錆びた剣
この流れだと、俺がやった方がいいんだろうな。
凜と湊隊長に視線を向けると二人とも頷いている。
「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」
身体から緑色の光が発せられるが、いつもと違い違和感がある。
既に何回か使っているおかげで発動はかなりスムーズになったと思ってたけど、魔力の流れがおかしい。
腕から手に持つ錆びた剣にも魔力が流れ出ていってるのを感じる。
以前支給されていたセイバーギアも多少魔力を帯びる感じはあったけどそれの比ではない。
剣に魔力が流れ出て少しもったいない気もするけど、それだけだ。
俺の魔力は多い方だし、そこを気にしなければ特に問題はなさそうだ。
「いきます」
ゴブリンに向け駆ける。
『ギリスマティ』の効果で筋肉痛も感じることなく動ける。
ゴブリンとの距離はすぐに詰まり目の前のゴブリンに対し錆びた剣を振るう。
錆びていても剣は剣だし、力技でいけばどうにかなるはず。
「あ……」
錆びた剣の刃がゴブリンに触れた瞬間、ゴブリンの身体がスパっと斬れてしまった。
折れた支給品の斬れ味も凄かったけど、今回のそれはちょっと違う。
豆腐を斬ったような感じ。
あまりにも手ごたえなく斬れてしまった。
思いっきり力を込めようとしていただけに予想外の事態に動きが止まりかけたけど、ゴブリンは1匹だけじゃない。
そのままゴブリンの一団に突っ込んで剣を振るう。
やっぱりたまたま会心の一撃が決まったとかじゃない。
この錆びた剣の斬れ味が凄いだけだ。
錆びてるのに何でこんなに斬れるのかはわからないけど、モンスターを倒すのに斬れ味が鋭くて困ることはない。
”おおっ、剣神”
”キングスレイヤーがゴブリン相手ならこうなる”
”あれってドロップの錆びた剣?”
”やっぱ、いい男が持つと錆びとか関係ない”
”これがほんとの刀の錆び”
”剣の錆びだろ”
”なんかスパスパいってるけど、ゴブリンて柔らかいんだっけ”
”修太朗だから、これが標準”
”速い。ゴブリンもういなくなるぞ”
”瞬き厳禁”
”かっこいいい~~”
全部で6匹。
謎の錆びた剣のおかげもあって、問題なく倒す事が出来た。
「おわりました」
「え~っと修太朗さん、今のはなんすか?」
「なんすかとはどういう意味でしょうか」
「いや、その錆びた剣でなんであんなに斬れるんすか」
「なんでと言われても斬れましたとしか」
「いや、いや絶対おかしいですって」
「大仁田君、修太朗さんですから」
また湊隊長の謎言葉だけど、結果的にゴブリンは全部倒せたわけだし問題ないな。
「修太朗さん、ちょっとその剣を構えてみてくれますか?」
「こうですか?」
「いい感じです。ばっちりです。視聴者の皆さんにもしっかりみてもらえてますよ」
桜花さんに促されてカメラの前で錆びた剣を構えては見てるけど、こんな映像に需要があるんだろうか?
”修太朗~イケてる~”
”錆びた剣を構える修太朗。永久保存”
”錆がまた渋さを醸し出してる。錆び漢”
”達人感がすげ~”
”これから錆びた剣が流行るかもな”
”あの剣なんであんなに斬れるん”
”それは修太朗だから”
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