第23話 出現条件

「あ、なんとなくでてる気がします」

「本当ですか? 花岡さん、さすがですねぇ。さすがは大魔導士です」

「そうですかね。でもそんな気がするだけかもしれません」

「いやいや、花岡さんですから、間違いないでしょう」


俺だからというのはよくわからないが、褒められているようなので悪い気はしない。


「花岡さんにはきちんとお話をしておいた方がいいと思いまして」

「はい、なんでしょう」

「ちなみに私の魔力系ステータスの平均値はどのくらいだと思われますか?」


訓練校の校長先生までしている北大地さんの数値が低いはずはないが、俺の999は少しおかしいようなのでそれを考えても半分の500ぐらいだろうか。


「500くらいでしょうか」

「はは、それはまた。私の平均値はだいたい100です」

「100ですか」

「はい、これでも高い方です。他のステータス同様魔力系の平均的な数値は50前後ですから」


人のステータスなんか気にしたことがなかったから知らなかったが、魔力系のステータスも平均値は50だったのか。それじゃあ俺の999って。


「花岡さんの数値がいかに高いか理解してもらえましたか?」

「え、ええ」

「実は花岡さんの職業の大魔導士ですが、過去に1人だけいたそうです」

「えっ、本当ですか?」

「はい。50年以上前のことになりますが。つまり記録されている上では花岡さんは史上2人目の大魔導士ということになります」

「史上2人目ですか」

「はい。ごく稀に魔導士という職業を持った方が現れることがあるのですが、大魔導士の職業はあまりに

レアすぎて、遺伝なのか突然変異的なものなのか、出現条件が全く解明されていません」


出現条件……。

それってたぶん『四十歳童貞』だよな。それ以外にも条件があるのかもしれないけど、まず間違いない。

それにしても四十歳童貞は過去50年以上遡っても俺が2人目なのか。まあ、この早婚の世の中でそうはいないと思っていたが、そこまでか。


「その名が示す通り、大魔導士は全ての魔法使いの頂点といっても過言ではありません。現状、12人の魔導師が魔法使いの頂点。円卓の魔法使い、聖なる12人ホーリートゥエルブがその座についています」

「聖なる12人ですか。なにやらすごい名前ですね」

「彼らはいずれも、各地の防衛機構のトップそしてエースとしてモンスター討伐の先陣を切って戦っています。そして彼らの魔法ステータスは開示されてはいませんが300〜400程度ではと言われています」


300〜400か。数字をあげられてもよくわからないけどたぶんすごいんだろう。

聖なる12人だもんな。

魔法だから聖っていうより魔な気がするけど聖の方が凄そうではある。


「大魔導師はその魔導師の更に上位職と言われています。ひとつクイズです。史上唯一の大魔導師はどのような人生を送ったと思われますか?」

「それは、魔導師より上なのであれば、モンスターを倒しに倒して防衛機構の重役にでもなったんじゃないですか」

「いえ、残念ながらそうはなりませんでした。その方はダンジョンでモンスター相手に自爆して早逝されてしまいました」

「自爆⁉ それってもしかして」

「はい。今の花岡さん同様、魔法の威力が強すぎてダンジョン内で大爆発を起こし亡くなったと伝わっています。配属されて1ヶ月後の出来事だったそうですが、花岡さんと同じ四十歳だったそうです」


まじか……。


衝撃の事実に言葉を失ってしまう。

配属されて1ヶ月で亡くなったのか。しかも俺と同じ四十歳。とても他人事とは思えない。

俺もこのまま卒業して配属されてしまったら同じ運命を辿るかもしれない。

しかも四十歳童貞のまま。

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