第91話 無情迅速(むじょうじんそく) 5
き、き、き、希少点穴〜宝物庫について……。
希少点穴〜武器庫について……。
希少点穴〜アカシック……っと、あったあった。
『希少点穴〜アカシックライブラリについて』
[希少点穴とは、呪界エリアに生じた地磁気と不死山の噴火によって出来た魔成岩が、磁気偏角に伴う……]
難しいな。
もう少し先か……。
[名前通り、滅多に開かれない希少な転移ゲートである。その為、多数の人間がその先で一堂に会することはほぼない。だが、対象者の必要度に応じて因果律のズレが生じ、稀に予定より早く希少点穴に当選されることもある。これには、その者がフォースエレメンタルブレイブガーディアンの討伐が可能かどうかの是非は含まれていない。そして希少点穴のフラグは一度きりなので、それ以降このイベントは発生しない。ただ、一度きりなのは希少点穴発生のフラグと禁呪書貸出のイベントのみで、あらゆる手段を用いることにより、アカシックライブラリへの再訪は可能である。フォースエレメンタルブレイブガーディアンは、訪問者の死亡または討伐者が帰還すると再び定位置へ配置される。]……と。
うーん……。
この内容だと、本来ならガーディアンを倒さないと〖アカシックライブラリ〗内へは入れないってことだよね。
爺ちゃんは確か、学長たちが戦ってる時に希少点穴に落ちたって言ってたもんな。
それは起こり得るってことか。
でも俺が見たあの黒い影は説明がつかないな……。
もしかしたら再訪者ってやつ?
なんらかの方法で〖アカシックライブラリ〗に人がいた時、ちょうど俺らが希少点穴に落ちただけ……?
……まあ……それを考えても仕方ないか。
ちょっと思い出しちゃったから気になっただけだし。
それよりも〘燧喰〙のことを調べないと。
えーと……燧……ひきり……。
あった。
『〘燧喰〙』
[分類 〖禁呪書〗。イーターシリーズの一つ。古代魔法の
«火»の反属魔法って……«水»とか«氷»だよな。
俺の場合、反属でもないしそもそも魔法じゃない。
なのに「魔法」って書いてあるってことは〖アカシックライブラリ〗でも無魔に貸し出しちゃったのは想定外だった……とか?
しかも火を消し去りたいと強く思ったことなんてあったかな?
風呂釜の火が消えなくて困ったことはあったけど、それだけで〘燧喰〙が選ばれるなんて思えないし……。
続きを読もう。
[燧喰は〝火を発する要因となる熱量そのもの〟を無に帰す。その他にも〝火や熱を冠するもの全てを消滅させる〟ことができる。喰われた火は瞬時に消炎・滅火する。燧喰
うーん、難しい。
ステータス上昇したところで、魔法系しか上がらないのか。
魔力とか魔法の攻撃上がったところで使えないし、耐性だって元からあるし上がったところでなぁ……。
でも文献をみる限りだと、火であれば全部消せるようなことが書いてある。
だとするなら、本当に炎獣討伐が余裕になると考えて間違いないだろう。
でも炎獣の火を消せば普通の獣になる?
おとなしくなって野に帰っていくのだろうか?
ただ、火が消えるだけで強さや獰猛さが変わらなかったら……?
無双出来ると思ったが妄想で終わる。
実際に炎獣と戦ってみないことには全く分からない。
他に調べることあるかな?
あ、転生のこととか調べてみるか。
……お、あった!!
たまにある、開いたらすぐ調べたいページ……。
得した気分♪
『転移・転生について』
[異世界転生とは、肉体が生物学的な死を迎えた後には、非物質的な中核部については違った形態や肉体を得て新しい生活を送るという、哲学的、宗教的な概念。これは新生や生まれ変わりとも呼ばれ、存在を繰り返すという――]……。
…………。
なんだこのウィッ○ーペディアみたいな説明は!!
そういうんじゃなくて……。
えー……と……。
[転生には「死」を経由するものが大半である。事故死、自殺、他殺、災害などを近因とするが、稀に生存状態でも起こることがある。その場合は転生先からの召喚が殆どで、強制的に行われるものにあたる。そして必ずしも人から人への転生とは限らない。]
……ふむふむ。
[転生の種別として、「個体死転生」、「因果律転生」、「集団域転生」、「多世代転生」、「複数回転生」、「不条理転生」に分類される。]
こんなに種類があったのか。
[「個体死転生」とは、ただ単に対象の死が引き金となるケースである。「因果律転生」とは、〝転生先の中核を成す主〟として無作為に選出されることである。「集団域転生(転移)」とは、主に召喚によりその
……なるほど。
転生と言っても
知らなかったんだけど、俺は別人に生まれ変わったわけじゃないから転生ではなく、〝異世界転移〟に分類されるのかな?
でも死んだんだから転生で合ってるのかな?
そこはわからない……。
でも転生・転移の理論がわかったところで元の世界に戻れるのかとか、ゴールはあるのかとか、そういったことはわからず仕舞いである。
うーん、他に何を調べようか。
…………。
折角、ドラあもんの「宇宙完全大辞典」みたいな不思議道具が使えるって言うのに調べたいものが見つからないなんて……。
そうだな、〖禁呪書〗の能力については何となくわかったから、俺の〝火の能力〟については書かれているだろうか。
火……、魔法じゃなく……能力……でいいんだよな。
あるかなあ……。
あ、これかな?
『魔法分類以外の能力〝異能〟について』
[当世界では古代より、科学と魔法は同一視されてきた。しかし魔法は、個が体現出来る力としては非常に危険なデバイスであり、科学を凌駕する兵器に成り得ると考えられるようになる。その為人間は、魔法学が過剰に発展する度に多種ある方法により自ら衰退させる道を選んできた。]
こ、これって……!!
[だが、魔法以上に危険な能力の存在が確認されている。その能力は、魔力を一切使用せず生命力の一切も不要である。故に〝異能〟として扱われ、異世界からの転生者による持ち込みが一因とされる。※データ不足項目………]
魔法が科学を凌駕する兵器……。
確かに1人の人間が出せる力として考えるんだったら恐ろしいものがある。
その力は火を生み水を作り出し、岩をせり上げ風を起こす。
その練り上げられた魔力は津波や竜巻を起こし、岩を降らせて大火を広げる。
人が災害を任意で作りだすという、有り得ない現象。
オーバーテクノロジーに似て、抑制しなけらばならない力であることは間違いない。
それを当たり前として使用しているこの世界。
いずれは再び封印されることになるかもしれない。
俺のこの火は異能に分類されるんだろうか。
だとするなら自分も……。
「皇は〜ん。終わったかいな?」
「うわびっくりした!」
「なんやエライ集中しとったのー。勉強熱心で関心関心♪ そろそろ昼飯にしよ思おもての。どやあ?」
ゲートから出てきた部長は体をくねくねさせてにじり寄ってくる。
「わかりました。えーと、どこで食べるんですか?」
「今やド偉いタンパク、ドタンパクが普通になってきてもうた。女に興味あらへんのかそれともウチが魅力ないのんか……。はぁ……。一旦、ライブラリ出て
そう言うと部長は再びゲートを出す。
「確率は低いや言うても〖希少点穴〗に落ちて来た人らに出会ってしもたらバツが悪いもんで。当分は来えへんつもりやからどーしても調べものしたい言う時はウチに言うてな」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
……ゲートに入る前、俺は無意識にライブラリの奥を確認していた。
そこには、ただただ深い闇が
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