火辛熟々(ひつらつらつら) その2

「はぁ……。小説の章のMVPてなんやねん。ウチ、こういうの苦手やねんけど……」



 作品紹介の司会に呼ばれてもーたわ。

 ウチの一番苦手とする分野や……。

 何を話したらええんかわからんし、それを1人でやらすなんて作者はどうかしとるんとちゃうか。


 ……ともかく原稿があるんやったらそれを読んどきゃええか。



「えー、『火辛熟々』……第2弾ー、やってまいりましたー……」


 パチパチ……



 …………地獄やがな。

 クッソ……やってられるかい。


「【ブラウンゲート】!」



ズズズ……ブゥオン



「644……645……ん……?」


「皇はん、こんな時にも鍛錬しとるとか……。アンタは、ドクソ真面目やな……」


「え……、ええ⁉ 部長! なんで僕を呼び出したんですか! あれですよね、『火辛熟々』ですよね⁉ 今回は部長が任されたんじゃなかったんですか!」


「ウチは司会を任されただけで誰を呼ぼうかウチの勝手やん」


「ず、ズルいですよ! 僕だってやりたくないのに1回目の司会やらされたんですから!」


「あー……アレや。取り巻きおらんとなんも盛り上がらんかったん。わかるやろ? ウチ1人でやらすとか才能の無駄遣いやんけ!」


「だったら別に僕じゃなくても……。藤堂さんだってよかったじゃないですかー……」


「確かに今呼べるんは皇はんと藤堂やけども……。ウチは皇はんがよかったんよ♡」


「つまり今回は僕をゲストに呼んだってことですね」


「……今や動じへんな。せや、おるだけでええねん」


 メンドイからとっとと終わらそ。

 2000目安の規定文字数なんてクソ喰らえや。



 用意された台本を開く。

 便りは2枚、この2枚読みゃええんやろ?


「ほなお便りコーナー。『……逆井さんは好きな人いますか?』やって。これにこたえりゃええのん?」


「言いたくなければ言わなくてもいいんですよ。いくら小説とは言え、プライバシーですからね」


「んー、好きってより興味あるんは……皇はんやで♡」


「はい、じゃあ好きな人はいないんですね」


「……アンタ、マジこの半年でドえらい淡白になってんよな……。カワヨかったんに最初のオドオドした面影はどこいったん」


「さすがにもう慣れましたよ。部長はいつもそんな感じじゃないですか」


「あんな……、ウチかて人は選ぶで? ビチビチビッチちゃうねん」


「ビチ……? まあいないのでしたら次行きましょう」


 皇はんもはよ終わらしたいんやな。

 これはもう利害の一致や!


「んならもう一枚。えー『部長の〝驚異の一枚(イラスト6)”を見ました。凄く凛々しくて普段の印象と全く違いますね! ところで兵頭さんから好かれてたみたいですけど気づいてましたか? 告られたら付き合ってましたか?』……と言う質問。第一回目といいそんな質問ばっかやな。ジャンルが学園モノやからか?」


「ん? 第一回でそんな話、出ましたっけ?」 


「……そういや皇はんは浮いた話に超ド鈍感っていう設定やったよな……。それはすまんかった」


「な、なんで僕の話に……?」


「(さすがにイラッとするわw)ま、気にせんでエエよ」


「それはそうと、部長って部員から好かれてたんですか! えー、付き合うとかなかったんですか?」


「ないわ! ウチはな、自分が好いたモンにしか全ては見せへんねん。よく言うやろ? 愛されるよりは〜愛したいんガ・チ・で〜♪ って♡」


「……つまり人に好かれるより自分が好きになりたいってことですね」


「ウチがボケとんのに皇はんの天然ボケに全部掻っ攫われてんのよ。ウチがツッコミになるってよっぽどやがなーっ! ……ども、ありあした〜!」


「??? 部長、どゆこと……」


「ホラ! これで終われるんや、お辞儀せんか!」


グイイッ……


「いたた!?」



「……いよしゃー! あー、終わった終わった〜。肩凝るわぁ……。帰ろ帰ろ【ブラゲ】っと」


ズズズ……


 もう懲り懲りやわ……。

 こない雑に終わらせばもうオファーなんて来えへんやろ。

 こちからしたらいい迷惑やんな……。


 ふぁ〜、当分出番ないからゆっくり出来るわ。


ブゥオン……




「……へ……? 部長……? 呼び出しておいてそのまま放置ですか? え……? ウソでしょ……」



「あ、そうだ! 次回からは魔武ワングランプリ編が始まります。お楽しみください!」

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