第27話 チーム花岡
「へっ、上等だ。初モンスターは俺がやってやるぜ。丸焼けになれよ。「この現世に住まう精霊よ、我が盟約に……おい、動くなよ!」
陣内くんが『ファイア」の詠唱をはじめるが、ホーンラビットが高速移動しながら攻撃をしかけてくるので詠唱を終える事が出来ない。
確かに学校じゃ止まった的相手がほとんどで高速移動の敵相手には練習したことがない。
完全に準備不足と経験不足だ。
「後ろの三人はそれぞれ魔法の詠唱を始めてください」
陣内くんはホーンラビットに翻弄されて指示を出せる状態じゃない。
俺は後ろの三人に指示を出して自分はナイフを手にして陣内くんの横へと上がる。
「陣内くん、二人で時間を稼ぐんだ!」
「お、おお」
陣内くんも、魔法の詠唱をあきらめナイフを構えてホーンラビットの動きに備える。
こちらが二人になったことでホーンラビットが警戒して距離をとった。
このまま、後方のメンバーが魔法を放つまでやり過ごしたいところだ。
やるぞやるぞという見せかけの気迫を漲らせ、ホーンラビットの警戒を促す。
陣内くんも落ち着いてきたらしく俺の意図を理解して、深入りせず距離を保ったまま威嚇する。
「もう一匹も燃やします。この現世に住まう精霊よ、我が盟約に従いここにその力を示せ。原初の炎よ舞い踊れ! 『ファイア』」
「その翼は敵を裂き、その吐息は空を穿つ。幾千の刃を纏いしその気高き咆哮を敵に示せ『ウィンドスピア』」
「敵を穿て、その力は大地の力。母なる力をその小さき弾に内包し全てを貫け。『ロックバレット』」
後衛三人の魔法が発動し、次々にホーンラビットへと襲いかかる。
意識を俺と陣内くんへと割いていたホーンラビットは魔法の直撃をくらい、三発目にはその姿を消していた。
どうにか退ける事が出来た。
五人いたからどうにかなったけど、やっぱりモンスターだ。
ホーンラビットとはいえ気を抜くとやられていたのはこちらだ。
「ふ~~おっっさん助かった。あ~~ちくしょ~もう少しうまくできると思ったんだけどな~」
「いえ、初めてのダンジョンで初めてのモンスター相手に無傷で切り抜けたんです。悪くないと思います。市川さん達もありがとうございました」
「いえ、花岡さんの指示が無かったら、どうしていいかわからなかったかも」
「私も陣内くんが戦ってるのを見てあたふたしてただけだし」
「そうですよ。さすがは花岡さん。やっぱりこのチームはチーム花岡でいきましょう」
さすがと言われるようなことをした覚えはない。
ただ、サラリーマン生活の中で人に指示を出したりすることもあったし、年の功で少しだけ落ち着いてただけだ。
それでも褒めてもらえるのはありがたい。
ただ、チーム花岡ってなんだ?
「はじめてでちょっとバタついたところもあったので、戦い方というか役割をもう少し整理しておきましょうか」
「おう、さすがオッサン。やるな」
「そうでもないよ」
やはり、弱そうなモンスターだったとしても、こちらは素人に毛が生えた程度の経験しかない。
ひとりでどうにかしようというのに無理があった。
それに近接戦闘は難度が高いように感じる。
俺よりも若くて動きのいい陣内くんであれだ。
当然、俺も難しいだろう。
やはりモンスターと戦うなら遠距離からの魔法攻撃だろうな。
さっきは咄嗟の事に俺も前に出たけど、次も上手くいくとは限らない。
前衛の盾を魔法に肩代わりしてもらうのがいいんじゃないだろうか。
魔法の盾でモンスターをその場へと留め、さっきみたいに後衛の人にとどめをさしてもらう。
陣内くんには、盾を突破してくるような敵がいた時に対応してもらう事にする。
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