旋所。

机を囲んで話し込む1つのパーティ。

ロングソードにマント、額にはバンダナをしており、革の鎧をまとっているいかにも勇者という風貌の男。

ヘルムを机においており、その傍らには巨大なハンマーが立っている。

全身を鉄装備で整えているガタイがでかい豪快そうな男。

木製の１ｍくらいの棒に浮いている白い球がついており、白いフード付きのコートを着ている聖職者。

露出が多い恰好をしている背が低い活発そうな少女。

「だよな！！しかもなんか発見したらギルドからの報酬もすげぇしな！！」

「行くっきゃないだろ！！」

「止めても無駄ですよね・・・。」

「そうと決まればしゅっぱーつ！！」

こうして4人はあの森へ足を踏み入れることになった。

森に入ってから20分ほど歩いたあたりで、遺跡が遠くに見える。

「へぇ、こんな遺跡があったなんてな。」

「すげぇ古いぜこりゃ！！金になるにちげぇねぇ！！！」

「ちょっと待って、よく見て、人がいるんじゃないかしら？」

「あ！ほんとだ！！よく気付いたね！！」

聖職者が遠目に見つけた人はぼろぼろのローブをまとっており、いかにもぐったりしている。

「私、様子見てきます！！」

「おいちょ！！」

いいのかよと勇者に話しかけるが、勇者は肩をすくめる。

「ああいう奴なんだよ。」

「はやく告白しちゃえばいいのに～」

悪い顔を少女が浮かべる。

「こんにゃろ！！」

勇者が焦る。

「あの！！大丈夫ですか！！」

声をかけてもまだ動かない。

「もう大丈夫ですからね！！」

そう言って聖職者が抱きかかえようとした瞬間。

心臓に違和感が生じる。

「・・・え？」

聖職者が胸を見下ろすと、心臓にナイフが刺さっていた。

次の瞬間、もう1つのナイフが喉を一閃する。

混乱のまま聖職者が息絶える。

この異常事態に気づかない3人のうち、動きがとろそうな重装備の男に弓を構える。

そして何のよどみもなく。美しく洗練された一連の動作で最速で弓が放たれる。

サクッと頭蓋を矢が貫通する。

勇者が1秒ほど遅れて叫ぶ。

「敵襲！！！」

勇者が聖職者の方を見ると白いローブが真っ赤に染まっていた。

その少し後ろに立つエルフ。

「貴様ああぁぁ！！！！！」

「2人が殺されたんだよ！？帰ろう！？」

少女の制止もむなしく、勇者が突っ込む。

エルフが短剣を構える。

怒りに身を任せた大振りな勇者のロングソード。

見極め、二の腕、太もも、手首。

血管が集中しているところを切りつける。

血が勢いよく噴き出す。

追い打ちで頸動脈を掻っ切る。

「そ、そんな・・・。」

恐怖で逃げることもできない少女。

その少女に向かって軽い足取りで近づく。

「あ・・・あ・・・。」

「あんたは楽に殺してあげる。」

エルフが少女の頭をつかみ、一気にねじる。

ごきりと鈍い音が響き、ドサッと体が倒れる。

私は絶対に人間を許さない。