主人公失格
@KSGRA
第1話
深夜 山奥の森林
「どこだァ!!女ァ!!」
そう叫んだのは、地球上では猿に近しい外見の生物であった。
身長は目測でも2メートルは超えており、さらには自分よりも遥かに大きい長槍をその手に携えている。
「そこかァ!」
叫ぶと同時に一本の木へ長槍の一撃を振り下ろす。その一撃が届く前に、一人の少女は物陰から飛び出した。
「逃がさねぇぞぉぉ!!!」
————ッ。何とかしないと。これを奴の手に渡らせるわけにはいかない。
***
8時間前 住宅地
〈———次回もお楽しみに!〉
「………ふぅ、今日も面白かったっと」
ガラもなくそう呟いて公式配信動画を閉じた。
俺の名は田尻キョウカ。特撮ものやアニメを観るのが趣味の23歳だ。
「……………はぁ」
面白かった。面白かったのだが、主人公が何かを乗り越えている姿を見ていると、それに比べて俺は……と、胸が締め付けられてしまう。でも作品鑑賞が俺の唯一の趣味だ。やめてしまえば、たちまち無に…
——ピコン「ん?」
LINEで母さんにご飯に呼ばれたのでそそくさと降りる。
扉を開くと父さんと母さん、兄さんに祖母ちゃん、みんながすでに晩ご飯を食べていた。
「遅れてすみません……いただきます」
「呼ばれる前に降りてこいよ。10分前には降りて手伝うものだろ」
「すみません。父さん」
そう言う父さんはいつも呼ばれてからくるし、数分前に降りてきても何も手伝わない。でも「人に言う前に自分を見直して」と言ったらキレて小1時間は説教する。
「お父さん。キョウカは今それどころじゃないでしょ」
と祖母ちゃん。
「就活はどうなの?いつまでも養えるわけではないんですよ」
「…………まぁ、これからインター
「まぁって、まぁってことはないでしょ。変な言葉使いね。もっとハッキリと喋りなさい」
自分から話を振っておいて遮らないで欲しい。
「全く、男の子なんだからそんなんじゃ駄目でしょ。鬱病とかにもなっちゃって、情けない」
「ブラック企業に入っちゃってね。だから前々からもっと頑張れって言ったんだよ。俺は」
「ブラック企業以前で鬱になってたんでしょ。何でその時に言ってくれなかったのかしら?」
「いや鬱なのは全然いいでしょ?問題なのはいつになったら治せるのかなんだからさ。こっちもお金が無限にあるわけじゃないんだし。ねっ?」
俺は就活で鬱病になっていた。元からあった後悔癖とネガティブ思考が相まって。そんな中でも何とか就職したが、そこがブラック企業で俺は完全にぶっ壊れたのだった。それから療養のため実家に帰省したのだが………1年経った今でも回復の兆しはない。
「おい返事は」
「あはい。すみません」
「いやはい。じゃなくてさ。どうなんだ」
「…………えっと………
「ハアァァ……ホント情けないぞおオイ。もっとハッキリ喋れよハッキリ。お前本当に社会人かよ」
……………………………
そうして、夕食を食べ終えた。味はしていたし、米も結構食べれたので、そんなに辛いってわけじゃない……はず。俺は母さんの皿洗いを手伝った後自室に戻り、ネットニュースを観ていた。
〈新生の如く現れた天才子役『空竜シュウヤ』!僅か10歳で、大人気シリーズ作品の主役に抜擢!彼の意気込みはいかに————〉
「……………………いいなぁ」
こういう少年の頃からキラキラしている人は、将来もキラキラしているだろうな。辛いことがあっても、主人公みたいに立ち上がって…………
俺もなりたかった。子供の頃から憧れていた。主人公に。主人公になれば、毎日がキラキラしていて。誕生日にパーティーをしてくれる友達や仲間がいて。辛いことがあってもその人達と一緒に乗り越えて。凄い力で誰かを助けて。そんな主人公にいつかなれると、そう夢想していた………………でも今はこのザマだ。主人公にすらなれず、モブにすら、舞台に立つことすらできてない。言葉を話せるだけの猿野郎。
……………………何やってんだろう。俺………
「キョウカ」
「母さん?なんです?」
突然の母さんの来訪にビックリした。ヘッドホンをすぐさま外す。
「いや、晩ご飯のこと」
「?」
「父さんも祖母ちゃんも、あんなこと言わなくていいのにねぇ」
母さんは、俺が父さんたちにきついことを言われた後、時々こうやって慰めに来てくれる。昔から母さんは、この家族の中で最も正直なことを話せる人だった。
いつの間にか母さんは色々と喋っていた。母さんがこんな俺を慰めてくれているっていうのに、ほとんど聞き逃すとか、本当に俺は…………
「————キョウカには、キョウカのペースがあるんだから。ほら、いつもみたいに『やらない後悔より、やって後悔』だよ」
「……………………」
「ほら!明日バイトなんだから、お風呂入ってさっさかと寝る!」
「……………はい。ありがとう母さん」
そうして湯船につかり、就寝した。今日も横になっても3時間半くらい眠れなかった。
翌朝 市街地
「…………………はぁ」
ため息3回目。俺は朝早くから祖母ちゃんと父さんの説教を喰らって、バイト先へ向かい信号に捕まっている現在まで悶々としていた。今まで感じていた将来への不安と後悔、20過ぎて養ってもらっている恥ずかしさと罪悪感が一層重い。
————いやいや。バイト前だろしっかりしろよ。ただでさえ先輩達にも気を使わせていただいているのに、駄目だろこんなんじゃ。
身に着けていたマフラーを整え、青信号を渡り、気を引き締めていこうとした———
「————————痛」
————?今頭に何か当たった。
辺りを見回すと、丁度後ろに何か落ちている。
「………石?」
手に取ってみた。触感的には石だが、宇宙のような不思議な模様がついている。こんなの見たことない。これが空から降ってきたのか?なんか不思議だ————————
そう思ったら突然、後ろから怒号と衝撃が俺を襲ってきた。
「うおおあああああぁぁぁぁぁあああああ?!」
そして俺は情けない声を挙げながら前方にぶっ倒れる。
「な、なんだ一体———?!」
後ろを振り替えった俺は、今度は硬直した。何故なら怒号が鳴り響いた場所にこの世の者とは思えないほどの美少女が佇んでいたからだ。
艶の入った黒い長髪。凛々しく真っすぐな眼孔。しかもその美少女はライダースーツらしきものの上にゴツい鎧を着こんでいる。さながら現代世界に迷い込んだ「騎士」のようだ。
————————?!こっちを見ている?!
「危ない!!」
「え?」
その瞬間、いつの間にか美少女が俺の手を握りながら走っていて———そして数秒前俺がいたところに再び怒号がなった。
今度はそこに長身の猿が佇んでいた。上半身がほぼ裸の、武士が着ているような物に似ている服を着ていて、担い手よりも長い槍まで持っている。筋肉も下手したらプロレスラーよりも発達していて、その風貌はまるで魔人のようだ。
「今は一緒に走ってくれ!」
「は、はい!」
「逃がすかよおおおぉぉぉ!!」
————ついに来たんだ。この時が。主人公に、俺が...
「な………なんとか振り切った…………」
とりあえずあの恐ろしい猿魔人から逃げられたことに、俺は安堵した。
「ぜぇ、ぜぇ……」
「……あ!そうだ、そんな場合じゃない!!あの猿は何なんですか?!何故貴女は追われてるんです!一体何がどうなってるんですか!!」
もうさっきから訳がわからない。とにかく状況を整理したい。彼女から何か聞き出さないと……
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……!はぁ、はぁ……!!」
めっちゃ息切れてる………
「………………えっと………すみません、いきなり……」
「ぜぇ……いや……いい………巻き込んだのは……私だ………」
なんとか答えてくれてる。こっちも全力疾走で疲れているが、なんだか申し訳ない。
「すみません。巻き込まれた以上、説明してほしいんです。いいですか?」
「……………………………あぁ……少し……長くなるが————————」
彼女の名はキア。俺が拾った石———
「黒異石」の回収の任務のためこの世界に来た。
宇宙を世界と例えると、世界は何億年と経った現在も膨張し広がり続けている。そうして広がっていくたびにバグが起こり、そのバグが、世界のエネルギーを秘めた石ころとなって世界中に降り注いでいった。それが黒異石。
黒異石を回収できたところまではよかったが、そこに黒異石を付け狙うハンターに襲撃された。逃げていくうちに黒異石を落としてしまい———俺の頭に落ちたのだった。
「—————————ここまで間違ってないですか?」
「はぁ、はぁ……あぁ……そういう感じだ」
自分でも不思議なくらい話を整理できている………俺が密かに願っていた異世界的展開がこんな形できたからだろうか。
「失礼ですが、貴女のその様子も、あの…ハンターとの戦闘で?」
「ぜぇ……いや……あいつとは……なるべく戦わずに……逃げてきていた…」
……?じゃぁ何でこんなに疲れている?騎士だし結構鍛えてそうなのだが……
「ここ一か月……他世界の黒異石絡みの……任務にあたっていて……全く……寝てなくて…」
「…………え」
「でも世界のためだ……なんてことは!………ぜぇ」
過労だった!上層部大丈夫なのかよ......
とてもとは言わないがこんな状態じゃあんなのとタイマンで勝てないよな……
素人でも分かるあの気迫を思い出しゾッとした。
………これからどうしよう。家で休ませる?いや女性を家に連れ込むのは…でもハンターはまだまだ追ってくるだろう。見つかってないうちに休ませないと本当にキアさんがまずい……
「見つけたぞ」
「——————え」
見つかった———?!顔を上げると、ハンターは長槍を構えて追い詰めてきていた。ヤバい!
「私が相手をする!貴方は黒異石を置いて逃げるんだ!」
「え?———」
………ヤバい。迷っている暇はない。このままだと死ぬ。このままだと死ぬ。
どうしよう逃げる?逃げなきゃ!足手纏いだし言うとおりに———
動けよ足。なんで動かないんだなんで——————
—————————『やらないで後悔より、やって後悔。だよ』
俺は気づいたらキアさんの手を引き、駆け出していた。
「——?!何をやっている!一人で逃げろ!お前も狙われるぞ!!」
——その通り、俺は本当に何をやっているんだ。戦えるわけでもないのに。
でも————
「ほっとけないんですよ!あのまま一人で逃げたら、俺は絶対に後悔する!!」
「——!」
「それに今のまま戦ってもあいつには勝てない!一度逃げて万全の状態になってから戦えばきっと———」
「バカか。お前」
キアさんよりも後ろの方からそう言われた瞬間、強風が襲ってきた。
「うわああああああぁぁぁぁああああ?!」
情けなく、キアさんと一緒に倒れこんでしまった。急いで起き上がると———
——————眼前に崩壊した町が広がっていた。
「————————————————————————え」
「お前が逃げる度」
ハンターが淡々と喋りだした。
「お前が動く度にその周囲の町は、人間達は、こんな風にされるぞ?
俺が大人しく探すだけの輩に見えていたのか?
こうなる可能性を何で考えられなかったんだ?」
ハンターが喋る中、サイレンの音と人々の悲鳴が聞こえる。
————俺が……俺が逃げようとしたから?
「他のモノを犠牲にする度胸もないくせにカッコつけようとすんなよ。雑魚が」
俺の………せいで……「どうせ後悔するなら」って…動いた結果が……
「逃げろ」
キアさんはすでにハンターと向かい合っていた。
キアさんの手元にはアクセサリーのような物が握られており、それから眩い光が満ちた瞬間、その光から剣が現れた。それをキアさんは握りしめ構える。
「この事態は……君がどうこうできるものではないんだ」
…………………………
「なんだ?もう逃げないのか?じゃあ遠慮しねえぞオオオ!!!」
「————ッ!!」
ハンターとキアさんが切り合った。
——————最悪だ。キアさんを万全の状態にすることもできず、結局戦わせて。町中の人たちを巻き込んだだけ…………本当に俺は…………ただ失敗するだけの……考える能のない……猿野郎だ……
———————————「……………………うぅ………」
か細い声が聞こえた。急いで周りを見回す。
————あれか!
小学生くらいの子供が瓦礫の下敷きになっている。しかも頭上には倒壊寸前のビル。このままじゃ………
俺しか気づいてないのか?キアさんはハンターと切り合っている。周りに人はいない………
………俺が行くしかないのか?………いやさっきはそれで町が壊れたんだ……
…俺は動かないほうが…………
キアさんとハンターの戦いで発生したであろう強風が襲った。
俺は声もあげることもなく転がる。震えながらなんとか立とうとした時——
俺が纏っていたマフラーがストンと眼前に落ちた。
———————————ばあば。
また気づいたら身体が動いていた。俺は真っすぐ子供のいるところへ向かう。
なにやってんだ……さっきあんなことがあったのに…………でも……
…やっぱりほっとけるか!俺は!主人公に!なりたいんだよ!!
着いた。俺は子供のそばに駆け寄る。どうやらまだ意識があるようだ。
……あれ?この少年どこかでみたことあるような……いやそんな場合じゃない。
こういう時は………
「————大丈夫!絶対助け出す!」
そう言ってすぐさま瓦礫をどかそうとするが………重い。こんなことならもっと鍛えておけばよかった……
いや踏ん張れ!!「今の俺」が何とかしろ!!
しかし俺の踏ん張りも虚しく、頭上のビルが倒壊した。
「————!!」
俺は少年を抱きしめるように守る。俺は死んでも、せめてこの子だけは———!!
俺はただ少年を庇いながら瓦礫に埋もれた。
***
「———チッ!」
いなすので精一杯だ。身体に力が上手く入らない。
「どうしたあぁ!!その程度かぁ?騎士様よオオオ!!」
………情けない。世界のためにと奮闘して、このザマ。一般人に心配までされて
——————せめて彼を逃がす時間くらいは………?!何であんなところに!
彼は倒壊寸前のビルの真下にいた。そのそばには子供がいる。瓦礫の下敷きになって動けないのだろう。彼はあの子を助けに行ったのか。だが危険だ。彼の力じゃあの瓦礫を動かせない。
ビルが崩れた。彼とそのそばにいた子供が下敷きになる。
———そんな。
「よそ見してる場合かああああああぁぁぁぁぁあああ!!!」
———ッ情けない———————————
「「———————————?!」」
突然、彼らが埋もれたところが輝きだした。
「?!この光は、黒異石の——————?!」
怒号。瓦礫が跡形もなく消し飛んだ。
そしてそこには、虹色の輝きを纏った———————————
————————————少年が立っていた。
***
————————————え?———————————そっち?
俺はうずくまりながら、自身から溢れ出る光を、不思議そうに眺めている少年の背中を見ていた。
思考と感情でぐちゃぐちゃになった脳内の片隅で、思い出した。
そこに立っていたのは、昨日のネットニュースで見た、
天才子役『空竜シュウヤ』その人だったのだ。
気づくと同時に、頭の中に一つの言葉がよぎる。
『英雄ってのは、英雄になろうとした時点で、英雄失格なのよ』
…………………………そんな……………………
***
…………なんだこれ。僕の身体中が急にキラキラしている…
突然の大爆発に巻き込まれたと思ったらこの状況だ。さっきから何が起きているのか全然呑み込めてない……
「なんだぁ?取り込んじまったのかよ。黒異石ィ!!」
…まぁ、一つだけ分かることはあるな。
「商売あがったりじゃねぇかあああああぁぁぁぁぁああ!!!」
コイツは、敵だ。
あの巨大猿は怒号を挙げながら突っ込んできた。構えから、あの槍で串刺しにでもする気だろう。一撃、二撃と繰り出してきた突きを僕は躱した。
「......ア”?!」
「…うるさいよ」
自分の突きを躱されて驚いているのだろうか。
大声ばっかりで逆に区別がつかない。
「僕自身も不思議に思っているよ」
本当にそうだ。さっきから訳が分からないことばかり起きているっていうのに、
頭はやけに冷静で……アイツも怖いって全然思えない。
「あぁ。それともあれか」
「……ア”?」
「あんたの態度からもさぁ、漂うんだよ。Theチュートリアルのザコ敵って感じがさぁ」
「———フッ。ハハハハハハハ!じゃあチュートリアルで終わっておけ。
クソガキがアアアア!!!」
あぁいうヤツは挑発すれば大抵のってくる。そこにカウンターを仕掛けてやればぶっ倒せる。身体中から力が湧いてくる。今の僕なら負ける気はしない—————
「…………あのぅ」
……?さっき瓦礫をどかしに来てくれたヤツ?
「…あの猿魔人。キアさんとの戦闘でもそうだったけど、突きしかしてないんです。だから多分、不意打ちで薙ぎ払いとか、叩きつけとか、蹴りを混ぜたりしてくると思うので……そこを注意してください……ということなんですけど……」
…たどたどしいなコイツ。年上の筈なのに敬語で話してきているし…
でも、不意打ちか。意識しておくに越したことはないだろう。
「…分かった。危ないから離れてて」
「…あ、はい………」
何か言いたいことがありそうな感じだったが、トボトボと離れた…
…終始変なヤツだな。
「……作戦会議は終わったかああぁ?!」
「————ッ!!」
巨大猿の雄叫びが辺りに響く。瞬間、大猿が消えた。
————いや、目で追えない速度で動いているんだ。
僕はすぐさまカウンターの構えに入ると同時に感覚を研ぎ澄ます。
———————————!来る!
真後ろの方から巨大猿が接近してきた。
高速の突きを繰り出すヤツをギリギリまで引きつける。そうしてカウンターを———
———『注意してください』
瞬間、彼の言葉が頭をよぎった。
カウンターを止め相手の方に身体を向ける。そうしてヤツは高速の突きを繰り出し—————さらに裏拳や薙ぎ払いを繰り出してきた。
回避に集中していた僕はそれをギリギリで躱す。アイツの言った通りだった。
「?!」
ヤツは一瞬驚いた表情を浮かべ———激高し槍を振り回してきた。今度は突きだけじゃなく薙ぎ払いや蹴り、叩きつけを混ぜてくる。
…でももう無駄だ。それはもう見切れる!
「クソガアアアアアアアアァァァァアア!!」
暫くの拮抗。痺れを切らしたヤツは、怒号と共に力いっぱいの突きをかましてくる。凄まじい殺意がこもった一撃を何とかスレスレで躱し—————
「〈ゲームオーバー〉だ」
全力のカウンターを腹に叩き込んだ。数歩下がった後に、巨大猿は倒れた。
***
———————終わった……のか……?
俺とキアさんは少し離れたところから、空竜シュウヤと猿魔人の戦闘を見ていた。
突然の出来事の筈なのに、敵が誰なのかを冷静に判断して、しかも倒すのかよ。
やっぱり幼い頃から積み上げてきた天才は格が違うのか………
「だいじょうぶ?キア~」
「————え?うおわぁ?!」
突然後ろから声がしてビックリした。後ろを振り返ってみると、
そこにはキアさんと同じくらいの綺麗な女性が立っていた。
髪はボサボサだが色は透き通った白色の短髪で、丸眼鏡に紅い瞳。
なによりそのグラマラスな体系は、羽織っている白衣では全く隠しきれていない。
そして女性の耳が、尖っていて、人間のより少し大きい。「エルフ」なのだろうか。
「———はい。問題はありません。エミナ師匠」
「…うんごめん。見るからにボロボロだし、だいじょうぶじゃないよね…」
彼女——エミナさんに聞かれたキアさんはそう答えるが、エミナさんは察したようだ。
「……さて」
———?!こっちを見た?!
「え?!あぁええっとぉ
「おっと。しつれ~い」
咄嗟に何か言おうとした俺の横を、エミナさんは通り過ぎて行ってしまった。
その方向には———
「君、ちょっっと話があるんだけど~。ついてきてくれる?」
「……僕?」
「そう。君。他に誰かいる?」
…分かっていたけど、眼中もなしかよ!
俺は二人のいるところへ行こうとしたが……
急に世界が反転したかのような感覚に襲われた。
「……あ」
「おや?」
「おい、大丈夫か?!」
三人が一斉に話しかけてくる。混乱状態のまま気が遠くなっていく中、
俺は考えていた———————————
—————なんでこうなる?
俺はどうしたら———————————主人公になれるんだ。
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