風姫

間違えて前話が飛んでいました。

1話前の大きな敵を先に読んでもらえるとお嬉しいです。

よろしくお願いします。



オークを数倍にしたような体型だけど、オークとは顔が違う。


「あれは巨人?」

「修太朗さん、あれが4階層のメインとも言うべきトロールっす」

「あれがトロールですか」


トロール。

ゴブリンやオークに並んで知られているモンスター。

見たのは初めてだけど俺も名前は知っている。


「あれは、どう戦えばいいんでしょうか」

「りんたろ~一匹は私が倒してみせるからもう一匹はお願い」


あんな巨大なモンスター相手に大丈夫かと心配になるけど凜は俺よりずっと先輩なのだから、ここは黙って勉強させてもらうのが正解だろう。


「たぶん、りんたろ~なら初級でいけると思うんだけど私はそれじゃ無理だから中級だよ。それじゃあいくね〜。大仁田くん、前お願いね〜」

「わかったっす」


大仁田さんが斧を構えてトロールと凛の間に立ち、凛が詠唱を始める。


「我は願う。願うは全てを断ずる刃。この、この刃は我への悪意を断ち、この刃は我が敵を滅する。大気に宿るその息吹を我が右手、その鼓動を左手に。我が捧ぐはこの魔力。我が魔力を糧に、その力この現世に示せ。乱れ咲け! 『風麗華葬』」



凛が中級魔法を発動した。

初めて見るけどこれが中級魔法『風麗華葬』か。

目には見えないけど魔力を含んだ風が舞い、トロールへと襲いかかる。


「グアアアアアアアア!」


トロールの叫び声はその体躯に比例してとんでもなく大きい。

耳がおかしくなりそうだけど、風の刃がおさまる事はなくトロールを刻んでいく。


「すごいな」


中級魔法というだけあって凛の放った魔法は今まで見た事のある初級魔法とは一線を画している。

あれほどの巨体を誇るトロールがなす術なく削られていく。

『風麗華葬』は単発のウィンドスピアとは異なり、トロールの周囲に留まりダメージを与え続けている。

もう1匹のトロールが巨体を揺らし向かってこようとするのを大仁田さんが牽制し、その動きを留め置く。


“おおおおおお〜久々の風姫の風麗華葬だ〜”

“トロール相手にならん“

”リンリンカッコイイ〜!“

”あれ食らったらもう逃げられん。凛ちゃんの風は最強“

”いや最強は修太朗”

“終太郎が凄太郎で麻痺してるけど、後藤隊やっぱすげえ”

“終太郎って誰。太しかあってねえW“

“そろそろじゃない?”


トロールは周囲を覆う風から逃げようと暴れているが、徐々にその動きは鈍くなってきているのが見て取れる。


「ギャアアアアアアアア〜!」


最後、断末魔の叫びと共にトロールはその場へと崩れ落ち、そしてその姿を消した。

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