ポ
私が聖女になる前のことです。
私はポリスメンに捕まりました。
唐突な展開により、紳士淑女である読者の皆様は大変混乱遊ばされているかと存じますが、とりあえず続けさせていただきます。
取り調べ室に連れてこられた私は椅子に座らされました。
対面に座ったポリスメンはいかにも厳格そうな中年の男でした。
足の小指をタンスの角にぶつけて痛みを堪える時のように険しい表情をしています。
厳格ポリスメンは睨むように私を見て言いました。
「無銭飲食をしたということですが」
私はすぐに否定しました。
「ち、違うんです。私の話を聞いてください」
「はい。聞きましょう」
厳格ポリはどっかりと椅子に座り直して腕を組みました。
さっき捕まった時、私が何を言っても
「言い訳は署で聞きますから」
と決まり文句のようなことを言ってまったく取り合ってくれなかったのですが、ようやく話を聞いてもらえるようです。
「わ、私は店に入った時点では確かに財布を持っていたんです。食事中に鞄からハンカチを取り出した時にもその姿をこの目ではっきりと確認しました。でもお会計の時に鞄の中を探してもなかったんです……」
厳ポリはわざとらしく二度頷きました。
「なるほどね。それで? あなたは一体なぜ財布が鞄から消えてしまったと思うんです? まさか財布が勝手に歩いて鞄の外に出て行ったなんて言わないでしょうな?」
厳ポは皮肉っぽくそう言いました。
「そんなことは言いません。でも、事実として私の鞄に財布が入っていないということは、誰かに盗まれてしまった可能性が高いんじゃないでしょうか」
私が顔色を窺うようにそう言うと、ポは鼻で笑いました。
「盗まれたぁ~?」
「あ、いや……すみません」
ポが大きな声で嫌味ったらしく言ってきたので、私はつい謝ってしまいました。
私は心底イライラしましたが、気が弱いので声に出して抗議することはできません。
ビクビクしながら、誰にも聞こえないくらい小さく舌打ちするので精一杯でした。
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