夏祭り

@hima4200

第1話

祭囃子が響くセピア色の境内では

沢山の人混みと、軒並みに列なる出店で

賑わいを魅せており、そのうちの一角で


赤や黒、緋色に紅白の金魚たちが

水彩画の様に生け簀の中を美しく泳いでいた。


母から貰った100円を金魚すくいのおじさんに

渡すと

「あいよ!」と

青い取手のポイを3つ手渡してくれた。


ドキドキしながら片手で椀を持ち

ポイを水の中でヘビの様に靡かせ

金魚たちを追った。


金魚たちもそれに逆らう様に

流れに逆らったり、四方八方に逃げ出し

たっぷりと水を吸ったポイはあっという間に

ダメになってしまった。


そして残り一枚となったポイも瞬く間に

破いてしまい、落ち込む自分を

見兼ねたおじさんが

緋色の金魚を一匹サービスしてくれた。


嬉しさと共に複雑な気持ちのまま

金魚屋の出店を後にすると


「その金魚どーせおじさんにサービスして

貰ったんでしょ?」

紺青色に白い小花の

模様が随所にあしらわれた浴衣を纏った遥が

からかった様な口調でそう云った。

「次はちゃんと掬うし」

「ほーらやっぱりね。」

「うるさい」

並んで歩く足並みに下駄が小さく音を立て


二人の後ろ姿が喧騒と共に

ゆっくりとセピア色の景色の中に

溶け込んでいった。

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