第37話 世界防衛機構本部

「花岡さんとご一緒できるのを楽しみにしています」

「いえ、それはこちらです」


俺は市川さんと連絡先を交換して後日食事に行くことになった。

そのあと別所さんもやって来てくれて、何回もお礼を言われてしまったけど、あまりに何回も頭を下げてくるのでこっちが申し訳ない気持ちになってしまった。

この年で同級生とこんな縁が出来るとは思ってもなかったので、魔法が使えるようになって本当に良かった。

中塚さん達や、大西さん達とも後日飲みに行く約束をして卒業パーティは解散となった。

会社を辞めてあまり飲みに行くこともないだろうと思っていたのに、学校でこんなに飲み仲間が出来るとは思ってなかった。

それにしても今回俺はいろんな人に助けてもらった。

クラスメイトもだし北王地さんもだ。

ダンジョンでは田淵さんにも助けてもらった。

特に女性陣の人達には本当にフレンドリーに接してもらい18年ぶりの学生生活が充実したものとなった。

見学が多くて、思ったようにはいかなかったけど、今思えば全部楽しかった。

ちゃんと魔法が使えるようになったのが夢みたいだ。

せっかく卒業までこぎつけたので、防衛機構に入って少しでも社会の役に立てるように頑張りたい。

それが、俺が目指す大魔導士の姿だ。


卒業から1週間ほどで世界防衛機構の配属案内が届いた。

配属は2週間後。

場所は東京にある日本本部となった。

それまでは特に予定もなかったので市川さんや中塚さんたちとご飯に行ったりお酒を飲みに行ったりした。

市川さんは俺と同じく東京本部に配属となったようだけど、中塚さん達4人は別の支部へと配属となったらしい。

しきりに俺と違う支部に配属されたことを嘆いていたけど、そんなふうに思ってくれるなんてなんていい人たちなんだろう。

また会う機会があればうれしいけど、まずは防衛機構でしっかりやれるようになるのに集中する必要がある。

北王地さんの特訓があったとはいえ、先代の大魔導士と同じ道を歩まないとは言い切れないのでとにかく集中だ。

同級生たちと過ごす以外の時間は、引っ越しの準備と、魔法の教本を見直していた。

今の俺は上級までの教本に載っていた全属性魔法の詠唱を憶えることが出来ているのであとは使ってみるだけだ。

学校のように的もなければ、魔法を放つような場所もなかったので結局どの魔法が使えるのかはぶっつけ本番に近い。

ただ学校で『ファイア』と『アイスバレット』は使ったことがあるので、なんとなく火と水系は使えるんじゃないかと淡い期待を抱いてはいる。

そして2週間経過した月曜日に俺は世界防衛機構東京本部へと向かった。

毎月のように新入する職員がいるからか特に入社式のようなものはなく事務的に配属された部隊へと向かった。


「今日から後藤小隊に配属となりました花岡修太朗です。よろしくお願いします」

「はいよろしくおねがいしますね。この部隊を預かる後藤奏です。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」


後藤さんは長い黒髪が印象的で、かなり若いようにも見受けられるが凛とした感じが部隊の長といわれると納得だ。それにどうでもいいことかもしれないがすごく美人だ。まっすぐに俺の目を見て話してくれるので、こちらとしてもきちんとしなければと身が引き締まる思いだ。

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