第20話 目的
「はい。この学校はあくまで防衛機構に入るための訓練校です。それが実技を見学というのは本来あってはならないことなんです。それについては、知らなかったとはいえ私の不徳の致すところです。本当に申し訳ありませんでした」
「い、いえ、校長先生のせいではないので」
「実は、生徒の細かいデータは私と教頭しか知らないのです。学校とはいえ個人情報ですからね。なので花岡さんのステータスについては一般職員は知らなかったんです」
「ということは、校長先生は俺のステータスのことは……」
「もちろん把握しています。ただあまりに数字が突飛なので、疑ってはいました」
「ああ〜、そうですよね」
「それに聞いたことのないような数字と職種なので、それがどういったことになるのか考えが及んでいませんでした。本当に申し訳ありませんでした」
「頭を上げてください。それは、もう大丈夫ですから」
「ありがとうございます。的を壊したと聞きました。今まであれを壊した生徒は一人もいませんでした。それを壊したということは、やはりステータス999は伊達ではないということです。しかも初級の『ファイア』でその威力ということは、梅沢が躊躇したのも理解はできます」
「すいません。壊してしまって。こんな事になるとは思ってなかったんです」
「いえ、それは花岡さんの魔法の威力が想定を超えていたというだけで、花岡さんには責任のない事ですから」
「そう言ってもらえると」
「ただ、このままでは花岡さんに実技練習をしてもらえないのも事実です。ですから、放課後に私と魔力のコントロールの練習をしませんか? うまくいけば魔法の威力も調整できるようになると思います」
「的を壊さないでよくなるんですか?」
「なにしろ前例がないのでお約束はできませんが、可能性はかなりあると思いますよ」
「そうなんですね。そういう事であれば是非お願いします」
「わかりました。それでは明日から放課後、訓練所に集合という事で」
「はい」
北王地さんが、この学校の校長先生だったとは思いもよらなかったが、現状に不安を覚えていた俺にとってはまさに助けに舟。
北王地さんの提案をありがたく受けさせてもらった。
そして早速翌日の放課後、訓練所に向かうと北王地さんは、先に着いて待っていてくれた。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「はい、それじゃあ早速はじめましょうか」
「はい、どうすればいいですか?」
「まず基本的な事ですが、魔力と適正があれば、正しい手順で詠唱すれば魔法は発動します。ただし同じ魔法でも、術者の資質で威力は異なります。この資質とは魔法に関するステータスと職業にあたります」
「はい、それは授業で習いました」
「そしてステータスが高ければ、それだけ魔法の効果を強く発現できるという意味ですが、魔法の効果に強く干渉できるということは、魔法の効果をマイナスの方へと作用させることもできるということです。普通はそんなことはしませんが」
「それじゃあ、訓練すれば魔法の威力を弱めることもできるということですね」
「そうです。花岡さんの場合全てのステータスが999となっていますので、威力も999であれば、それを操作する能力も999のはずです。なので必ずできると思います。そして訓練で弱めることができるようになれば、更に強めるようにもできるようになると考えるのが一般的です」
「強くですか。これ以上強くすることに意味があるんでしょうか」
「花岡さん、確かにこの学校だけを考えれば意味はありませんが、卒業すればモンスターとの戦いが待っています。それを思えば魔法の威力はいくらでも強い方がいいと思います」
「そうですね。それはその通りだと思います」
そうだ。俺の目的はこの学校でいい成績をおさめることじゃない。学校を出てから防衛機構でしっかりと役目を果たすことだ。
実際のモンスターがどの程度の力を持っているのかはわからないが、モンスターとの戦闘において魔法の威力は強いに越したことはない。
そのためにも俺も北王地さんに鍛えてもらって、早く実技訓練にも参加できるようになりたい、
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