第22話 イメージ
翌日登校すると、すぐに陣内くんが話しかけてきてくれた。
「オッサン、きのうは大丈夫だったのか?」
「ああ、大丈夫だったよ。魔力の流れを感じられる練習をしたんだ」
「魔力の流れ? そんなのわかるのか?」
「それが最初はわからなかったけど、手伝ってもらって徐々にわかるようになってきたよ。これから放課後は訓練することになったんだ」
「へ〜っ。ところで魔力の流れがわかるとどうなるんだ」
「魔力の威力をコントロールできるようになるそうだよ」
「そうなのか。まあ、俺はとにかく全力で行くだけだ。オッサンも頑張ってな」
「頑張るよ」
実は家に帰ってからも、魔力の流れに意識を向けていた。
酎ハイを飲んでからはさすがに集中することが難しくなって、諦めたが、訓練は嘘をつかない。
今日の朝目を覚ますと、明らかに昨日よりもスムーズに魔力の流れを感じることができるようになっていた。
休み時間に市川さんに、夜に食事でもと誘われたが、課外授業のことを伝えて丁重にお断りした。
本当は市川さんのような人の誘いを断ることは断腸の思いだった。
だが今は魔法を使えるようになることに集中だ。
完全に他の生徒よりも遅れているんだから。
「それじゃあ、課外授業が落ち着いたらまた誘っても大丈夫ですか?」
「はい、もちろんです。こちらこそよろしくお願いします」
「よかった」
市川さん、なんていい人なんだろう。俺が断ってしまったのに、また誘ってくれるらしい。
社交辞令かもしれないが、それでもやっぱり綺麗な女の人に誘ってもらえるなんて独身男にとっては夢のようだ。
授業については昨日までと変わったところはない。
いつも通り、実習は見学だ。
今のままなら何度やっても的を壊してしまうだけなので、北王地さんと相談して、調整できるようになるまでは今まで通りということになった。
ただ、見ている間にも魔力の訓練は出来る。
身体に魔力を張り巡らせるよう意識しながら魔法教本を暗記していたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。
自分なりに充実感を覚えて授業を終え、校長室へと向かう。
「ああ、花岡さん。調子はどうですか?」
「はい、昨日帰ってからも練習したので、昨日よりも上手く感じることができてます」
「ほ〜っ。さすがですね。それじゃあ次にいってみましょうか」
「はい」
次のステップに進めるのか。素直に成長しているような気がして嬉しい。
「魔法を使う時、無意識にですが詠唱と一緒に必ず魔力を込めて放出してるんです。なのでそれを意識して放出する魔力の量を調節できれば、魔法の威力も調節できるということなんです」
「そうなんですね」
「今から花岡さんには、魔法の詠唱なしで魔力の放出だけを練習してもらいます」
「詠唱なしに魔力の放出ですか?」
「はい。初めはわかりやすいように掌からでもいいかと思います。慣れてくれば身体全体から意識した方へ放出できるようになります」
「わかりました。どうすればいいんでしょうか?」
「感じられるようになった魔力の流れをそのまま掌から外へ流すイメージです。念のため訓練所でやってみましょう」
「わかりました」
俺と北王地さんは、昨日と同じように訓練所へと移動して訓練を始めた。
ずっと意識していたおかげで魔力の流れはもうはっきりとわかる。
この魔力の流れを右手に意識する。
なんとなく右手の魔力の流れが増えた気がする。
しばらく、右手を意識し続けると、指先から魔力が流れ出ているような感覚がしてきた。
だけどまだ指先だけで掌から出ている感じではない。
更に掌に意識を集中して、全身を流れている魔力が右手に流れるようイメージする。
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