第63話 花岡凛太朗

「おかわり~」

「ちょっと飲み過ぎてないですか?」

「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ」


なぜか、俺から連想して飲みたくなったそうで、凜がウィスキーのロックをどんどん空けていく。  

これでもう5杯目だろうか。

凜がお酒に強いのはわかってるけど、すだち酒より濃いしさすがに飲み過ぎなんじゃないだろうか。


「しゅうたろ~、一緒に猫飼おうよ~。凜太郎とかよくない~? 花岡凛太朗~」


花岡凛太朗? 猫の名前か? なんで花岡?


「犬はきら~い。犬こわすぎ~」

「なんで怖いんですか? なにかあったりしたんですか?」

「ありました~。でも、まだないしょ~」

「ないしょですか?」

「そう。ないしょ~。ほら、凛太朗ももっと飲んで~」


凜、俺は修太朗。凜太郎じゃないです。猫じゃないです。人間です。

これは、結構酔ってるんじゃないだろうか。

それからも凜のペースは変わらず、ついに10杯目となってしまった。


「凜、さすがに飲みすぎですよ。そろそろ終わりにしましょう」

「え~もう一杯頼んじゃった~。もったいな~い」


いつの間に頼んだんだ? それにしてもさすがに飲み過ぎてる気がする。


「もう、控えた方がいいですよ」

「え~このSDG‘Sの時代にもったいな~い。そうだ~私の代わりにりんたろ~が飲んで~」

「俺ですか?」

「そう、お酒もったいないでしょ~」


凜と話してるうちにテーブルには十一杯目のウィースキーのロックが運ばれてきてしまった。

凜はこれ以上飲むと危険な感じもするし、俺が飲むしかないか。

ウィスキーなんかいつ以来だろうか。

少なくともこの十年飲んだ記憶はない。

ウィスキーのグラスを手に取って口へと運ぶ。

うっ、きつい。

のどが焼ける。

これはちびちび飲んだら無理だ。

覚悟を決めて一気にあおる。


「ガハッ、ごほっ、ごほっ」

「りんたろ~大丈夫?」

「大丈夫です。それじゃあ、もう帰りましょうか」

「うん、わかった~」


お会計を済ませて、外に出るまではよかった。

外に出た瞬間一気に来た。

そもそも、ほろ酔いだったところにウィスキーを一気にあおり歩いたせいで回る。

アルコールと一緒に視界が回る。

俺のアルコール分解酵素が全く役目を果たす気配はない。


「りんたろ~?」


やばい。凜を送らないと。せめてタクシーを拾わなきゃ。

かなり酔ってる凜を一人にするわけにはいかない。

だけど、回る。

視界は回るのに、頭が上手く回ってくれない。

足がふらふらする。

ダメだ。完全に酔ってしまった。

ぼ~っとする。

あれ? 誰かが支えてくれてる? 

ああ、凛か。

ふわふあする。


「りん……どこ……タ…………ね」


凜が何かしゃべりかけてくれてるけどよく聞こえない。

とにかく、凜をタクシーに……。


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