第2話 目覚めたその場所は……
(うぅ。ここは……何処だ?)
目が覚めると、水音は見知らぬ空間にいた。
辺りを見回そうと首を動かしたが、全身を何かがガッチリと拘束しているようで、首どころか指一本すら動かせないでいた。
そしてどうやらそれだけでなく、
「ーーっ! ーーーっ!」
と、叫ぼうにも声も出せなくなっていたので、
(ぼ、僕は……どうなってしまったんだ?)
と、水音はもの凄く不安になった。
その時だ。
「次はこの少年か」
と、誰かがそう言って水音に近づいてきた。
相手の顔はよく見えなかったが、シルエットからして男性だというのがわかると、
「あら、私好みのいい男じゃない」
と、別方向から女性の声がして、その声の主も水音に近づいてきた。当然、その顔もよく見えなかった。
(な、何だ、コイツらは!?)
と、動けない状態の水音が戸惑っていると、
「おい、次が待ってるんだぞ」
と、また別の男性の声がした。
そして、その男性も水音に近づくと、
「ん? コイツからは妙な『力』を感じるな」
と、水音を見て何かに気付いた。因みに、その男性の顔もよく見えなかった。
「あら、本当だわ」
と、隣に立つ女性も、水音を見て何かに気付いたようだ。
「
と、最初に水音の
「なら、コイツにつける『
「そうね、この子の能力的にピッタリだわ。それなら、
と、別の男性と女性が、何かを用意しながらそう言った。
(な、何をする気だ?)
と、水音が更に不安になっていると、
「じゃ、コイツをつけて、と……」
と、男性と女性が水音に何かをつけようとしてきた。
(や、やめてくれ! やめろぉおおおおおおおっ!)
その瞬間、水音の目の前が真っ暗になった。
「……はっ!」
次に目を覚ますと、水音は別の見知らぬ場所にいた。
そこは、白を基調とした広くて立派な部屋の中のようで、水音はその床で倒れている形になっていた。
「う……こ、ここは……」
と、そこまで言いかけたところで、
(あ、声が出せる!)
と、水音はキチンと声を出せている事に気が付いた。
その後、意識がはっきりしてきた水音は、ゆっくりと自身の体を起こすと、周辺を見まわした。
(よかった、
そこには、水音自身だけじゃなく、先に光に飲み込まれた女性とクラスメイト達の姿があった。
そして、
(あ、
その中には、今朝、水音が「雪村君」と呼んだ、分厚い眼鏡をかけた黒髪の少年の姿もあったので、水音は安心したのかホッと胸を撫で下ろした。
その時、
「ようこそおいでくださいました、勇者様方」
と、少女のものらしき「声」がしたので、水音は「ん?」とその方向へと振り向くと、そこには物語とかに出てくる「お姫様」を思わせる立派なドレスとアクセサリーに身を包んだ、1人の少女が立っていた。
(だ、誰だあの子は? ていうか、今『勇者様方』って言った?)
と、少女を見てそう疑問に思った水音が、改めて周りを見回すと、少女の後ろには4つの立派な椅子があり、中央にあたる2つの椅子には、王冠をかぶった威厳に満ちた男性と、穏やかな雰囲気をした女性が座っていて、その女性の隣の椅子には、水音達の目の前にいる少女よりも少し幼い感じの少女が座っていた。
更によく見ると、椅子に座った男女らの背後には、ゲームとかに出てくる「偉い神官」を思わせる、白と青の法衣(?)に身を包んだ男性と、数人の騎士と思われる鎧を着た人達がいて、左右の壁にも同じく数人の騎士や純白のローブを纏った者達が数人並んでいた。
(な、何だよこいつら? ていうか、ここ何処だ!?)
と、水音が戸惑う中、
「あ、あの……あなたは? というか、ここは一体、何処なんですか?」
と、水音が心の中で「先生」と呼んだ女性が、目の前にいる少女に向かってそう尋ねたので、
「ああ、申し遅れました。ここは『エルード』という名の世界で、皆様からすれば『異世界』と言えますね。そしてここは、その『エルード』に存在する国が1つ、『ルーセンティア王国』と言いまして、わたくしの名は、ルーセンティア王国第1王女、クラリッサ・リンダ・ルーセンティアと申します」
と、少女は今水音達がいる場所について話しながら、そう自己紹介した。
それを聞いて、
(い、異世界だって!? それに、王女様ぁ!?)
と、水音はショックを受けた。そして、他のクラスメイト達も、水音と同じようにショックを受けていた。
しかし、そんな水音達に構わず、
「それでは勇者様方、これより皆様をこの世界に召喚した詳しい経緯を、こちらにいるわたくしの父にして、ルーセンティア王国の国王、ウィルフレッド陛下がお話します」
と、「クラリッサ」と名乗った少女はそう言うと、その場から離れて背後にいる王冠をかぶった男性の隣にある立派な椅子に座った。
それを見て水音は、
(ど、どうなっちゃうんだこれ? そうだ、春風は……)
と、戸惑いながら心の中でそう呟き、チラッと「春風」と呼んだ黒髪の少年を見ると、
「……え?」
と、小さく驚きの声をあげた。
(は……春風?)
そこには、目の前にいる者達をまるで
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