第23話 「試験のゆくえ」を満喫しようと思います
メリッサは弓に霊力を込め、リリィの魔力と融合させてリリィの拘束をはずした。そしてリリィは自由の身となった。
「リリィちゃんすごいよ。ウチ、参加者に魔力使える人がいるとは思わなかった」
「そう、でしょうか...へへ」
リリィは照れながら、恥ずかしそうに笑った。
縛り付けられていた参加者たちは、霊力と魔力を融合した斬撃により拘束から逃れられることを知った。しかし、魔力を貸してくださるかどうか、決めるのはリリィ様である。彼女に認められなければ最大の鍵となる魔力が得られず、そのまま試験の終了時間を迎えてしまう。
「さあリリィちゃん、誰を助けるかは君が決めていいんだよ~?」
自分の活躍できるチャンスを相手に取られないようにするためには、そのままにしておくのも1つの手ではあった。しかし彼女は
「全員助けるよ...!あの人以外」
と言って口の悪い男を指さした。
「ちょっ、おれだけ助けてくれないのかよ!!」
その場に笑いが起きた。
結局その男も、一番最後にではあるが拘束を外してもらうことができ、参加者たちは指揮官たちを探し求めてそれぞれ動き出した。ただしアバウトのこともあり、エレナはその場にとどまった。
「君はアバウトと一緒にいた子だね。エレナ、だったかな?」
エレナがアバウトのそばでこの先どうするかを考えていると、間もなく女性の声が聞こえてた。エレナが顔をあげると、後ろに手を組んだフィレが立っていた。
「フィレ、様...!」
ずっと憧れていた人物との突然の対面に、エレナは驚きと興奮が隠せない。
「え、えと...いい天気ですね」
現在、空は曇天である。
そうか?と不思議そうにフィレは首をかしげる。
「あ、違くて!えーと、アバウトをご存じなのですか?」
「あぁ、前に一度だけ会ったことがあってな」
「そ、そうなんですか!?全くアビーったら、何も話してくれないんだから!!フィレ様に会ったことがあるならそう言ってくれればよかったのに~!あ、すみません...」
「構わないさ。ただ、アバウトは私のことを覚えてないかもな」
「そ、そんなはずありません!フィレ様のことを覚えていないなんて考えられません」
すると、思い出すようにフィレは話し始めた。
「1カ月前に起きたテラナスとの闘いで、突然膨大な魔力の気配がしたから私はそこへ向かったんだ。そうしたら彼が気を失っていたんだよ、戦場のど真ん中で」
「...そんな事ってあるんですか?」
「彼の持つ魔力の大きさもそうなのだけど、普通じゃありえない状況だね。それで私はとにかく彼をノワールまで運ぶことにした。その彼が今ここで試験を受けていることに、私は運命を感じている」
「...え、今なんて言いました?」
「えと、だから...アバウトとの運命を感じている、と...」
「あぁん!?」
「ひっ!」
フィレとエレナの立場は逆転した。立ち上がったエレナの勢いに圧倒されたフィレは、思わず尻もちをついてしまった。
「アバウトを狙っている、と?」
「い、いえ...そういうわけじゃないですごめんなさい!」
「ふーん、そんならいいけど。手を出したら私も黙ってはいませんから」
「は、はいー!」
こうしてエレナは、指揮官の1人を精神的に戦闘不能にすることに成功した。
アバウトが目をあけたときには、とっくに試験が終わっていた。
「ここは、どこだ...って、レアデルさん!?」
目の前にいたのはエノの指揮官、レアデルであった。後ろにはリオネル、グランパス、そしてフィレがいて、レアデルに向かって頭を下げ、片膝をついていた。
「やあやあおはよう、元魔王のアバウト君」
レアデルは豪華な椅子に座って組んでいた足を組みなおし、肘を肘掛けについてアバウトを見下ろしていた。
(こ、これは...!)
レアデルを身近で見たアバウトは、他の指揮官との格の違いに唖然とした。
アバウトでも、彼女の霊力の多さがはっきりとわかり、それに加えてリリスにも匹敵するほどの魔力量。アバウトの全盛期と比べても遜色ない、あるいは上回るほどのポテンシャルを持っている。
そして。
(元魔王であることもバレている!!)
アバウトはこれが、自分の処分を決める会議であることを直感的に悟った。
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