第49話 「仲直り」を満喫しようと思います


 誓いの丘の緩やかな丘陵は、小さなろうそくが無数に並べられていた。

 ノワールの守護者たちは集合した。


「集まってくれてありがとう。いよいよ式典のフィナーレとなる献灯を行う。アバウトとエレナは初めてだな、簡単に説明しよう」


 献灯は戦没者を追悼するためのもの。

 ノワールの守護者が式典参加者を代表して、ろうそくに火をともすのだ。

 

「われらは霊力をもって火をともす。霊力は魂そのものだからな」


 気付けば多くの式典参加者たちが集まっていた。


「それではみな、よろしく頼む」

 フィレの言葉を合図に、守護者たちは持ち場についた。




「誓いの式典に参加された皆様。本日はお集まりいただきありがとうございます」

 マイク越しに話すのは、司会を務めるバリエルである。


「これより献灯の儀を行います。ろうそくの灯に込めるのは、祈りと感謝です。皆様ひとりひとりのお気持ちが、平和への希望の光として輝きます。どうぞ、心を込めてお辞儀を捧げてください」


 参加者たちは胸の前で手を合わせ、頭を下げた。

 アバウトは祈りを込め、霊力としてろうそくへ放った。


パッ。


 無数の小さなろうそくの火が、誓いの丘に静かに輝いた。

 自分の役目を無事終えられてホッとしたアバウトは、隣にいたエレナへ視線を移した。


 彼女は黙とうをささげていた。

 アバウトも同じようにする。


 戦いで亡くなった人々への思いと平和への祈り。

 仲間と過ごせている毎日への感謝。

 数秒の中にいろいろな思いを馳せた。


「お直りください」

 

 バリエルの言葉に、一同は視線を上げた。

 目の前の美しい光景に、小さく歓声が沸く。


「これをもちまして献灯の儀を終了いたします。ご参加いただき、誠にありがとうございました」


 バリエルの落ち着いた言葉に、場は拍手で包まれた。




 ノワール守護者たちは本日最後の集会を終え、解散の流れとなった。

 式典参加者たちも帰宅する動きがあちこちで見られる。

 


 アバウトはエレナとベンチに座り、眼下に広がるノワールの夜景を眺めていた。

「きれいだったね、献灯の火」

「うん。そうだね」


 エレナの言葉にアバウトは頷く。

 夜のノワールの街なみもまた、あちこちで小さな輝きを放っている。


「エレナさん」

「なに...ってまた“さん”付けして」


 アバウトは息を大きく吸う。

 そしてまっすぐエレナを見て言った。


「オレと一緒に守護の庭へ帰りませんか?」




 数秒の沈黙のあと...


「ふふっ、まあ、いいんじゃない?」

 髪の毛を手でいじりながら、エレナは嬉しそうに返事をした。


「ありがとうエレナ~!」

 そう言ってアバウトはエレナを抱きしめた。


「だってぇ、タゼルとルベルのお世話もしなきゃだしぃ~」

「ははっ、ありがと」

「秘技~脇腹こちょこちょ~!」

「アヒャッアヒャッ、やめっ!エレナやめてっ!あ、ああっ!」

「アビーの弱点もフォロちゃんに教わったもんねー」

「やめてください!エレナ様、もう無理です...もう無理...ガクッ」


 アバウトはダウンした。

 そして2人の近くに突然現れたのは、魔王城から帰ってきた最強メイドだった。


「おふたりとも、仲直りできたのですね」

「うん、フォロちゃんのおかげでね!ありがと」

「いえいえ、おふたりが力を合わせた結果でございます」

「そうかな~、そうだよね!あ、それでフォロちゃんどこ行ってたの?朝からいなかったけど」

「魔王城で麻雀を」

「あっはー...なんかすごいね」

「フォロ、あとで一戦やろ」

「その勝負、お受けいたします」

「あたしもやりたい!アビー教えて、麻雀」

「お、おう!もちろんだエリー!!」


 こうしてアバウトたちは無事仲直りをして、式典を終えたのだった。




「フィレ様と一緒に住んでるなんて聞いてないんだけど」

「...すみません」


 守護の庭に到着して早々、アバウトは再び別居のピンチである。

「ご、ごめんエレナちゃん!実はそのとおりで、少し前から...」

「大丈夫ですよフィレ様!フィレ様やバリエルのせいではありません。全部この男が悪いんです」

「すみません!」


 アバウトは自ら正座する道を選んだ。

 その誠意が伝わったのか、まあでも...とエレナの口調は柔らかくなった。

「フィレ様とご一緒できるの悪くはない...?」


 アバウトも彼女の言葉にぶんぶん首を縦に振っている。


「そうね。やっぱりあたしここにいさせてもらおうかな」



 エレナも加わった守護の庭では、今では7人暮らしである。




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ご愛読いただきありがとうございます。

本話をもって、本作バトラブ第3章「守護活動」編が完結いたしました!

楽しんでいただければ幸いです。


本日夕方ごろ、閑話「満喫小噺3」の投稿をいたします。

引き続き、バトラブをよろしくお願いいたします!


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