第51話 闘神あらわる?

 「おはようございます」


昨日しっかり一日休ませてもらった。

やっぱり勤務の次の日がほぼ休みって待遇良すぎる気がする。

一昨日使うことのなかった中級と上級魔法も念のため教本をみてしっかり復習しておいたので抜かりはない。

初日で一階層でやれる感覚はある程度掴めたと思う。

やっぱり、他の隊員の存在が大きい。

一人だとこうはいかないと思うけど安心感が違う。

朝出勤後すぐにダンジョンへと向かう。


「花岡さ~ん、きょうもよろしく~」

「はい、よろしくお願いします」

「今日は様子を見て下の階に降りれるようなら降りてみようと思います」

「そうなんですか」


二日目でもう下の階へ降りるのか。

後藤隊長がそういうなら下の階層のモンスターもそこまで強いわけではないのかもしれない。何事も経験だ。


「今日は、最初から撮影しますね。皆さんお待ちかねだと思うので」


それはそうだろう。何しろ同接150万という数の視聴者がいるんだ。後藤隊の配信を心待ちにしている人はいっぱいいるんだろう。

それにしても平日の朝からそれだけの人が見てるって考えただけでもすごいことだ。


「は~いみんな~、きょうも始まるよ~。もちろんみんなお待ちかねの大型新人さんも登場するからね~」

小谷さん、大型新人って俺の事ですか? ちょっとやめてほしいです。そんな風に紹介されるとリアルとのギャップに画面越しの反応が怖すぎていたたまれなくなりますので。


“おおっ、りんちゃ~んおはよ~”

“はじまった。まちきれない”

“一昨日のが俺の目の不調でないことを祈る”

“大型新人修太朗”

“まってた”

“すごくまってた”


昨日と同じようにスライムを素通りしてダンジョンの奥へと進んで行く。


「花岡さん、ゴブリンが来ます」

「はい」


ゴブリンの姿は俺にはまだ見えないけど後藤隊長には見えているんだろう。

剣を手にして身構え、慎重に進んで行くと本当にゴブリンが現れた。

さすがは後藤隊長だ。


「花岡さ~ん、視聴者さんがお待ちかねですよ~。お願いしま~す」

「俺でいいんですか?」

「はい、花岡さんがいいんで~す」

「わかりました。それでは行かせていただきます」


実は昨日ひどい全身筋肉痛に襲われてまだ今日も痛みが残っている。たぶん一昨日使った『ギリスマティ』の副作用だ。ほとんど運動してなかったところにいきなり強化魔法で動いたものだから身体中の筋肉が悲鳴を上げている。

大仁田さんは褒めてくれたけど、かなりきつい。

やっぱり年かな。

今日は一昨日よりも少しだけ魔力の出力を抑えてみよう。


「古今東西の英霊よ、気高き、その力、その魂、その権能を我に示し、敵なるものを打ち倒す英知を授けたまえ『ギリスマティ』」


うん、問題なさそうだ。

今日は焦らず落ち着いてるし一昨日一度使用したことで前回よりもスムーズに発動した気がする。

身体からは濃い緑色の光が立ち上る。


“キタ~”

“闘気が!”

“エフェクトがかっけ~”

“強者のオーラ”

“闘神顕現”


ゴブリンへと駆ける。

身体に痛みはあるけど問題なく動く。

このスピード感も一度体験しているので驚きはない。

一瞬で距離を詰め剣を振るう。

サクッと斬れてしまうこの切れ味。一昨日も思ったけどこの剣すごすぎる。

間違って自分に触れてしまったらその部位がスパっとなくなりそうで怖い

返す刀でもう一匹も倒す。

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