「守護の祭典」編
第50話 「洞窟にひそむ者」を満喫しようと思います
3章までのあらすじ
輝かしい青春を手に入れるべく、魔王アバウトは魔王をやめた。そしてあることをきっかけにノワールの守護者の存在を知り、最強のメイドフォロとの1か月の特訓を経て武具職人となった。そこまでで出会ったのがエレナであり、今はアバウトと恋人関係にある。
翌日。
「あれを持ってきた~!?」
アバウトは、ついうっかり持って帰ってきてしまっていたエメラルドグリーンの結晶をエレナに見せた。
「うわー、きれ~い...って言ってる場合か!?」
エレナの華麗な乗り突っ込みである。
「でね、これフォロに見つかっちゃったんだけど」
「見つかっちゃったんかーい」
「実は少し発見があって———」
アバウトはエレナに、前にフォロにみせてもらった滅魔閃光の花火の中身について話した。
「うむうむ。この結晶が重要な材料になっていると」
「そうなの。これで霊力が増幅されるんだって」
「じゃあこれからは...」
「うん。オレは武具の基本をフォロに教わりながら、滅魔閃光の花火の作り方を考えようかと思うんだ」
「結晶もまた必要になるね。取り行く?今から取り行く!?」
「まだストックはあるけど...行こっか!」
そして2人はその結晶を持って、再び誓いの丘へ向かった。
ドカァーン!!
誓いの丘がいよいよ見えてこようかというとき。その方向から爆音がした。
「急いで行ってみよう、アビー!」
そしてその光景に、2人は絶句した。
誓いの丘に、大量に惨殺された魔物たちが横たわっていたのだ。
その中には魔王群上位クラスに匹敵する魔力を持つものもいた。
「なんだ...これ...」
こんなことができるのは、指揮官クラス以上の人間しかいない。
それが味方なのか敵なのか。衝撃と恐怖で2人の足は止まっていた。
しかし、犯人らしき人物は見当たらない。
さっさと結晶を回収して帰るため、2人は恐る恐る洞窟に近づいていく。
その犯人が洞窟の中にいるとも知らずに。
アバウトが結晶を持って洞窟のあろう場所に近づくと、やはりその入り口は姿を現した。
「おじゃま、しまーす...」
2度目の訪問となるが、やはり美しい鍾乳洞であった。
エメラルドグリーンの積層された結晶はあちこちにそびえ、天井はものすごく高い位置にある。一歩踏み出せばひんやりとした空気が体を包み込む。
「ここだけ少しもらっていこうか、エレナ」
「うん、そうだね」
何かの気配がした。
その時にはすでに、エレナは激しく壁に打ち付けられ、アバウトの首は魔力の刃で囲まれていた。
「...!」
声が出ない。
1mmでも動いたら、首にこの刃先が通ってしまうのだ。
「ゴフッ...ゴフッ...」
背後から苦しそうに咳き込むエレナの声が聞こえる。
地を這うような恐ろしい声が聞こえたのはその時だった。
「お前らはいったい何なんだ?」
声は決して大きくない。それなのにこの威圧感。
重厚感のあるこの男性の言葉には、何の感情も込められていないようだった。
(こいつが...犯人か...)
アバウトは彼にひそむ魔力を感じた。
「魔物ならここで殺す」
(...!)
彼の言葉に、アバウトは気付いた。
(オレの持つ魔力に気付いて、オレを魔物だと思っている!)
ただこの男、魔物とか関係なく殺ってきそうだ。
その瞬間、足元に温度の上昇を感じた。
昨日のリリスの時と同じだ。
(ありがとう、エレナ!)
場は強大な閃光に包まれた。
そしてそれは目の前の圧倒的強者に対しても、一瞬のスキを作ることができた。
首を巻いていた刃が、わずかに緩んだのだ。
アバウトはありったけの霊力で全身を強化し、エレナを背負って洞窟から飛び出した。
「ハァ、ハァ...」
「あ、ありがと。アビー」
「う、うん。大丈夫?」
アバウトの問いに、エレナはコクリとうなずいた。
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