悪役令嬢だったので、もふもふ様に助けてもらいます!お返しは甘いお菓子でどうですか?

はにかえむ

第1話 プロローグ

 バーレス王国騎士団、聖獣保護隊隊舎にはそこに似つかわしくない良い匂いが立ち込めていた。

 時刻はもうすぐお茶の時間だ。私、マドレーヌ・バーレスは必死にお菓子を作っていた。

 私の相棒のスノーが、そばでつまみ食い犯が出ないようにけん制してくれている。

 周囲では目をらんらんと輝かせた聖獣様達が、お菓子が出来上がるのを待っていた。

 聖獣様は大きい。ほとんどが普通の動物の三倍くらいある。見た目はどう見ても猫やウサギなのに大型犬にと同じくらいだったりするのだ。だからマドレーヌはお菓子を大量に作らなければならなかった。

 

「手伝おうか?マドレーヌ」

 同じ聖獣保護隊に所属するプルメリアとダリアスが、手伝いを申し出てくれる。正直助かった。

「ありがとう。焼けたケーキをこっちに並べていってくれる?冷め次第デコレーションしちゃうから」

 クリームを泡立てながら言うと。ダリアスがクリーム作りを代わってくれた。彼のギフトは『氷結』だ。器用にボールの外側だけを凍らせて泡だて器で混ぜてくれる。以前冷たい方が早く美味しく出来上がると言ったら、ありがたいことに率先して手伝ってくれるようになった。

 焼きあがったケーキにみんなでデコレーションする。今日のケーキはイチゴをたっぷり挟んだショートケーキだ。

 そのころには他の騎士達も集まって来て手伝ってくれた。不格好なケーキがいくつも出来上がる。

 

 隊員達の分を残して聖獣様達にケーキを配っていく。みんなあっという間に平らげてくつろぎ始めた。

 この時間は、私にとっても至福の時間だ。

 聖獣様達は総じて人に触れられるのを嫌う。だから気に入った相棒くらいにしか触れさせないのだ。しかし、美味しいおやつを作る私のことは気に入ってくれているらしく、触れられるのを拒まない。

 まだ相棒が居ない聖獣様達をブラッシングをしながら、もふもふを堪能する。

 

 私がここに来たのは最悪の未来を回避するためだ。でもいつの間にか、この場所がかけがえのない場所になっていた。

 ここに来たきっかけを思い出す。何度思い出しても最悪で、気分が悪い。

 私は未来がいい方向に変わることを祈っていた。そして叶うなら、この聖獣保護隊に居続けたいと思う。

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