転生令嬢はプライドよりも命が大事です!
宮前葵
本編
何でしょうね悪役令嬢って。
いえね、私は乙女ゲーム? なんてやったことはございませんでしたし、なんならゲーム自体をあんまりやったことがありませんでした。
なのでその「キラキラプリンセス計画!」とかいうよく分からない題名のゲームも実はやったことがないのです。友人が話しているのを聞いた事があるくらいでした。その友人はそのゲームに「推し」の男性キャラがいるとかで、まったく興味のない私に向けて熱心にそのゲームの内容を語っていたものです。
ですから私はなんとか、キャロライン・ウェーバルグという女性キャラが「すっごく意地の悪い悪役令嬢」である事を記憶していた訳です。
何でもヒロインが「推し」キャラである王太子殿下にアタックする時の最大の障害なのだという話でしたね。その王太子殿下の婚約者で事ある毎にヒロインを邪魔し、取り巻き連中を使ってイジメまでしてくるとか。
当時私はその話をふーんと聞き流しながら「婚約者なら横恋慕してくる女を妨害するのは当たり前では?」と思っていたものです。
ただ、実際にはそう簡単な話ではなく、王国の貴族の関係ですとか王族とウェーバルグ侯爵家の力関係ですとか、そういうのが絡んだ婚約に、新進気鋭の伯爵家に引き取られた、何にも分かっていない平民育ちの伯爵令嬢が無邪気に王太子殿下に憧れて、伯爵家がそれを利用して暗躍するという、まぁ貴族社会ではよくあるドロドロしたお話だったんですけどね。多分ゲームではそこまで描写はなかったでしょうけど。
……なんでそんな事を私が知っているのか、ですって?
それは、私がある日気が付いたら何故かゲームの世界に転生して、私がキャロラインになっていたからですよ! ……意味が分かりませんわよね。
いや、本当に何が起こったのかよく分からないのですけど、目が覚めたら現代日本から年齢十七歳はそのままに、私はキャロラインになっていたのです。……ライトノベルの読み過ぎじゃないかって? そりゃ私はライトノベルは好きでしたけどね。
とにかく、私は生まれた時からウェーバルグ侯爵家の第一令嬢、キャロラインとして生まれ育っていたことになっておりました。威厳のあるお父様と立派なお兄様がいて、お母様は既にお亡くなりになっているウェーベルク侯爵家。そこで生まれ育った記憶もしっかりありました。私の感覚的には現代日本の記憶と異世界の記憶が並列である、奇妙な感覚でしたね。
私は呆然としましたけど、これが何日経っても元に戻る気配はありません。終いには現代日本の記憶の方が夢なんじゃないかと思える始末です。現実問題としてこの世界の記憶はあるので日常生活に支障はありません。悩んで寝込んでもお父様お兄様を心配させるだけで何の意味もありません。私は割り切って、元に戻るまでキャロラインとしての生活をする事にしました。
キャロラインは燃えるような赤い髪にサファイヤブルーの瞳といったかなり派手な容姿で無茶苦茶に美人です。元は黒髪で黒縁眼鏡と地味な容姿だった私とは大違いでした。スタイルも良く、背も高いのです。そのキャロラインがロイヤルブルーのドレスにギラギラ輝く宝飾品を身に付けて王宮を闊歩すれば、大臣さえも道を譲る威厳と迫力を放ちます。
何しろ王太子の婚約者。つまり将来の王妃でもありますしね。その地位と生まれの高貴さから彼女は王国中の人々に畏敬されていました。
まぁ、きつい系の美人ですし、お愛想を振るタイプでもなく、自分にも他人にも厳しい完璧主義者でしたのであんまり敬愛されているとは言えない感じでしたけどね。特に貴族男性はキャロラインを敬して遠ざけるという感じでした。どうも男性は隙のない美人というのはあんまり好かないみたいなのです。
逆に女性からの人気、特に貴族令嬢からの人気は絶大でしたね。キャロラインが何処に行っても令嬢達が黄色い歓声を上げて群がってくるのでした。というのは、キャロラインは弱い者イジメを嫌い、身分を振りかざして下を虐げる行為も嫌いで、非常に公平で公正な人間だったのです。特に男性が女性を虐げるような事があると、公爵令嬢、王太子殿下の婚約者の地位を存分に使ってその男性を処罰するのが常でした。そんなだから貴族女性はキャロラインを強く慕うようになっていたのです。
そんなキャロラインになってしまった私は、まぁ、大変でしたよ。私は地味で大人しい読書が趣味の少女でしたからね。キャロラインは何しろ自分にも大変厳しくて、一日何時間もの時間をお稽古やお勉強に費やし、容姿やスタイルの維持のために美容に気を遣い運動も頑張り、そして社交では多くの貴族女性と面談して相談や要望を受けるのです。
記憶はありましたから何とかこなせましたけど、もう少し手を抜いても良いのでは? と思えるほどハードな毎日でした。しかしながら流石にキャロラインは能力が高く、思考能力や記憶力も抜群で、私は元の自分とのあまりの違いに、才能というのはこういうものか、と思い知らされましたね。キャロラインは自分の優れた能力を自覚して、能力のある人間は人々を導かなければならない、と信じていました。その辺がちょっと超然とした、傲慢にも見える態度に繋がっていたんだと思います。
しかしながら友人から聞いていた「意地悪な悪役令嬢」とは随分違うな、とは思っていましたよ。人の印象など主観に過ぎません。つまりあのゲームのヒロインにとってキャロラインはそう見えたのだという事なのでしょう。
そのヒロイン、リルエッテ・コードンルゥ伯爵令嬢は金髪のフワフワした、大きな緑の瞳の可愛い系美少女でした。背はキャロラインより十センチは低く(キャロラインは百七十センチくらいありますけども)、それでいて体付きは豊満。いつもピンク系のドレスを着てチョコチョコと動き回る様子は、なるほどアレはヒロインだと納得の行く可愛さでした。
ただねぇ、彼女はキャロラインとは対照的に、貴族女性からは非常に嫌われていました。それは彼女が男性関係にだらしない(貴族基準で)女性だったからです。
というのは彼女は独身の男性に極めてフランクに話掛けるのです。これは貴族基準ではかなりあり得ない事なのですよ。まず女性から男性に話掛けるのが非常識ですし、独身男性側からご令嬢に声を掛ける場合には、まず令嬢の侍女に話掛けて良いかの許可を令嬢に伺ってもらい、ご令嬢の許可が出たら改めてご挨拶から始めるのが常識です。
それをリルエッテは男性にヒョイヒョイと近付いて気楽に声を掛けるのですよ。男性側も驚いたでしょうけど、周りで見ている貴族女性は驚愕では済みません。キャロラインなんて初めて見た時は思わず「なんという破廉恥行為! 非マナー行為! 一体あの娘はどういう教育を受けているのですか!」と激怒して叫んだくらいです。
しかしそのリルエッテですけど、実は十六歳の時まで平民に混じって生活していたということで、貴族の事を全然知らないのだという事でした。これまた非常識な話で、コードンルウ伯爵のご正妻だった夫人が夫婦げんかの末出奔して、実家にも帰らず王都の下町に隠れ暮らしていたのだそうです。どういう夫人だったのでしょうか?
で、リルエッテは夫人が亡くなって生活に窮して父親を頼ったのだという事でしたね。なんだか話が出来過ぎている気は致しますけど、子供が他にいなかったコードンルウ伯爵がリルエッテを認知して(当然この時母親の実家側もリルエッテを認知している筈です)、彼女はコードンルウ伯爵令嬢、跡継ぎ姫として認められたという事でした。
なので平民的な気安さで貴族になっても気になった男性に声を掛けている、という事なのですが、それもちょっとどうかと思うんですよ。私も現代日本では平民でしたけども、若い女性が若い男性にそうそう簡単に声が掛けられたかというと、そうでもなかったと思いますよ。それはクラスの同級生とか、同じ部活の中とかいうカテゴリーがあれば、遠慮がちながらできたと思いますけど、リルエッテの場合は全く初対面の男性に猫なで声で近付いて行くんですからね。
現代日本でもあんまり良い評判にはならなかったんじゃないでしょうか。この世界の貴族社会なら尚更ですよ。貴族女性からの彼女の評判は最悪でした。
ですけど男性というのは気軽に自分に声を掛けて、好意を見せ、頼ってくれる女性に弱いんですね。ホント、あれはどういうことなんだろうかと呆れてしまうんですけども。リルエッテのあからさまな誘惑に、多くの貴族男性がコロッと靡いてしまったのですよ。普段はあれだけ女性は貞淑であるべきだ、なんて言っているくせにです。
リルエッテは可愛らしいですし、邪気のない笑顔をしていますしね。そんな彼女がすり寄ってくれば男性なら庇護欲を誘われるのかもしれません。それに、彼女が貴族女性から総スカンを食っている事はあからさまな事実でしたから、男性ならば女性に受け入れられないリルエッテを自分が守って上げようとか思うものなのかも知れません。
女性達からの冷たい視線とは裏腹に、リルエッテは男性貴族の間でアイドル的な人気を博すようになりました。流石はヒロインという事なんでしょうね。ゲーム内の話であればヒロインが男性に好かれなければ話にならないわけですから。
それはともかく、問題なのはそのリルエッテに靡いた男共の中に、キャロラインの婚約者である王太子殿下、ヴェスバール王子が含まれていたことです。
ヴェスバール王子はキャロラインの二つ上の十九歳。いわゆる金髪碧眼のキラキラ系のイケメンでした。これぞ王子様いう感じです。私の友人の「推し」だったキャラですね。彼女のやっていた乙女ゲームにおける最重要攻略対象だった筈です。
ゲームの攻略対象はつまりヒロインが狙っている男性という事なので、リルエッテがヴェスバール王子にアタックを仕掛けるのは当たり前ではあります。彼女は相手が王子だというのに構わずしきりに話し掛け、付き纏い、プレゼントなどを上げていました。それで王子はリルエッテにメロメロになってしまったようなのでした。
チョロ過ぎませんかね。確か友人は「ヴェスバール王子の好感度が上がらない!」と嘆いていたはずですけども。もしかしたらリルエッテのプレーヤーはかなりの凄腕なのかもしれません、そんなものがいればですけど。
さて、キャロラインは困りましたよ。なにしろヴェスバール王子はキャロラインの婚約者でしたからね。キャロライン的にはリルエッテと王子の関係など容認出来ません。不貞の関係にしか見えませんからね。それで彼女はリルエッテを何度か呼び出して叱ったようでした。
ただ、私が友人に聞いていたような意地悪やイジメをしたことはないようです。誇り高いキャロラインがそんな事をする訳がありません。その手の事はキャロラインとは関係のないところで何人もの貴族令嬢が企んで実行した事のようです。ドレスを汚すとか、部屋に閉じ込めるとか、ダンスの時に足を引っ掛けて転ばせるとかですね。
それがなぜかキャロラインの仕業だという事にリルエッテの頭の中で変換されてしまったみたいなのです。なんでかはよく明かりませんけども、リルエッテはそう考えてヴェスバール王子に「キャロライン様にイジメられた!」と泣き付いたのです。
ヴェスバール王子はそれに怒り、キャロラインを叱ります。しかし、心当たりのないキャロラインは濡れ衣に激怒して王子に反論します。そしてヴェスバール王子にリルエッテとの関係を強く詰問し、王子はキャロラインの事を狭量だと詰ります。
こうしてヴェスバール王子とキャロラインの関係は急速に冷え込み始めました。……私がキャロラインになってしまった時はそんな状況だったのです。
◇◇◇
私は困りましたよ。現在の状況はかなり微妙でした。既に王太子殿下の心はキャロラインから完全に離れてしまっていまして、リルエッテにベッタリという感じでした。
夜会の入場を共にするのは婚約者同士の義務なのですが、王子はこれさえも何やら理由を捻り出して私ではなくリルエッテと共に入場する有様です。これは私の事を婚約者として認めないという意思表示に他なりません。
ここまで関係が悪化すると、婚約破棄が取り沙汰される事になりますが、王家と侯爵家の決めた婚約はそう簡単には解消できません。神様への誓いを破る事になりますから教会だって反対致しますし、違約金だって発生します。今回の場合、理由は明らかにヴェスバール王子の浮気でしたから、王家から私の実家に違約金を払わなければならないでしょう。
しかしどうしても婚約破棄をしたいヴェスバール王子は策を弄します。彼は私を挑発し、侮辱する事によって怒らせ、王子やリルエッテにキツい態度を取らせる事を狙いました。王子はこれを国王や多くの貴族に見せつけることによって「あのような傲慢な女は王太子妃に相応しくない」として婚約の破棄とキャロラインの追放を画策していたのです。
そういえば友人が「やっと悪役令嬢を追放出来たわ!」と叫んでいましたっけね。なるほどこういうカラクリだったのです。
ヴェスバール王子は公衆の面前で私を侮辱しました。「君はいつも仏頂面だな! 笑顔というものを知らんのか。リルエッテの微笑みを見習うがいい!」「その派手なドレスはなんだ! そんなに目立ちたいのか! 私の横に立ちたいのならリルエッテを見習うが良い!」「その人を見下した態度はなんだ! リルエッテの控えめな態度を見習うがいい!」
……私だって腹は立ちましたよ。でも、私がキャロラインになって間もなかったですし、そもそもヴェスバール王子に何の感情も抱いていませんでしたから、そんなに激烈に怒る気にはなれませんでした。なんだこの男は、と思うだけでしたね。
ただ、キャロラインは悔しかっただろうな、とは思うのです。なにしろ彼女は王太子妃の婚約者として、幼少の頃から厳しい教育に耐えてきましたし、将来の王妃としての誇りをもって生きてきましたから。それを故無く侮辱され、地位を奪われようとしているのです。確かにキャロラインなら王子の侮辱に対して強烈な反応を見せ、公衆の面前で王子を侮辱し返したかも知れません。
そしてキャロライン本人以上に彼女の友人が憤慨したのも当たり前でしょう。キャロラインの友人達は怒り狂い、嫌がらせの枠を踏み越えて、リルエッテとゴードンルウ伯爵家への攻撃を企みます。もしも新興のゴードンルウ伯爵家から王太子妃が出るなどという事になれば、王国の一大事です。貴族社会の力関係まで変わりかねません。ですからこの企みにはご令嬢だけではなく、その実家も強く関わっていたようですね。
結局この企みが露見して、それが大問題になってキャロラインの王国追放に繋がった、のだと思います。ここまで行くと話はスキャンダルではなく政変と言って良いでしょうね。娘を理不尽に追放されたウェーバルグ侯爵家が黙っている筈もなく、恐らくは王国は内戦に突入したんじゃないでしょうか。ゲームだとカップルが成立して(たしかリルエッテと王太子殿下が婚約して終わりだった筈です)その後は描写されませんからね。
しかしながらキャロラインではない私としては自分が追放されて、王国が内戦状態に陥るなんて全く望まぬことです。そもそも私はヴェスバール王子にはなんのこだわりもありません。厳しい教育を受け、未来の王太子妃としての誇りを持っていたのも私ではなくキャロラインです。ですから、全く、何にも、王太子殿下の婚約者の地位に未練などなかったのです。
それより身の安全の方が優先です。この辺は現代日本人の価値観というしかありませんね。異世界貴族の「誇りのためなら命を賭ける!」とは相入れない価値観です。
ですから私は致命的な破局を回避する為に動く事にいたしました。友人の話を聞き流しながら得た知識が色々役に立ちましたよ。なんなら、もう少し真面目に聞いておけばよかったと思いましたね。
まず、私は友人のご令嬢達に「リルエッテに対する嫌がらせを止めるように」と言いました。これをわざわざ夜会の、多くの人々が注目する中でご令嬢を集めて言い渡したのです。元々弱いものイジメを嫌うキャロラインです。行動に矛盾はありません。私は言いました。
「今後リルエッテに危害を加えた者には、私からの、ウェーバルグ侯爵家からの罰が下ると思いなさい」
あるご令嬢は涙ながらに叫びました。
「なぜです! なぜキャロライン様があんな女を庇うのです! あの女に一番苦しめられているのはキャロライン様なのに!」
私はそのご令嬢を見ながらニッコリと微笑みました。
「私の為に泣いてくださってありがとう。でもね、全ては王国のため、王国の名誉のためです。貴女達のような高貴な者達が、小さな事の為に誇りを捨てるのではありません。貴女達の誇りは王国の為に賭けて欲しいのです」
ご令嬢達は感動して私の前に一斉に跪き、頭を下げました。これで大丈夫でしょう。ご令嬢達がリルエッテを攻撃しなければ破局を遠ざける事が出来る筈です。
続けて私はお父様とお兄様にお話を致しました。案の定、お父様もお兄様も王太子殿下からのキャロラインへの仕打ちに怒り狂っていました。もしも婚約破棄という事になれば超高額な違約金を請求し、払えなければ王城を攻撃する計画を、この時点で立てていましたよ。
私はお父様とお兄様に言いました。
「あのような王子の為にお父様やお兄様が手を汚す事はありません。むしろ結婚する前にあの王子の正体が分かって良かったではありませんか」
私は婚約破棄は望むところなので、むしろ侯爵家から王家に持ちかけて欲しいと言いました。その場合は違約金は取れなくなりますけど、理由は王子の不実なのですから王家も嫌とは言わないでしょう。
お父様もお兄様も涙を流して私の為に悔しがって下さいましたけど、全然誇り高くない私には名誉とか自尊心はどうでも良いのです。この優しいお父様やお兄様が命を賭けるような事になるくらいなら、誇りも自尊心もゴミ箱に投げ捨てましょう。
続けて私は他ならぬ王太子殿下に面会しました。王城に行き、応接室で王太子殿下と面会します。私は本来は彼の婚約者なので、王城の王家の区画まで立ち入れるのですけど、それをせずに公的区画での面会に臨んだのです。
ヴェスバール王子は訝りながらも面会には応じて下さいました。ふんぞりかえる彼に私は「婚約を解消しましょう」と持ちかけました。
驚く王子に私は「好き同士で結婚するのが一番ですもの」と言い、彼とリルエッテの関係を祝福し、私は身を引くので婚約を解消しましょう、と言いました。
私としては全くの本心でしたけど、ヴェスバール王子はそれは疑いましたね。「何を企んでいる!」と怒鳴られました。私は根気良く王子を説得しました。既にウェーバルグ侯爵家としては婚約解消に応じる意向であり、違約金もいらない。私は何も求めないと言って。
するとヴェスバール王子は次第に上機嫌になり、そして言いました。
「よろしい! 君と私の婚約を解消しよう! よく決断してくれたなキャロライン!」
私はホッとしましたよ。婚約がつつがなく解消されるなら、私が追放されるエンディングを迎えずに済むでしょう。私はやれやれとため息を吐きながらそそくさと面会室を辞去しました。まぁ、婚約を解消する事はそう簡単ではないと私は分かっていましたけど、私が従順に婚約を解消すると分かれば王子が公衆の面前で私を侮辱して、キャロラインを慕う者たちが怒りに震える事はなくなるでしょう。
そうして私が王城のエントランスに入ったその時でした。
「おや、キャロライン様。久しぶりですね」
と声を掛けられたのです。そこにいたのは眼鏡を掛けた、金髪の男性でした。
「あら、フレンデル王子。いつお帰りになったのですか?」
自然と口から彼の名前が飛び出ました。キャロラインの記憶の賜物です。
「今着いたばかりですよ。父上に国境から呼び戻された。そろそろ嫁取りの話でもあるのかもしれません」
フレンデル王子が言った瞬間、胸がチクっと痛みました。……私の胸の痛みではありませんね。キャロラインの心の痛みでしょう。
というのはキャロラインはこの同い年の第二王子、フレンデルに初恋を抱いていたらしいのです。まだヴェスバール王子と婚約する前、十歳くらいの時の話です。
しかし、王家とウェーバルグ侯爵家の交渉の結果、キャロラインは王太子殿下の婚約者とされてしまったみたいですね。初恋は破れた訳ですけど、貴族の恋愛など結婚という形に結実する方が難しいですからね。彼女もなんとか自分を納得させたようです。
初恋を犠牲にした分だけ、自分は誰よりも優れた王太子妃にならなければならない、と決意したのが、あの過剰なまでの努力と節制に繋がっていたのかもしれません。その結果がこれとはね。私はキャロラインの為にため息を吐きました。
で、侯爵邸に帰ったのですけど、なぜかその日の内に王城から呼び出されました。国王様直々に、お父様も一緒にです。なんでしょうね。私とお父様は仕方なく準備をして王城に向かいました。
通されたのは王城の離れです。お父様も私も驚きましたね。国王陛下が離れを使う時は内密な、極めて重要な話をする時です。例えば戦争の準備の話などですね。つまりそういう重要な国家機密級の話があるという事なのです。私もお父様も流石に緊張しながら庭園の林の中にひっそりと建てられている離れにソッと入りました。
離れの応接室には国王陛下と、王妃様。そしてフレンデル王子がいました。国王陛下と王妃様は私の顔を見るなり、立ち上がって叫びました。
「すまぬ! キャロライン! 許してくれ!」
「ごめんなさい! キャロライン! 辛かったでしょう!」
いきなり王国の一番偉いお二人に謝られてしまいました。びっくりですよ。何度も私に頭を下げるお二人に、私はただただ恐縮して、お父様と二人で宥めるしかありませんでした。
「あのバカ息子め! 今度という今度は見下げ果てたわ!」
なんとか座って頂いた国王陛下の第一声がこれでした。
なんでもヴェスバール王子は私との面談の後、上機嫌で国王陛下に「キャロラインと婚約を解消する」と宣言したのだそうです。寝耳に水の国王陛下と王妃様はびっくり仰天です。
詳しい話を聞いてみると、ヴェスバール王子のリルエッテへの心がわりと、私からの婚約解消の申し出が明らかになったのです。ヴェスバール王子は「お互いに婚約解消に同意したのだから」と簡単に婚約解消出来る気でいますが。
「そんなわけないでしょう!」
と王妃様は叫びました。でしょうね。
婚約は契約です。結婚は神の前で誓約をしてお互いに契りを交わす事ですけど、婚約は家同士の契約なのです。その重大さは神に誓う結婚と比べてそれほど劣るものではありません。
貴族は結婚によってお互いの家が血族になります。強い結び付きを得るのです。貴族であれば政治的、軍事的、経済的な相互の扶助の義務を負うことになります。これは単なる条約などより非常に強力で、血族を裏切った場合は他の血族からの絶縁を覚悟しなければなりません。貴族なんて血縁関係で様々な利益を得ていますから、血族から絶縁されたらとてもやっていけないのです。
キャロラインとヴェスバール王子の婚姻は王家と有力諸侯であるウェーバルグ侯爵家が強力に結び付くためのものです。王家にも侯爵家にも利があるために、国王陛下とお父様の意見が一致し、調ったものなのです。
ここで大事なのは婚約が調った段階で、王家と我が家は既に血族となるべく動き始めていて、王家にはウェーバルグ侯爵家からの資金援助や軍事協力が、国王陛下からは我が家に領地の加増が、既に行われてしまっているという事です。それがキャロラインと王太子殿下の婚約の、契約の条件だったからです。
既にお金も人も領地まで動いている話なのです。それが伴う婚約契約を、簡単に解消出来ないのは当たり前でしょう。キャロラインはその事がよく分かっていたために、王太子殿下への気持ちが冷め切っても、婚約を解消したいとなどとは言い出せなかったのです。
同時に、王太子殿下もその事は分かっていて、時間を掛けてキャロラインの評判を下げ、根回しをして婚約破棄を正当化する方向に持って行く予定でした。リルエッテの実家であるゴードンルゥ伯爵家を動かし、国王陛下に働き掛けをするつもりだったのです。
ゴードンルゥ伯爵家は最近、紡績技術を外国から取り入れて領地に大きな工場を建てて、大儲けしている家です。同じように工業で儲けた家同士で結び付いて派閥を作り、近年貴族界で勢力を伸ばしているのです。その新興の派閥としては王家との結び付きは是非とも欲しいものでした。
なのでリルエッテと王太子殿下の関係を奇貨と見做したゴードンルゥ伯爵は、王家に強力な働きかけをする事になります。王家に多額の寄付を贈り最新式の工業機械を披露し、外国から輸入した兵器を見せ付けます。そうして新興の工業貴族派閥の実力は古くからの大貴族に劣らない事を国王陛下に吹き込んだ上で、ヴェスバール王子がキャロラインの非道を訴え、王太子妃に不適だと訴えます。
ここまで行けば、国王陛下も迷った末に、次代の国王たる王太子殿下の選択を支持するかもしれません。もちろん裏切られたウェーバルグ侯爵家とこれに味方する大貴族は黙っていませんでしょうけどね。内戦になってしまうでしょう。
しかし、そのような根回しはまだまだ全然なされていませんでした、私があっさり王太子殿下に婚約解消を持ち掛けたからですね。根回しが必要なくなったのです。これに喜んだヴェスバール王子は王家とウェーバルグの契約を軽く見て、国王陛下に自分の浮気と私の婚約解消の希望をペラペラ話してしまったのでした。
国王陛下に何の根回しも出来ていないのに婚約が解消出来るわけがありません。国王陛下は驚き、怒り、王太子殿下をお説教したようです。しかし、リルエッテに籠絡された王子は聞く耳を持ちません。
怒り狂った国王陛下は王妃様と共に私とお父様を呼んだ、という訳でした。なぜ離れに呼んだのか、フレンデル王子がいるのかは分かりませんでしたけどね。
「あのような考えなしに王国を継がせる訳にはいかない。アレは廃嫡する」
国王陛下は比較的あっさりとこう告げました。さすがに私も驚きましたけど、実はこれは無理もない事だったのです。
この世界では別に後継は長子と決まっている訳ではないのだそうです。まぁ、当主個人の能力に依存する部分が大きいこの世界で、無能な者に家を継がせる訳にはいかないというのは分かります。当主に相応しくないと思われれば、血族からクレームが付き当主の座を血族の他の家に奪われる可能性すらあるのです。
ですのでヴェスバール王子が王太子になるには大変優秀であるか、それ以外に王太子に相応しい事を示す必要がありました。彼は大して優秀ではありませんでした(無能でもないとは思われていました)ので、彼を王太子にするには何か補強材料が必要だったのです。
実の所それがキャロラインとの婚約だったのです。有力諸侯であり強大な軍事力を持つウェーバルグ侯爵家を王族の血族に取り入れる事で、ヴェスバール王子の権威を補強したわけですね。
おまけにキャロラインはあの通り完璧な女性でした。王太子妃、王妃に相応しいと誰もが認める人物です。その彼女が付いているなら、多少頼りないヴェスバール王子でも大丈夫だろう、と貴族達が彼を王太子として認めている面があったのです。
そのキャロラインとの婚約が破局したら、ヴェスバール王子が王太子たらしめてる前提条件が崩れてしまいます。国王陛下がヴェスバール王子の廃嫡を決めたのは、彼を王太子にし続けるのは色んな意味で無理だと考えたからでした。
で、ヴェスバール王子を王太子の座から下ろすとすれば、代わりの王太子候補が必要となるわけです。ではそれは誰になるのでしょうか。それは当然……。
「お前が王太子になれ。フレンデル」
国王陛下はフレンデル王子に宣告しました。王子は青い顔をしています。
「……私に出来るでしょうか?」
「お前に国境で経験を積ませたのは、この様な事態のためだ。年齢は若いが既にお前の実績はヴェスバールより上で、お前の方が王太子に相応しいという意見も大きい」
どうも国王陛下は当初からヴェスバール王子の資質に疑問を抱いていたようですね。強力な補佐として、予備として、フレンデル王子を鍛えていたのでしょう。
「でだ。このような仕打ちをしておいて虫の良い話だがキャロライン。其方にはフレンデルと婚約してもらいたい」
私は目を丸くしましたよ。なんですかそれは。
「其方にはすまぬが、そうするしかないのだ」
キャロラインとヴェスバール王子の婚約の時の条件は既に履行されてしまっています。王家にも侯爵家にも今更覆せないのです。そして王家は侯爵家との結び付きを強く欲してもいます。
これを解決する為には、キャロラインの王太子の婚約者という立場をそのままに、王太子の方を入れ替えるしかない、という事なのでしょう。
国王陛下の提案には明らかにお父様も乗り気でした。なにしろこの提案ならキャロラインは再び王太子の婚約者に返り咲きますし、ウェーバルグ侯爵家が得る権益も元のままです。そして王家に対しては弱みを握れる訳ですから優位にも立てるでしょう。
そんないい加減な事で良いのかと、私は若干呆れましたけど、私の中のキャロラインの気持ちはソワソワと浮き立ち始めました。何といってもフレンデル王子はキャロラインの初恋の人です。既に諦め掛けていた初恋の人と結ばれるチャンスが急に訪れたなら、それは気分が高揚するのも当然なのでしょう。
キャロラインが望むのなら仕方がありませんね。私はなるべく毅然とした表情を保ちつつ言いましたよ。
「……皆様がそう仰るなら仕方がありませんね。そのように致しましょう」
フレンデル王子は不安そうに言いました。
「良いのですか? キャロライン様?」
眼鏡の奥の視線が心配そうに揺れています。どうやら、兄とは違って誠実で少し臆病な方のようですね。そういう所がキャロラインの庇護欲を誘ったのだと思われます。
私は出来るだけ華やかに笑って言いました。
「ええ。貴方様となら喜んで」
◇◇◇
で、一ヶ月ほど後の夜会での事です。
「私はここにキャロライン・ウェーバルグとの婚約を解消し、新たにリルエッテ・コードンルゥ伯爵令嬢と婚約する事にした!」
とヴェスバール王子が高らかに宣言した訳ですよ。
会場は静まり返りました。驚きでではありません。呆れ果ててです。
というのは、主だった貴族の皆様にはヴェスバール王子の廃嫡とフレンデル王子への王太子交代は内々に伝えられていて、この夜会時点ではほとんどの方が知っていたからです。
知らないのは王子本人と幸せそうにヴェスバール王子に寄り添っているリルエッテ、それと拍手をしているコードンルゥ伯爵とその仲間たちくらいなんじゃないでしょうか。
この婚約解消イベントは、本来は一年ほど先になり、そして「解消」ではなく
「破棄」とキャロラインの追放を告げるイベントであった事は後で知りました。その頃ならコードンルゥ伯爵の根回しも進んでいたでしょうから、会場の様相もきっと違っていたでしょう。その後の王国は内戦に突入して地獄だったでしょうけど。
しかし、私があっさり婚約解消に動いたことで色々状況が変わったのです。プライドが高いキャロラインならあんなに簡単に婚約解消出来なかったでしょう。おかげでコードンルゥ伯爵の根回しの時間はなくなり、王家とウェーバルグ侯爵家の結び付きは強固なままでした。
これにはこれまでのキャロラインの才能と勤勉さと働きが、国王陛下と王妃様に認められていた、というのも大きかったんですけどね。お二人が彼女を将来の王妃に相応しいと認め、キャロラインを手放したがらなかったのですよ。
その辺が全然分かっていなかったヴェスバール王子は滔々とキャロラインよりもいかにリルエッテが素晴らしいかを語り、私の事をこき下ろしました。どんどん会場の空気が冷えていくのにも気が付きません。
おまけに、王子の腕にベッタリと張り付くリルエッテは勝ち誇って私に向けて言いました。
「気を悪くなさらないでね。私の方が王子のお気に召しただけなのですから」
それはつまりヴェスバール王子の、人を見る目がない、という事なんですけども。
おまけにここで更に酷い事が起こります。寄り添う王子とリルエッテに向けて、数人の貴公子が走り寄ります。いずれもなんだかキラキラした美青年ばかりです。
「リルエッテ! 僕の事が好きだと言うのは嘘だったのかい!」
「私と結婚してくれると言ったのに!」
「俺の事が好きだと言ったじゃないか!」
「でも、相手が王子では敵わないな! 仕方がない!」
「それでもいい、それでも僕たちは君の事を好きでいるよ! そばに居させてほしい!」
跪く美青年を見て、リルエッテが歓喜の叫びを上げます。
「ああ! みんな! みんな大好きよ!」
……なんですかこの茶番は。
そういえば友人が「このゲームの究極エンドは王子と婚約してのハーレムエンドよ!」と言ってましたっけね。それがこれですか。何ですかこの地獄絵図は。これが乙女ゲームの理想エンドなんですか? わけが分かりません。
とりあえず会場はもうお通夜みたいです
。みんなゲンナリしています。それじゃあ私も彼女を独占しない。リルエッテをみんなで愛そう、なんて笑顔で言っている馬鹿者が、どうして王太子のままいられると思うんでしょうか。重婚は大罪です。これだけで完全にアウトです。
あまりといえばあまりの惨状に、能面のような表情になってしまった国王陛下と王妃様が進み出ます。たぶん、自分たちを祝福してくれると考えたヴェスバール王子とリルエッテが満面の笑顔をお二人に向けますが、お二人は目線もくれません。
そして無慈悲ですけど納得の宣告が下ります。
「あー、もういいな。見るに耐えん。今この瞬間に、我が王国はヴェルバールより全ての権利を剥奪する。どう考えても脳がイカれているとしか思えんからな。修道院に入れて外界との接触を断つ。そして同時に、フレンデルを王太子とし、その妃をキャロラインに定める」
その瞬間、一斉に大きな拍手が湧き起こりました。ご令嬢の中には飛び跳ねて泣き出す者もいます。私とフレンデル王子は大歓声の中、寄り添って進み出ました。
驚いているのはほんの一部、ウェスバール(さっき地位を剥奪されたので王子ではなくなりました)とリルエッテ、それとコードンルゥ伯爵たちだけです。
特にウェスバールは驚愕して国王陛下に向けて叫びました。
「な、なんの戯言ですか! 父上!」
しかし国王陛下は彼の事を見もしません。国王というのは時に人情、親子の情さえも完全に切り捨てられなければなりません。我が子であろうと罪あらば構わず断罪出来ないようでは国王の資格はないのです。
「修道院に送るまで幽閉せよ!」
地下牢にぶち込まなかったのがせめてもの情けなのでしょうね。兵士が即座に動いて、暴れるヴェスバールを取り押さえ、引き摺って会場から連れ出します。
「で、殿下!」
リルエッテが叫びますけど、もちろん彼女もただでは済みません。国王陛下は冷然と告げました。
「我が王国に混乱をもたらした罪により、リルエッテ・コードンルゥを庶民に落とした上で死刑に処す」
リルエッテが硬直します。すぐさま兵士がリルエッテを縄で拘束します。
「父親であるコードンルゥ伯爵も連座とする。爵位剥奪の上、領地と財産を没収する」
これは既にウェーバルク侯爵家が国王陛下の同意の上軍を動かして伯爵領の接収に向かっています。全ては予定通りなのです。悲鳴を上げたコードンルゥ伯爵もすぐに縄を掛けられ、引きずって連れていかれました。
まぁ、リルエッテに関しては、私が嘆願して、罪一等を減じて庶民に落とした上での追放処分にして貰いましたけどね。首など刎ねて持ってこられても困りますから。
ウェスバールもリルエッテもコードンルゥ伯爵も、ついでにリルエッテの取り巻き(何も名のある貴族のご子息だったようですけど)も連れ出された会場で、謹厳な顔を一転、満面の笑みに変えた国王陛下が改めて私とフレンデル王子を指し示しました。
「さぁ、問題はすべて片付いた! 新たな王太子と王太子妃に祝福を!」
お父様お兄様を筆頭に、会場の疑う事なく全員が笑顔で私とフレンデル王子に拍手の雨を降らしてくれましたよ。私と王子は見つめ合い、手を振って応えます。
どうです? キャロラインのどこが悪役令嬢だというのでしょう? これが本当のハッピーエンドではありませんか。
◇◇◇
目が覚めたら現代日本に戻っていましたよ。……なんとなくそんな気はしていました。
転生したその瞬間に戻った訳ではなく、半年ほど時間は過ぎていましたけどね。異世界でキャロラインとして過ごした時間分です。つまりもしかすると、私は異世界に転生したのではなく、キャロラインと入れ替わったのかもしれません。
その証拠に、部屋の様子がかなり変わっていました。きっちり几帳面に片付いて、掃除も隅々までされていたのです。いかにもキャロラインらしい完璧さではありませんか。
そして、机の上のノートにこんな書き置きがありました。どうも彼女は私が異世界で何をしていたか、ちゃんと知っていたようなのです。もしかしたらゲームの画面を通して見ていたのかもしれませんね。
『ありがとう。何もかも貴女のおかげね』
私の字ですけど、私とは違う人格が書いた字に、私はくすぐったい気分を覚えました。わざわざお礼を残すなんて、いかにもキャロラインらしいですね。
彼女ならフレンデル王子と、立派に王国を、ゲームの後の世界を治めていく事が出来るでしょうね。その手助けになれたなら、私としても嬉しいです、私もすっかりキャロラインのファンになっていましたから。今度例のゲームを手に入れてやってみようかしら。
……ですけど、書き置きはこれでは終わりませんでした。
『貴女ね、こんなに環境に恵まれて能力はあるのだからもっと努力をしなさい! 勉強をして運動も頑張れば、きっと素晴らしい未来を貴女も掴める筈よ! 貴女にだって素敵な恋人が出来るわ! 頑張って!』
……流石はキャロラインです。
彼女は入れ替わっている間、何をどうしたのか学校のテストで学年一位の成績を叩き出し、いくつかの部活に飛び入り参加して凄い能力を示していました。おかげで私が翌日学校に行ったら、何人もの男性から告白を受けるようになっていましたよ。何してくれてんですか。
ちなみに、私が改変したルートはゲームの隠しシナリオ「悪役令嬢の逆襲」というものになったようです。突然変なシナリオが始まったと友人が首を傾げていましたね。
そのシナリオは元々人気があったキャロラインが幸せになるルートとして歓迎するファンも多かったのですが、性格がキャロラインらしくないと批判するファンも多かったようですね。
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