福の神?

「りんたろ〜、海外旅行にでもいっちゃう?」

「突然、どうしたんですか」

「だって魔石2個目でしょ。ビジネス使っても大丈夫だし〜」


ビジネスってビジネスクラスって事?

勿論俺は乗った事はない。

それに、ビジネスクラスって高いって聞くし、そんなお金はない。


「いや、そんな休みはないから。俺、新人だし有給もまだ使えないからね」

「え〜じゃあ普通に休んじゃう?」

「クビになりたくないから無理だよ」


普通に休むってそれを世の中ではズル休みと言う。

しかも海外って何日休まないといけないんだか。

冗談だとは思うけど凛には困ったものだ。


「湊隊長、今日2個目ですよ? 俺1日に2個って初めてっす。この前出たし、出過ぎじゃないっすか?」

「そうですね。明らかに出現率が上がってますね」

「懐は暖かくなるからいいんですけど、これって修太朗さんが来てからじゃないっすか?」

「そうですね」

「これって修太朗さん関係あるんすか?」

「どうですかね。モンスターに起因するのか、修太朗さんだとすれば、あの異常な魔力での攻撃が影響するのかもしれませんね」

「異常な魔力量でモンスターを倒したら魔石のドロップ率が上がるって事っすか?」

「可能性のひとつです。前例がありませんから」

「たしかに。まあ、減ると困りますけど増える分には問題ないっす。でも本当にそうなら修太朗さんは福の神っすね」

「修太朗さんですから」


あまり、消耗もないけどモンスターと戦えばそれなりに疲労感はある。

湊隊長の差配で、全員その場でひと息ついて小休憩をとる。

俺の場合、肉体的な疲れというよりも、見慣れないモンスターと対峙した事による気疲れの部分が大きいかもしれない。

先月まで、モンスターと遭遇した事もなかった俺が、既に何匹ものモンスターを倒しているのも中々に感慨深い。

俺がダンジョンのモンスターを倒す事で、間接的に誰かを助けた事に繋がっていると思うとやり甲斐がある。

それに、隊のみんなも俺が入った事で探索が楽になったと言ってくれている。

社交辞令的な部分もあるかもしれないけど、そうであれば俺も嬉しい。

それなりに戦闘を繰り返した事で、魔法の発動は学校の時よりも格段に上達してきた感はある。

魔力の流れがスムーズになり、ゆっくりと循環していたのが、今は循環というか身体全体に広がっているように感じる。

なんとなくだけど、これはいい傾向な気がする。

今の状態になって、魔力の調整も上手くいっている。

この調子を続ける事が出来ていれば自爆するという事は避けられそうだ。

北王地さんには、本当に感謝だな。

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