第53話 犬には風
2階層を大仁田さんの先導で進んで行く。
今のところそう1階層と違いはない。
唯一違うのはスライムがいなくなったことだろうか。
モンスターもいないので自分たち足音だけが響き渡る。
静かだ。
みんながいてくれるので大丈夫だけど、一人この静けさを進むのは怖いな。
「花岡さん、敵です」
「はい」
先頭を歩く大仁田さんがモンスターの出現を知らせてくれる。
「ウルフハウンドっぽいです」
ウルフハウンドというくらいだから狼か犬っぽいモンスターか。
「隊長、どうしますか?」
「そうですね。花岡さんやってみますか?」
「え? 俺ですか?」
「はい。もし危ないようなら私が責任をもってフォローしますから。それに花岡さんなら大丈夫だと思いますし」
「そうなんですね。わかりました、やってみます」
後藤隊長がここまで言ってくれてるんだからきっと問題ないんだろう。
犬だしそこまで怖いモンスターではないのかもしれない。
いや、モンスターじゃなくても犬は苦手だけど。
“おおっ、いきなり修太朗”
“ウルフハウンドはスピードあるし結構手ごわいぞ”
“湊隊長スパルタ”
“いや、ゆっても勇者だし”
“聖剣がうなるか”
耳をすませば複数の唸り声が聞こえてくる。
慎重に進んで行くと大型の狼っぽいモンスターが姿を現した。
大きい。
完全に犬の範疇は超えている。
それに野性的な風貌は犬というよりも完全に狼寄りだ。
初めてのモンスターを前に緊張感が走る。
巨大なウルフハウンドを見て、あの時の事がフラッシュバックする。
変な汗が流れ落ちる。
しかも、あの時の犬と比べてもはるかに大きく、凶暴に見える。
いや、大丈夫だ。後藤隊長がいけるって言ってたしダメなら後藤隊長が助けてくれる。
「ふ~っ、行きます。「その翼は敵を裂き、その吐息は空を穿つ。幾千の刃を纏いしその気高き咆哮を敵に示せ『ウィンドスピア』」
俺の選択は風の初級魔法。
おそらくは敵モンスターはスピード型。
なんとなく剣でもいける気もするけど、恐怖心もありスピードに優れた風魔法を放つ。
風の槍が目の前で唸りを上げるのが聞こえてくる。
慎重に魔力量を調節し風に乗せ開放する。
解放された風の槍がウルフハウンドの身体を貫く。
続けざまに風の槍を発動し、残りのハウンドに向け順番に放っていく。
魔法のすごいところは、初心者の俺が放っても狙いを付けたところへ寸分狂いなく命中してくれるところだ。
やはり風を選択したのは正解だったようだ。
大型のウルフハウンドに緊張したけど思ったよりあっさりと倒すことが出来た。
昨日小谷さんが使っていたので真似をさせてもらったんだけど、問題なく発動できてよかった。
風魔法は学校で一度も使ってなかったから、ちょっと心配だったけどぶっつけ本番で上手くいった。
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