ゴブリン燃ゆ

ゴブリンめがけて走り出してすぐに気が付いた。

遅い。

もともと『ファイア』を使うつもりだったので『ギリスマティ』を使用していない。

今の俺は燃える剣を持つただのオッサンだ。

まずい。

まずいけど、既に交戦状態といえるこの状態で別の魔法を使ってる余裕はない。

幸いにも燃え盛る炎にゴブリンが怯んでくれている。

ここは気合いだ。


「おおおおおおおっ!」


雄叫びをあげゴブリンへと斬りかかる

当たり前だけど素の俺では剣が重い。

重いけど、そのまま振り下ろすとゴブリンが手に持つ棍棒のようなもので受け止めた。

棍棒は剣に纏う青白い炎によって一瞬で燃え尽き防ぐ手段を失ったゴブリンも剣に触れると青白い炎によりあっという間に燃え尽きてしまった。


「湊隊長⁉︎ なんすかあれ」

「想像以上ですね」

「炎の魔剣⁉︎」


「いえ、おそらくあれは……」


1匹目のゴブリンが燃え尽きたのをみて一瞬残ったゴブリンが怯んだような素振りを見せたが、それは一瞬の事で一斉にこちらへと襲いかかって来た。


「うあっ」


思わず情けない声が出てしまったけど、それは仕方がない事だろう。

今はそんな余裕はないけど、この剣で戦う時は『ギリスマティ』が必須だ。

素早く動くのは無理。

ただ、結構火力は高いみたいだから触れるだけでいい。

カッコよく斬り捨てるのは無理でも、ゴブリン相手に剣を当てるくらいならどうにかなる。

気持ちを切り替えて、ゴブリンに集中する。

ゴブリン相手に怖さが無くなったような錯覚に陥ってたけど、あれは完全に魔法の力があったからなんだと思い知らされる。

俺が強くなったんじゃない、魔法がすごいんだ。

そのことを認識するが、ここがまだ浅い階層でよかった。

ゴブリンの攻撃を回避することに集中し、避けると同時に剣を撫でるようにゴブリンに当てる。

こん棒でもゴブリンの身体の一部にでも触れてしまえば燃やすことが出来る。

大振りは必要ない。


”おおおおああああああ!?”

”燃えてる。ゴブリンが消し炭に

”炎の剣!あの火力まさかサラマンダー!"

”いや、サラマンダーはあんなに錆びてない”

”修大朗、まさかバフなしでゴブリン倒してるんじゃ"

”達人か!流れるような動きから触れただけてゴブリンが燃えてなくなってる

“剣神、いや魔剣神!”

”さすがは世界の修太朗”

”撫でるように斬る。これが剣を極めし者”


触れれば燃えるけど、ボアっと激しめに燃え上がるからこちらにも引火しそうで結構怖い。

ゴブリンの攻撃にも注意を払い、燃えたらその炎にも注意が必要とは結構難易度が高い。

何度か、魔法で強制的に身体を動かしていたから何とか動くことが出来てるけど、少し前の俺だったら危なかったな。

やっぱり、普段から身体を動かすことは大事だ。

もう少しランニングの回数を増やした方がいいかもしれない。


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