負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい
えん@雑記
青年期(15歳)
第1話 記憶
目の前に車のサーチライトがあった。
仕事かえり突然の逆光と思ったら車に引かれた。
肌にあたる小雨が少し気持ちい。
――
――――
「クロウベル様!」
クロウベル? ひどく懐かしい名前なきがする。
俺が遊びまくった『マギ・オープン』の最初に倒される辺境貴族の雑魚キャラがそんな名前だったきがする。
「お体は大丈夫でしょうか? 階段から……落とされ……いえ足を滑らせたようですが」
「は?」
俺は目を開けると、目の前に現れた女性をみてしまう。
一般人が着ないメイド服の女性が心配そうにしていて、俺が落ちたという階段を見上げる。
人影がありクロウベルの……俺の一つ上の兄、スゴウベルがニヤニヤと見下ろしていた。
「アンジェ! そのようなカスにかまう事はない。ぶじがクロウベル? よかったな大事な屋敷に傷がつかなくて」
「はぁ……」
「はぁとはなんだはぁとは!」
階段から降りて来たスゴウベルは俺の前に立つと心底呆れた顔だ。
「愛人の子などさっさと追放すればいいものを」
「あっそれだったら俺が五属性の素質あるらしいからみたいっすね」
「は?」
スゴウベルの言葉が止まった。
俺も自分で口に出して頭が混乱する、何でそんな事俺が知っているんだ……いやでも、ゲームの設定資料集ではそうだったはずだ。
「アンジュ、こいつは何を言っているんだ?」
「もしかしたら頭を強く……」
「いよいよか、これだったら父上も追放してくれるだろう」
アンジュ。
そして、勝手に思い出す嫌な顔のスゴウベル。
間違いない、ここは『マギ・オープン』というゲームの中だ。
主人公はクエストをこなしランクをあげ最終的には自身にかけられた『ハーレムになる呪い』を解消するのが目的だ。
ゲームをしながら、別にとく必要なくない? と何度もおもったし結果エンディングでは呪いは解けたのに全員と重婚するという期待通りの展開だったはず。
問題はこの俺、クロウベル。
黒髪でわがまま、よく20年間も生きてこれたなって性格の悪役貴族。という奴だ。
「おいアンジュ、こいつブツブツと……」
「クロウベル様……」
「あっごめん。考え事していた、それよりもスゴウベル! ありがとう」
「あ?」
「君が俺を階段から落としてくれたので記憶が戻った」
スゴウベルとメイドのアンジュが何か言っているが俺は自室へと走った。
部屋に飛び込むとゲームでみたクロウベルよりも若い姿が見えた。
「若いな……ええっと確認しよう――」
1つ! クロウベルは序盤に倒される雑魚キャラである。
2つ! 殺される時はわがままだったけど、今の感じを見る限り陰キャに近い。
3つ! クロウベルの本来の性格は水魔力の素質はあるけど努力は嫌いだ。
4つ! 転生した俺は別にそこまで努力は嫌いじゃない
5つ! 当然死にたくはない。
6つ! せっかくなら貴族の身分とゲーム知識で夢を叶えたい。
7つ! ………………と言う事は隠しキャラである魔女メルギナスを攻略できる…………いやっほおおおおおおおおおおおおおお。
思わず唾を飲み込んだ。
魔女メルギナス、年齢不詳のキャラでクロウベルの未来の師匠だ。
長身で巨乳、三角帽子をかぶっており、語尾に『のじゃ』をつける魔法使いで、普段はだらしなく、脱いだ衣服を片付けないような属性マシマシのキャラ。
ここで確認1に少し戻る。
クロウベル本人は、主人公の仲間であるジョブチェンジで聖女になれるアリシアをモノにしようと襲い、俺よりも魔法属性が多い、六属性が使える主人公によって殺さる。
「俺としては別に戦いたくはない、というよりだメルギナスを攻略したい! 昔から憧れていたんだよね……師匠と弟子のイチャラブ。よし今日はイチャラブ記念日だ!」
「よかったですね記念日」
「ぶっはっ!!」
鏡の前で盛大にふいた。
後ろを振り返るとメイド服のアンジュが医療箱を手に持っていた。
「い、いつからそこに!」
「今ですけど……所で何の記念日なんですか? ノックはしたのですけど返事がないので入りましたけど」
「…………生まれ変わろうかと思って」
あぶない。
前世の記憶を少し思い出した俺であるけど、叫んでいる所を見られるのは少し恥ずかしいからだ。
それに俺が前世とゲームの知識がある。というのはなるべく広めない方がいいだろう。
「アンジュ……俺の年齢は」
「先月15歳の誕生会を開いた所かと」
「ああ…………あの小屋でやったやつか」
普段から屋敷内でいじめられている俺は、誕生日を小屋で祝ってもらった。
スゴウベルから『母親が平民であれば誕生日会など小屋で十分だな』と手配された奴だった。
なお現在出張中の父親サンドベルは王都の財政部に所属してるはずだ。何度もイジメを訴えたが『強くなれ』と助言だけ貰って終わりである。
「となると、5年前か」
本編より5年前と言う事は色々と準備は出来る。
「10歳の時がどうがなされましたか?」
「…………いや、それよりもアンジュ。剣を教えてくれ」
俺がアンジュに向かって命令すると先ほどまでのメイド長アンジュの表情が固まった。
七星アンジュ。『マギ・オープン』の世界では剣星の称号を持つ女性で、サンドベルの愛人。
すなわち、俺の父親の愛人だ。なのでメイド長をしながらサンドベルの息子である俺やスゴウベルに仕えている。
俺としてはそんな彼女に剣を教えて貰いたい、少なくとも主人公……デフォの名前が変わってなければクウガには負けたくない、極力戦いたくないが負けると死ぬ可能性が高いし。
「何のご冗談でしょうかクロウベル様、私はただのメイドですけど」
「冗談をいうほど時間があるわけじゃないからな、俺はとっとと強くなって結婚がしたい!」
俺が宣言するとアンジュかポカーンと口を開けている。
「クロウベル様……まさか、そのアンジュには決めた相手がですね、その嬉しいですけど、いやまさかこの歳で求婚をされるとはアンジュびっくりしました。いくらあの人の子供とはいえ……」
「…………アンジュ、勘違いしてるようで悪いがアンジュがサンド……父の愛人だってのは知ってるから、流石の俺も父から奪う趣味はないしアンジュは家族だし」
「!?」
アンジュの口が金魚の様にパクパクと。
「へ、部屋は……私の部屋はここから遠いですよね!?」
「あーええっと、トイレ。そうトイレのついでに外を散歩した時に、父がアンジュの部屋から出るのをさ……」
「うかつでした……わたくしが剣を使えるのもその時に……ですよね」
「あーうん。たまに中庭で剣を振ってるよね」
アンジュの心底落ち込んだ顔をみて目的は達成されそうだ。と確信した。
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