握手

3階層で引き返し地上へと戻ってきたけど、大仁田さんはやっぱり不調らしく戦いは控えて残りのメンバーで対応することとなった。


「大仁田さん、大丈夫ですか?」

「問題ないっす。ちょっと魔法が使い辛いだけなんで」

「それならいいですけど、顔色がすぐれないような」

「本当に大丈夫っす」


地上に戻っても、大仁田さんの体調が劇的に回復するという事はなかった。


「大仁田くん、今日は無理せず早く眠った方がいいわ」

「はい、そうします。それにしても、あれキツイっす。魔力切れしたわけでもないのに頭がフラつきますね」

「魔力回路に負荷がかかったのかもしれませんね」

「まあ、二度と俺が使うことはないっす。ピンピンしてる修太朗さんはやばいっす」

「修太朗さんですから」


大仁田さんは体調不良で早めに帰って行ったけど、俺が帰るには少し早い。

業務報告書を書き上げて、他にする事がないか考えてみるが新人の俺の仕事量はそう多くはない。

桜花さんは、撮影した映像関係の業務があるらしいけど、俺ではどうしようもない。

凛も俺の担当として指導記録があるようだけど、これを俺が手伝う事はできない。

湊隊長は、いつも通り忙しくしている。

隊長だけあって、明らかに他の隊員よりも分量が多い気がする。


「湊隊長、俺に手伝えることってありますか?」

「いえ、今日はそれほどでもないので大丈夫です。どうしようもない時はお願いしますね」

「はい、いつでも言ってもらえれば」


結局、自分の仕事を完了した段階で1人早めに帰る事になってしまった。

事務所を出ると、事務所の出入り口から少し離れた場所に何人かの人が立っているのが見えた。

ん?

今日って何かあったっけ。

俺には、関係ない事だけど普段と少し違う光景に注意をひかれながら歩いていると、その中の一人に声をかけられた。


「あ、あの……」

「どうかされましたか?」

「い、いえ。花岡様」


え? 俺のこと知ってる?


「はい、花岡ですが」

「握手してください」


握手?

なんで握手?

新手の勧誘か何か?

いや、でも目の前の人の態度、そんな感じでもないよな。

少し疑問に思ったけど、断る理由もないので、わけもわからず手を出し握手してしまった。


「きゃ~~手大きいですね。当分手は洗いませんから」


どういうこと?


「あ、私も握手してもらっていいですか?」

「私も!」

「修様、お願いします」


???

どういうこと?


最初の女性と握手を済ませると、その場にいた人達がこぞって俺との握手を申し出てきた。

まったく、状況が理解できないけど、この人たちは俺と握手するためにここで待ってたってことなの?

いや、そんなバカなことはないだろうけど、これっていったい……。

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