第50話 家賃12万円
「花岡さんの事ですから他にも英雄譚がありそうですね」
「え、英雄譚⁉ そんなものありませんよ。あるわけないじゃないですか」
「そうですか? 事故にあった親子を助けたりとか……」
「あ~たまたまそういう場面に居合わせたことはありますけど、英雄譚とかそんなすごいもんじゃないですよ」
「……やっぱり」
「え? 後藤隊長どうかしましたか?」
「い、いえ。やっぱり花岡さんは花岡さんだな~と思っただけです」
「はあ、そうですか」
花岡さんは花岡さんだな~ってどういう意味だろう。
まあ、みんなお酒を飲んでいい感じだし、深い意味はないんだろうけど。
「いや~花岡さん半端ね~っす。今日見て思ったっすけど、マジですごいっす。マジパね~っす。さすがは大魔導士っす。いや大魔導士になる前からってマジ英雄っす」
大仁田さんはお酒を飲むと少しキャラが変わってしまった。変わったというかちょっと崩れたというか、所謂陽キャ全開だ。
「俺も子供の頃からヒーロに憧れてたんすよ。それで今頑張れてるんすけど、花岡さんマジ尊敬っす。やっぱ歳じゃないっすね。イケオジヒーロー人気出ないはずはないっす」
大仁田くん? 子供の頃からヒーローに憧れたのは俺と同じだしなんか嬉しいけど、イケオジヒーローって誰の事?
まさか俺? 俺はイケオジでもヒーローでもないんだけど。
それにしても後藤隊の褒め殺しが、飲みの席でも止まらない。
もしかしたら、一生分褒められてしまったんじゃないだろうか。
確実にこの四十年分よりは今日一日の方が褒められている。
楽しい時間というのは過ぎていくのも早いもので、あっという間にお開きの時間が来てしまった。
夜も遅いので、小谷さんを大仁田さんが送り、家が比較的近いとのことで俺が喜田さんを送っていくこととなった。
後藤隊長は大丈夫なのかと心配になったけど、まったく酔った素振りを見せることなく、スタスタと帰ってしまった。
「それじゃあ喜田さん行きましょうか」
「はい」
二人で歩きながら家路につく。
「花岡さん、今日は本当に良かったです。間違いなく人気出ますよ」
「またまた~。喜田さんにそんな風に言われたら調子に乗っちゃいますよ」
「花岡さん、本気にしてませんね? 後藤隊を舐めちゃだめですよ。今日の同接150万ですから」
「150万⁉ すごいですね~」
「花岡さんわかってないです。花岡さんだからですよ」
「はぁ」
何が花岡さんだからなのかまったくわからないけど、とりあえず喜田さんが褒めてくれてるってことでいいんだよな。
「あっ、私の家ここです。送ってくれてありがとうございました」
「いえ、こちらこそ今日はありがとうございました。また明後日よろしくお願いします」
喜田さんを送り届けてから、自分のマンションへと戻る。
それにしても喜田さんのマンションすごかったな。
多分、何億もするような部屋があるマンションだと思うけど、喜田さんの親御さんがすごいお金持ちなんだろう。
ということは喜田さんは結構なお嬢様なのか。
なんか喜田さんのイメージにぴったりだな。
そんなことを思いながら、自分の部屋へと到着する。
喜田さんのマンションとは比べるまでもないけど、今回借りた寮の部屋は家賃12万円の1LDKだ。
それなりの金額だけど、職場から近いし防衛機構の給料を当てにして思い切って奮発してみた。
色々調べてみるとこの立地でこの家賃は格安らしい。
おかげで、以前の部屋と比べてもかなり快適に過ごすことが出来ている。
今日は抑えて飲んだとはいっても俺にとってはそれなりの量飲んだ。
すだち酒も料理も本当においしかったし、このまま眠れば明日の昼まで熟睡できそうだ。
それにしても楽しいお酒だったな~。
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