E-girls
武功薄希
E-girls
世界の終焉まであと24時間。地下深くに作られた巨大なバンカーは、人類最後の娯楽「終末杯」の舞台だった。世界中から選ばれた50人のトッププロゲーマーたちが、ここに集結していた。
雪乃は、22歳にして世界ランキング3位の実力者。彼女の得意とするゲームは、近未来を舞台にした大規模オンライン対戦ゲーム「ネオ・ジェネシス」だった。決勝の相手は、長年のライバルであるアメリカのサラ。二人は幾度となく激戦を繰り広げてきた仲だった。
大会開始から一週間、予選を勝ち抜いた二人は、ついに最後の決戦の時を迎えていた。バンカー内の巨大スクリーンには、世界中からのライブ視聴者数が表示されていた。驚くべきことに、70億を超える数字が踊っている。人類のほとんどが、この最後の戦いに注目していたのだ。
突如、軍の代表者が現れ、驚くべき発表をした。
「本大会の決勝戦は、我々が極秘裏に開発してきた最新鋭VRシステム『ダイダロス』で行われる」
ダイダロスは、プレイヤーの脳波を直接読み取り、思考と同時に操作可能な革新的なシステムだった。さらに、ゲーム内の衝撃や感覚を、プレイヤーの神経に直接伝達する機能も備えていた。「このシステムを使えば、君たちは文字通り『ネオ・ジェネシス』の世界に入り込むことができる」
雪乃とサラは、興奮と不安が入り混じる中、ダイダロスのポッドに横たわった。システム起動。二人の意識が、デジタルの海へと飛び込んでいく。目覚めた場所は、荒廃した未来都市。そこには、高さ18メートルもの巨大なロボット「ダイダロス・フレーム」が二機、待機していた。雪乃とサラは、自分たちがそのダイダロス・フレームのパイロットとなっていることに気づく。
ゲームの目的は単純だった。相手のダイダロス・フレームを撃破するか、制限時間内により多くのダメージを与えること。しかし、ダイダロスのリアルな感覚フィードバックにより、それは単なるゲームを超えた体験となっていた。カウントダウンが始まる。3、2、1…スタート!二機のダイダロス・フレームが、轟音と共に動き出した。
雪乃は思考するだけで、ダイダロス・フレームを自在に操った。ビームライフルを構え、サラに向けて精密射撃を行う。サラも負けじと、シールドで弾を防ぎながら接近戦を仕掛けてきた。二人の戦いは、まさに芸術だった。華麗な空中戦、緻密な近接戦、そして高度な駆け引き。それは、二人がこれまで積み重ねてきた全ての経験と技術の結晶だった。
バンカー内の観客は固唾を飲んで見守り、世界中の視聴者は息を殺して画面に釘付けになっていた。戦いは白熱し、制限時間が迫る中、二人の体力ゲージはわずかな差でせめぎ合っていた。そして、運命の最後の1分。突如、ゲーム内の空に、現実世界の巨大隕石が投影された。これはゲームではない。現実の脅威が、デジタルの世界に侵食してきたのだ。雪乃とサラは、一瞬顔を見合わせた。言葉は必要なかった。二人は同時に、その巨大隕石に向けてダイダロス・フレームを飛び立たせた。
ビームライフルを最大出力に。実弾武器を総動員。そして、ついには自爆装置までを起動させ、隕石に突っ込んでいく。大爆発が起こり、眩い光が世界を包み込んだ。現実世界でも、轟音と共に地球が揺れ動く。しかし、バンカー内の人々の目は、まだスクリーンに釘付けだった。
光が消え、デジタル世界に静寂が訪れる。そこには、隕石の破片と化した小惑星群。そして、その中を漂う二機のダイダロス・フレームの残骸があった。勝敗を示す画面が表示される。「DRAW」引き分けだった。現実世界では、隕石の衝撃で建物が崩れ始めていた。しかし、誰も逃げ出そうとはしなかった。人々は、最後の最後まで、この歴史的な戦いに魅了されていたのだ。
雪乃とサラの意識が現実に戻る。二人は、ポッドから這い出ると、互いに抱き合った。
「素晴らしい戦いだったわ、サラ」
「あなたこそ、最高のライバルよ、雪乃」
その時、天井が崩れ落ち、眩い光が地下バンカーを包み込んだ。人類最後のeスポーツ。最後の熱狂。そして、最高の決着。人類の最後は最高に、
熱いeeeeeeeeeeeeeeeeee……。
E-girls 武功薄希 @machibura
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