第101話 一路平安(いちろへいあん)おまけ

***






「ほけ〜…………」



「……おい皇……? 拍車をかけて呆けてるな……。大丈夫か?」




 鮫島くんがいつの間にか目の前にいた。


 今の俺は目の前に隕石が落ちてきても驚かないかもしれない。




 あの後、どうやって帰ったかも覚えていない。


 凍上さんの顔もまともに見ることができなかった。


「……こりゃ相当重症だな。まあいいや……。田中から預かってたもの。ほらっ」


パサッ



 渡されたのは一枚の封筒。




「……ん、これは……?」


「ああ。なんか今回、色々協力してくれたお礼だとさ。あの時お前、先に帰っただろ? 渡すように頼まれてたんだ。封はしてなかったから俺がしておいた。一応言っとくが、中は見てないぞ」




 確かに丁寧に封がされている。


 田中くんも鮫島くんも思った以上に律儀で良い人なのかもしれない。




「あ、ありがと……。でもなんだろ、これ……」


「ほんとに見てないから知らんぜ。田中は俺にも封筒をよこしてきたけどな。俺の方は図書券1000円分だったが……。これ完全に魔武本の景品使いまわしだろ……。配慮だけは認めるけどな」




 封筒を開けてみる。

 そこには映画鑑賞券ペアチケットが入っていた。




「え……な、なぜに……?」


「俺の前で封筒を開けたってことは見てもいいってことだろ? 何だったんだ?」



 覗き込んだ鮫島くんは少し考えてからニヤついた。



「今度はお前の番だぞと後押しをされたんだな……」


「ちょ、ちょっとまって、何のこと?」


「とぼけるなってw 好きなんだろ? あの子のこと。仲良かったもんな! 肝試しん時」



 やっぱりバレてたのか……!!


 帰り道を送るってことは本来、付き合ってる人がするような――。


「如月もまんざらでもなさそうだしな! うまくやれよ! 俺たちは陰ながら応援してるからよ!」




 ……え……。

 そ、そっち……。

 ……っていうか……、えぇ……?




 そう言うと鮫島くんは席に戻っていった。


「俺たちって……誰たちよ……」

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