第11話 「秘密の特訓」を満喫しようと思います


 またある日。

 守護の庭の庭でアバウトとセレナが訓練をしていると、そこにある女の子が訪ねてきた。


「おー、バリー!おひさ~」

 エレナがバリーと呼んだ人物。彼女はバリエルである。


「あれっ、エレナ?なんでここに?」

「修行だよ修業~、私も守護者目指すことにした!」

「ちょいちょい、私があれだけ誘っても「守護者にはならないー!」って断っていたじゃないですかー!一体何があなたをそうさせたのです?」

「それは内緒~」

「あー、わかりました。もしかして———」

(お願い当てないでー!)


 エレナの願いもむなしく。


「好きな人ですか?」

「いやーーー!」


 バリエルに正解を食らってしまったエレナは、山にこだまするほどの悲鳴を上げてしまった。それを聞いたアバウトは心配になり、弾丸のように走ってきた。

「エレナ、大丈夫か!?...あれ、君は...」

「あぁーっ、あなたはこの前の!」

 対面した2人の頭の中では、1週間前の記憶がフラッシュバックした。


「なに?もしかして2人は知り合いなの?」

「あ、いや知り合いっていうか...この前暴漢から助けていただいて。とてもかっこよかったんです」

「あー、へーそうなんだ、ふーん」


(あれ、エレナさんがご機嫌を損ねられた!?最後の一言余計だったかな...)


「へへーっ、そうでしょうそうでしょう。かっこよかったでしょう」

「あは、あははっ...あ、そうだ!オレ、アバウトっていうんだ。エレナとこうして訓練をしてる。よろしく頼むよ」

「この前エレナから聞きましたよ~。エレナ、とても嬉しそうに話していましたから」

「ちょ、バリ―!それは言わないのがお約束でしょ」

「でも、びっくりしましたよ。道端で助けたお兄さんが守護者になることを目指すなんて。私がそのきっかけを作れたのなら、とても嬉しいです」


 するとエレナは激しく反応した。

「お、お兄さん!?」

「私がそう呼んでいるだけです!」

 そう言ってバリエルはにこっと笑い、「それじゃ、スタン爺のところへ行ってきます」と残して守護の庭の中へ入っていった。




 その夜。アバウトの提案でエレナと2人だけの秘密の特訓をすることになった。

「ありがとな、エレナ。付き合ってくれて」

「付きっ...!?」

「あ、あぁ!練習にってことだよ...」

「あ、そ...そうだよね!びっくりした」


 エレナは今やアバウトといる時間が1日の大半を占め、彼のまっすぐな姿勢に魅力を感じていた。対するアバウトもまた、エレナに同じような気持ちを抱くようになっていた。そんな2人の距離感はドキドキ感満載の、通称ラブコメディスタンスと化していた。


「フォロが言うには、オレの霊力は少しずつ動くようになってきたって。元気な1割の霊力たちが頑張っているみたいなんだ」

「とりゃ~!」


 なんの掛け声かと思えば、次の瞬間にはエレナがアバウトの足を掴み、軽々と逆さに持ち上げていた。霊力により強化したエレナだからこそ発揮される怪力である。

「何してるのエレナ、離して~!」

「だって右足に霊力が停滞してるんでしょ!逆さまになれば落ちてくるかもしれないじゃん」

「霊力に自重はありません!...あ、落ちてきた」

「え、ほんと!?」

「嘘」

「ぶ~っ」

 エレナの作戦は失敗に終わったようだ。


「ねえ、アビー。明日は訓練のお休みの日でしょ?よかったら...あたしと出かけない?行きたいところがあるの」

「魔王城?」

「ちゃ・う・わ!そうじゃなくて、霊力スポット!なんて言うか、その...恋人の聖地的な」

「はっは~ん、さてはデートのお誘いかぁ」

 そういうアバウトも顔を赤らめている。

「ち、違うってば!スタン爺が言ってたじゃん、霊力は人とのつながりだって。だからそこに行けば何かわかるかもでしょ!?」

 デートのための理由付け感も否定できないが、確かに彼女の言うとおりではある。

「そうだな、行こうか!」

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