第9話 「言い間違え」を満喫しようと思います
練習初日。
早くもエレナは音を出すことに成功した。安定感こそまだないものの、初日としては満点の成果である。一方のアバウトはというと...
「フォロもっかい教えて~」
「ですから霊力をこう———」
「霊力はもういいから~」
「...はあ、困ったお方です」
元魔王としての強すぎる魔力があだとなり、うまく霊力が回らない状況が続いていた。
「それがですねー、エレ...セレナさん。オレ霊力まるでよくわからなくて」
「あらら、でもスタン爺の目に狂いはないはずだよ」
練習1日目が終了し、エレナと別れてアバウトとフォロはエリシアの灯に戻った。部屋で休んでいるとセレナが訪ねてきた。
「そうだといいんですけどー」
「大丈夫よ、アバウト君は魔王の潜在能力があるんだから。ところで今「エレナ」って言おうとしたでしょ」
「してないっす」
「したでしょ」
「してないっす」
「だって今「エレ...」って」
「いやマジでしてないっす」
「どう思う?フォロちゃん」
「はい、間違いなく「エレ」って言っていました」
「...すみません」
「まったく。お姉さん傷ついちゃうよ?」
「気を付けます」
そのとき突然、セレナはぐいっとアバウトとの距離を詰めた。至近距離で顔を見つめられたアバウトは、耐えられずに目線を逸らした。
「エレナちゃんとうまくいっているようね」
「え、ええ。まあ」
「ふーん」
そしてエレナは突然立ち上がり、部屋の中をふらふらし始めた。
一向に彼女の部屋に戻る気配がなかったので、「あのー、オレそろそろお風呂に...」と彼女に帰ることを促した。すると何を勘違いしたか彼女は、
「えー、アバウトくん。もしかして私と身体の洗いっこしたいのかな~?」
と言ってきた。
「い、いやいやそんな、別にそんなこと...」
「ほ~ら、フォロちゃん、アバウトくんのこと押さえてて!お脱がししてあげるんだから」
「承知しました」
「ってこらフォロ、承知するなぁ~!」
そしてアバウトは地獄のような、あるいは天国のような一夜を過ごした。
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