四人の義妹と一人の妹
ぺんぺでの花
第1話 修羅場というやつである!!
人生はよく階段に例えられることがある。
その人の選択や行動によって、一歩一歩次の段へと上がっていく。
もし、踏ん張って一段飛ばしで階段を上がろうとしたのなら、もちろんその分、体力もいるし、失敗してしまったらすぐに一番最初から上り直しになる。
だから大人や先生は、俺たちに言う。人生は選択の積み重ねで、その時その時の選択が大切である、責任を持て、と。
でも、どうだろう。人々は自由に無理やり一段飛ばしをして、成功したり、失敗して上り直しになったりすることを楽しんでいるのではないか?
初めての恋人ができたときは、階段の一段飛ばし、二段飛ばしくらいを成功させたときだ。でも、それに調子にのって恋人と別れたときはまた一から上り直しになったときだろう。
そうやって挫折と希望の繰り返しを経て、人は自分の経験を人生と呼び、階段を一段飛ばしで上るように人は人生に刺激を求め、その結果を楽しんでいる。
だが、一部の人間はそれをしない。
一段飛ばしなんかせず、ただ単純に一段ずつ普通に階段を上るだけ。
周りで挑戦や失敗をしている人をただただ横で見ながら、上がっていくだけ。その階段の終わりなんてないのに。
それが
■ ■ ■
今日は、ライトノベル新刊の発売があり、本屋に行っていた。いつもなら通販でポチるのだが、通販では即売り切れたので直接本屋に買いに行ったのだ。
家の玄関扉の鍵をあけ、ドアノブに手をかける。
「ただい......」
「あ゛や゛た゛か゛あ゛ああー!!た゛す゛け゛て゛え゛え゛え゛ーーーー!!!」
玄関までの一直線、全速力で俺の名前を叫びながらゾンビとも見間違える俺の父を突き放すようにバタンッと音を立てて玄関扉を閉め、カギを外側からかける。
「よし。コンビニでも行......」
「た゛す゛け゛て゛え゛え!!!゛」
「えぇ......」
鍵をかけたはずなのに、先ほどよりもひどく鼻水と涙を流して俺の胸にとびかかってくる。
「だいじょぶ、だいじょぶ、なにもしないからこっちにおいでぇ~」
無理に優しくした声を出しながら、俺の母さんが開けられた扉の奥に立っている。
「......?!?! 何で、母さん包丁持ってんの?」
しかも両手に二本。しかも片方は俺が子供の頃に使っていた子供用のナイフ。 俺は、近所の人たちにナイフが突き刺さるような視線を受けながら、疑いを父さんに懸ける。
まさか。
「お父さんが浮気したの!!」
したんや......。
■ ■ ■
「泉菜わかります!!これは修羅場というやつですね!!」
「一回静かにしようね。泉菜」
「わかりました兄者!!」
目の前にいる
四席あるダイニングテーブルに父さんと母さんは向かい合って座っており、母さんが父さんに向けてスッと滑らせたスマホの画面にはしっかりと父さんと知らない女性が捉えられている。
えっ今、泉菜俺のこと兄者?兄者って言った?
※兄者って言いました
「あ~......これはがっつりやってますね」
「ですね!!」
俺の言葉に泉菜も続く。
画面の女性とはショッピングらしきところでいろいろと買い物をしている。日付は昨日であり、仕事の用事が急にできたからと言って出て行ったはずだが......。
しかし、写真を撮られたということはどこかに写真を撮った人物がいるはずだが。
「私はあなたを信用して、GPSと尾行をしたのに!!なんでそんなことするの!!」
母さんの罵声が飛ぶ。だが母さんよ、その行動のどこが父さんを信用しているのだろうか。そのことを指摘したら、少なからず父さんをかばえるが、俺にはそんな度胸はない。
そんなことよりも、父さんは何やらもじもじしており、小声で「いやぁ......」と言っている。何だよ男として情けない、度胸を持てよ。 ※お前がな
ピロンっ
ふと、俺の携帯が鳴ったので、見てみると、目の前の泉菜が俺にメールをくれたようだ。
『兄者!!父上がこんなことをした理由が分かったので助けていいですか?』
『いつも父さんが父上なんだから、俺も兄上で良くない?いや、兄上もおかしいんだけど』
『了承ありがとうございます!!』
『話聞いてる?』
目の前の泉菜は楽しそうな笑顔を俺に向けながらいたずら心いっぱいで俺を見つめてきた。
最終的な結果だが、もうじき母さんの誕生日であり、父さんはいとこにプレゼント探しを手伝っていもらっていたみたいだ。
だから、泉菜が母さんに誕生日の話題を出したら父さんもそれに乗って、今回の事情を話してくれた。
「ごめんなさい。急に叫んだりしてしまって......」
「大丈夫だよ、君も俺のことを思ってくれた結果だし」
思いすぎた結果あなたGPSつけられて、尾行されて、盗撮されてましたけどね。
「ごめんなさいね、あなたたちも。せっかくの休みの日なのに」
「大丈夫です母上。面白かったので」
「面白いか?」
泉菜は今の話が面白かったようで、少し心配になるがいい経験?にはなっただろう。 ※なったのか?
俺がラノベの新刊を買いに行ったのが夕方の四時だったので、夏とはいえもう夕方独特のオレンジ色の雰囲気が漂ってくる。
「すまないが、夜飯の前に話がある」
「俺の食後のアイス食べたとか?」
「それもそうだが、もっと大事なことだ」
「は?」
これで大事な要件じゃなかったら後で殺す。 ※怖いて
「はっきり言う!!綾鷹!!お前に妹ができる!!」
はぁ。......はぁ?
俺に妹ができるらしい。もういるんだが。
「どういうことですか、父上?」
「俺が病院を経営していることを知っていると思うが、そこにはたくさんの親を亡くした子供がいる。だから、我が家で匿うことにした!!(笑)」
(笑)じゃねえよ。母さんとは「そういうことならしょうがない」と納得しているし、泉菜は「家族......増えるんだ......」と嬉しそうにしている。
まぁ、俺も反対なわけではないが、職業が医者をはいえ、急に子供が増えて対応できるものなのだろうか。
「そんな急に言われても、混乱するから、考えさせてくれないか?」
「いや......でも......」
「父さんは早く俺のアイス買いに行け」
「ははいはいはいはい!!」
父さんは財布とスマートフォンを持って、コンビニへと向かった。
俺としては全然歓迎できるのだが、その子の性格によっては家族みんなに負担がかかるかもしれないから少し気後れするところもある。
まぁ、よく考えてから結論を出そう。一日くらいなら父さんも待ってくれるだろう。
「じゃ、お父さん帰ってきたらご飯にするからね」
「了解しました!!」
父としての家族内での地位が低すぎることが少し面白かったのか、家の中は先ほどの不倫事件のかけらもないように温かくなった。
「で、なんで泉菜は俺のベットで寝てるんだ?」
家族が解散して、部屋に戻った後、先に戻ったはずの泉菜が俺のベットにくるまって寝転んでいた。
「兄者が寝る時までに温めておいてあげたくて!!」
「......そういうものなのか?」
「そいうものなのです!!」
※多分違う
この子は俺の実の妹だ。こんな風に仲良くなったのもつい最近のことで、俺のことを兄者と呼んできたのも今日からだ。何があったのだろう?
「兄者は義理の妹様ができるのは嫌なのですか?」
「いやではないけど、家族に負担がかからないか心配でな」
「兄者は優しいですね。でもきっと大丈夫ですよ」
「そうだと信じてるがな。まぁ、明日までじっくり考えるよ」
こういう家族問題は、こんなにすぐ決めるべきではない。じっくり時間をかけて、両親とも話し合って、何より泉菜とも話し合って決めるべきだ。
ピンポーン
玄関扉のチャイムが鳴った。もう父さんが帰ってきたか?と思ったが、父さんは鍵を持っているし、最近チャイムの場所が分からないとチャイムを鳴らして聞いてきてこともあるほどのバカなのだ。ということは......?
え?まじ?もう来たの?
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